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西口さん!難しいことはわかりませんが、マーケティングで一番大事なことを教えてください

【マーケティング入門第11回】「マス思考」は、なぜダメなんですか?


大量生産・大量消費から、多様化・分散化の時代へ

西口:吉永さんは、“家電の三種の神器”って聞いたことがありますか?

MZ:はい、昭和の時代の洗濯機やテレビですよね?

西口:家電の三種の神器には2段階あって、1950年代は「電気洗濯機、電気冷蔵庫、白黒テレビ」が、次に60年代には「自家用車、クーラー、カラーテレビ」がそう呼ばれました。物質的に豊かでなかった時代、どの家庭も必要なものが同じだったから、大勢の潜在顧客へマスメディアで認知し、大量生産した商品を大規模な小売りルートで販売することがビジネスの定石でした。

 かたや、皆さんも当事者として実感されているように、今の時代はモノもサービスも豊富で多くが満たされています。その中で、人々が多様化してメディアも分散化しています。そんな状況で顧客を平均的に捉えるのは、無理がありますよね。

MZ:そうした時代背景からも、顧客理解の点ではN1にならざるを得ないんですね。では、マスマーケティングはどういう場合に有効なのですか?

西口:N1分析で見つけた案が、結果的に多くの人に響くプロダクトになるなら、認知や生産や販売の手段としてマスマーケティングは有効だと思います。

 たとえばニュースアプリ「スマートニュース」のクーポンチャンネルも、一人の方の意見から見つけた案でした。具体的にコンセプトを評価してもらうと異なる顧客層の方々が好意的な反応を示し、その総和がかなりの数になったので、テレビCMに踏み切りました。結果として大きな飛躍につながりました。

 一方で価値を見出す顧客が少数の場合、昔なら、その少数顧客に提案する術がありませんでした。スマホも行き渡っていて、デジタルマーケティングが発達した現在では対象者を絞り込んでアプローチできます。それは今の時代の大きな利点ですね。

デジタルの浸透で、マーケティングはどう変わったか

MZ: MarkeZineがデジタルマーケティングを切り口にしているメディアですから、デジタルマーケティングがなかった時代も含めて俯瞰するのは新鮮です。今のお話で、マスマーケティングだけの時代からデジタルマーケティングも登場した現代への変遷が、イメージできました。

西口:マーケティングの仕事をしている人でも、40代以上でないと、マスマーケティングの感覚はつかみにくいと思います。そもそも今20代の方は、高校生・大学生の頃からスマホやSNSが当たり前ですよね。YouTubeやTikTokなど動画メディアが主流な中、見ているコンテンツもバラバラです。

 とはいえ、デジタルマーケティングが世界を支配しているかというとそんなことはありません。現在のデジタルマーケティング、デジタルメディア、SNSでは、マスメディアがリーチし得る人数をカバーすることは難しいといえます。

 しかし今の時代でも買い求める人がマスで発生する、つまり人口の相当をカバーするくらいのイノベーションが、モノやサービス自体であるプロダクトで起こる可能性はあります。ここ最近だと、まさにスマホがそうでしょう。デジタルを牽引するスマホは、まさに大量生産・大量消費の時代に築かれたマスメディアを活用していますよね。

 要は、マスマーケティングもデジタルマーケティングも、「HOW=手法」と理解することが大事です。価値が成立するWHOとWHATの組み合わせを見極め、そのボリュームがどのくらいあるか、複数あるのかなどによって、どのHOWを使うべきかは変わります。

MZ:なるほど。マスマーケティングやマスメディアは、WHO・WHAT・HOWの中のHOWの話で、マス思考は「WHOをどう捉えるか」という考え方の話なのですね。

西口:その通りです。人々の生活や価値観が多様化する時代に、複数顧客を平均化して考えるマス思考だけでは不十分なのは明白だと思います。

西口氏のマーケティング入門連載【第10回】はこちら!

西口氏のマーケティング入門連載【第12回】はこちら!

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

吉永 翠(編集部)(ヨシナガ ミドリ)

大学院卒業後、新卒で翔泳社に入社しMarkeZine編集部に所属。学生時代はスポーツマーケティングの研究をしていました。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/07/31 20:16 https://markezine.jp/article/detail/45502

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