全面的な変革の中で、強い人材が育っていく
──カルチャー改革の重要性は認識しつつも、何から手を付ければよいかわからない、またはうまく進まないと悩んでいる方も多そうです。パナソニックコネクトでは、具体的にどのような活動を行ってきたのでしょうか?
まず、私たちが目指すカルチャーとは、大企業病的なヒエラルキーカルチャーの逆です。ヒエラルキーが存在していると、どうしても社員は社内の上のほうばかりを見てしまいます。本来は社外=お客様や社会に意識を向けるべきところが、社内に向いてしまうのです。ですので、ヒエラルキーの三角形を倒してフラットにし、社員一人ひとりが広い視点を持てるようにすることで、お客様と社会に近づいていくということを目指しています。
これを実現するため、この7年、本当にいろいろなことをやってきました。社長室をなくし、オフィスもがらりと変えましたし、会議体を変えたり、細かいところでは名刺のデザインを変えたりもしています。また、社内外におけるエグゼクティブコミュニケーションも大きく変え、「Tシャツを着て笑顔で」のトンマナで行うようになりました。エグゼクティブコミュニケーションは、自分たちがどこに向かっているのかを示すための重要な場で、経営に大きな影響を与えるところでもあります。

──なるほど。今のお話を聞いて、アイデアやデザイン、クリエイティブ、コミュニケーションなどをもって、マーケティングがカルチャー改革をドライブしていくことの重要性がわかりました。
そうなんです、これらをプロデュースすることもマーケティングの役割なんですよね。ですが、これらの活動はいずれもマーケティング部門だけで完結するわけではありません。人事や総務、IT、DEI(Diversity,Equity&Inclusion)など、あらゆる部門と連携して一緒に進めていく必要があります。ですから、社内外のあらゆるステークホルダーをつなげていく、コネクトしていくこともマーケティングが行うべき重要な役割です。

──パナソニックコネクトのマーケターには、様々なスキルが求められてきそうです。マーケティング組織および人材の強化には、どのように取り組まれていますか?
私は当社でマーケティング組織を作っていくときは、キーパーソンになるプロフェッショナル人材を置き、その人を核に組織と人材を強化していくようにしました。ただ、変革を進める中で、マーケティング部門の仕事の内容もどんどん変わってきているので、新しいことやよりレベルの高いことにみんなで挑戦しながら、実践で学び合っていくというほうが実態に近いかもしれません。掲げている目標を達成するために個々人にストレッチが求められており、大変ではあると思いますが、楽しく前向きに成長できていると感じます。
加えて、社内外での学びの機会を増やしています。組織のキーパーソンに勉強会を開催してもらったり、「マーケターへの道」というラーニングシリーズを提供したり、ポテンシャル人材には社外のトレーニングを受けていただくこともあります。人材育成への投資はこの数年で大きく増やしていますし、貪欲に学びを求める意識や姿勢が確実に育ってきています。
「世界と未来に意味のある会社」を目指して
──山口さんは、日本マーケティング協会におけるマーケティング定義の刷新に委員として携わられました。今回の新定義を踏まえて、パナソニックコネクトのマーケティングの展望を最後にお聞かせいただけますか。
新しいマーケティングの定義は、私には非常に納得感があります。企業は社会の一員であり、地球の一員です。そのくらい広い視野で自社のステークホルダーを捉えて事業活動を行っていかなければ、企業は存続していけない――こうした考え方は今の時代、当たり前になりつつあります。
新卒で松下電器に入り、旧態依然な企業風土に諦めをつけて外資系企業に転職した代表の樋口が再びパナソニックグループに戻ってきたのは、パナソニックコネクトをグローバルに通用するエクセレントカンパニーにするためです。社内では「強くて優しい会社を目指す」と話していますが、未来に意味があり、世界に価値を提供できる会社を目指してきて7年、着実に改革が進んできたと実感しています。
そして、今日お話ししたことはすべて、パナソニックコネクトの屋号と同時に掲げた「現場から 社会を動かし 未来へつなぐ」のパーパスを果たすための活動です。やはり、パーパスを起点にすべてつながっています。私たちの活動からつながりを作り、社会を動かして、より良い未来を作っていく。そのような動きをこれからもしっかり起こしていきます。