「メンバー起点」の風土を、仕組みとして定着
──リクルートが注力している、ボトムアップ型組織をはじめとした組織強化・人材育成についてもお聞かせください。
ボトムアップはリクルートに昔から根付いている文化ですが、これを維持・進化させることにこだわり続けています。それは、勝ち続けるために合理的で最も適した仕組みだからです。
当社の特徴は、多くのサービスと大きな予算があること。各現場がトライ&エラーを同時多発的に起こすことで、幅広い成功や失敗のパターンをどこよりも多く積み重ねられます。マネジメント側は「じゃらんでこういう失敗があったから、SUUMOの担当者にシェアする」といったナレッジ流通を日々行いますし、現場間でも勉強会やグループチャットを通じて成功事例が流通しています。
トライ&エラーの結果を集約しノウハウ化することで成功確率を上げ続けられる仕組みで、これは他に真似されにくいものだと思っています。
マーケターの個人目標や事業目標もボトムアップで決まります。自ら起案することが求められ、上から降りてくることはありません。
前年の計画に対して予算を上げるのか下げるのか、最適化で浮いた予算を再投資するのか利益化するのか、自らの意志で案を作ります。事業を理解していないとできない判断なので、自然とマーケターも経営視点を持ちます。
──マーケターの育成については、どのような考え方で取り組まれていますか?
ボトムアップ型の仕組みにおいては、様々なトライ&エラーが起こったほうがよいため、メンバーの多様性が重要です。当社では育成も多様であるべきという考え方のもと、一人ひとり自由に研修に使える予算を用意しています。オンライン講座や海外のカンファレンスなど様々で、個人の発想で知識や経験を獲得してもらうことが目的です。
──ボトムアップ文化の定着においてポイントはありますか?
前提として、当社は戦略的に採用していますが、必ずしもボトムアップが正解であるとは限りません。失敗を繰り返して学習していくため、スピード面でトップダウン型に負けることもあると思います。また、失敗の積み重ねが前提になるので企業体力がないと厳しいです。まずは、自社にボトムアップが必要なのかを考えるべきでしょう。
その上で、定着のポイントとなるのは経営層の意識でしょう。「指示ではなく、引き出す・導くマネジメントでなくてはならない」を徹底できるか。トップダウン型で求められる働き方やスキルとは異なるため、注意が必要です。経営層ができなければ、当然定着はできません。
──最後に、今後の展望をお聞かせください。
「変化が激しい時代」というのはいつの時代でも言われていること。もはや前提なのに、変化、変化と騒ぎ過ぎではないかとも感じます。その言葉に踊らされることなく、舵取りをしていきたいですね。世の中の変化に対して、呼吸するように当たり前に対応できる状態を目指していきます。
当社のボトムアップの文化はこれからも続いていくと思いますが、風土や文化という形のないものに頼らず、ルール・制度として残すべきものです。私や既存のメンバーがいなくなっても維持拡大できるよう、より仕組み化していきたいと考えています。
