企業コラボも「味」が評価軸
飯高:Mr. CHEESECAKEは企業コラボもされていますが、コラボをする・しないの判断軸はありますか?
田村:美味しさを作る場合は、Mr. CHEESECAKEらしい美味しさを作れるかどうか。もの作りの場合は、もの作りに対しての考え方や想いが共感できるかを大切にしています。
たとえば大企業やコンビニ各社さんともの作りをする場合、スパイスは香料でしか使えないなど制限が多いです。その中で、納得できる美味しさが作れそうかを大事にしています。なので、最初にお話を伺うタイミングで試作品があれば試させていただきますし、商品の形態的に難しそうであればお話の時点でお断りする場合もあります。
美味しくできそうだと感じてからは、とにかく美味しさの追求のために多くの無理を言う時もあります。原材料や配合比率も教えてもらい、できる限りわかりやすく細かなチューニングをさせてもらったり、納得できるまでできる限りギリギリまで微調整をお願いすることが多いです。そこまでしていただいて本当に美味しいものができると信じています。

飯髙:徹底してますね。
田村:美味しさは主観的でとても難しいものだと思います。その中で僕の責任はこれが美味しいんだと決めることです。ですから、自分やスタッフが本当に美味しいと思えるものにしなければ、世に出すことはできません。スタッフの味覚がどんどん鍛えられているので、最近は彼等の顔色が怖いですね(笑)
飯髙:田村さんはゴーストレストランのメニューやCBD配合ドリンクの監修などもされていますよね。こちらの監修では受ける基準はあるんですか?
田村:自分の知識や、味覚が役に立てるかどうかです。目指すべき美味しさのために何をどう調節するべきか?を判断するのはとても難しく、ここに多くの時間がかかってしまいます。ただ僕が関わることで、この時間を短くできる可能性があったり、より美味しいものを作れるのであれば、力になりたいと思いますね。ただ商品企画のようなものはお断りしています。あくまでの美味しさのお手伝いがメインですね。
飯髙さん:味覚を武器にして美味しいものを作る。そこがブレないんですね。Mr. CHEESECAKEも季節ものはありますが、企画を出して意図的に伸ばしている商品はないですよね。
田村:そうですね。夏の企画やバレンタインなどシーズンカレンダーはありますが、流行を意識することはあまりないですね。逆に味にばかり意識が向かい、ビジュアルに変化がなくて、見た目の部分でPRやマーケを困らせることが多いです。
トーキョーチーズケーキを世界に広げる
飯髙:Mr. CHEESECAKEは香港にも進出していますね。海外進出の狙いを教えてください。
田村:シェフ時代からそうですが、Mr. CHEESECAKE を作り始めた日から海外に出たい気持ちがありました。どんな形でもいいから、自分の作ったものが世界に届くような仕事がしたいと考えていたんです。
だからMr. CHEESECAKEのパッケージにはトーキョーチーズケーキと入っています。NYチーズケーキやバスクチーズケーキのように、その都市を代表するような商品にしたいと思い、入れました。

2019年に中川綾太郎(編集部注:D2Cブランドの企画・運営を行う株式会社newn代表取締役 中川綾太郎氏)と出会った時から、海外展開は絶対にすると話をしていました。コロナが明けて生産体制が整って、やっと挑戦できました。地理的な近さももちろんですが、実際に行ってみた空気感や日本のものつくりに対するリスペクトなど含めて香港からスタートしようと決めました。
飯髙:香港での反応はいかがですか?
田村:香港ではミスターチーズケーキのことを知っている方が一定数いらっしゃったことが印象的です。日本のポップアップで買いましたとか、公開しているレシピで作って食べましたとか。純粋に嬉しいですよね。
今後は様々な国にMr. CHEESECAKEを届けられたらと考えています。各国ごとのローカルスイーツは甘さの差分が大きいのですが、僕が働いていたようなファインダイニングのデザートはそこまで甘さの差分は大きくないように感じます。なのである意味でMr. CHEESECAKEのレストランデザートのような味わいは世界共通で受け入れられるのかもしれません。自分の生み出した美味しさが世界に真っ直ぐ届くのか?を確かめてみたい感覚もありますね。