生活者ニーズを把握しながら生産者を拡大
――需要と供給のバランスを取るためには、生産者さんを集める必要もありますよね。どのようにして集めていったのですか?
秋元:初期は直接現地に足を運び、生産者さんに私たちの思いを伝えることで登録してもらいました。100名を超えたあたりから自然と登録が増えました。生産者さんが他の方に教えて広がった形です。生産者さんに寄り添うという強い気持ちと、一貫性のある取り組みを続けたことで信頼できると判断いただけたのだと思います。
大きな取り組みとしては、コロナ禍のタイミングで登録生産者の基準を緩和したことがあげられます。最初食べチョクでは、農薬化学肥料の使用が基準値の半分以下の生産者さんのみ登録していただいていました。知名度のないサービスが「私の選んだ美味しい野菜です」といっても説得力がない。客観性があり説得力を持たせるために、まずは客観的基準のあるオーガニックからスタートしました。
ただ、慣行農法(基準値内の化学肥料や農薬を使用する方法)で美味しい野菜を作っている生産者さんたちが数多くいることも知っていたので、最終的には基準を緩和したいと考えていました。コロナ禍で販路がなくなってしまった方を見て、前倒しで緩和することに決めたのです。
――お客様が離れていく心配はありませんでしたか?
秋元:既存のお客様のニーズを確認した上で決断しました。アンケートで「農薬化学肥料をまったく使っていない」「農薬化学肥料はなるべく少なくしてほしい」「おいしければ農薬化学肥料の量は気にしない」から選んでいただくのですが、実は「おいしければ農薬化学肥料の量は気にしない」を選ぶ方が多かったんです。
また、食べチョクに登録されている生産者さんは飲食店に出している方も多く、飲食店で扱うような質の高い食材が集まっているというブランドイメージが定着していました。お客様が生産者さんを選べる仕組みさえ整えていれば、登録生産者の基準を広げたからといって、お客様が離れていくことはないだろうと考えました。
ECで終わらせない、生産者と消費者がつながる仕組み
――基準を広げ、食べチョクに登録してくださる生産者さんが増えたからこそ見えてきた課題はありますか?
秋元:EC販売のノウハウがあるかどうかの差が目立つようになってきました。皆さん良い食材を作っていることは共通しているのですが、梱包や商品説明のノウハウがないために、魅力を伝えきれていない方もいて。私たちがマニュアルを作ったり、出品のフォローアップを個別で行ったりしてきました。
ここでもコロナ禍が重なったことが大きな影響を与えました。オンライン会議が定着していたからです。生産者さんたちも当たり前のようにツールを使いこなせていたので、スピード感をもって進められたと思います。
――生産者さんとユーザーさんをつなげるという点で工夫していることがあれば、教えてください。
秋元:「1回購入したら終わり」といったECサイトではなく、お互いがつながるSNSのように使っていただけるようサービスを設計しています。
たとえば特定の基準を満たしたお客様向けの「お得意さま認定機能」があります。この機能の大きな特徴のひとつは、お得意さまが生産者さんごとに紐付いていることです。生産者さんはそのお得意さまに対して限定商品などを届けることができる一方、お得意さまはその生産者さんの推薦コメントを投稿することができます。
お得意さまが宣伝担当となり、生産者さんと一緒に商売を盛り上げていくようなイメージです。
――投稿したお得意さまがその生産者さんから何回購入したかも表示されているんですね。10回も購入している人が勧めるなら自分も買ってみようかなという気持ちになりそうだなと思います。
