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MarkeZine Day 2025 Retail

飯髙悠太氏が探る「エモ」と「ビジネス」と「成長」

目指すは、生産者のこだわりが正当に評価される世界。食べチョク躍進の裏にある戦略とビジョン

toCとtoBはリンクしている。福利厚生やギフトニーズも

――個人向けだけでなく、法人向けの「食べチョク for Business」も展開されていますよね。

秋元:健康経営やSDGs、CSRの一環として利用される企業様も多いですね。

 元々toB向けのサービスは展開していたのですが、コロナ禍で飲食店に大きな影響が出たので一度中断していました。その後、toC向けサービスの認知が高まった頃に福利厚生や農業研修として興味があるとお声がけいただくことが増えました。そこで、2022年秋からはtoB専門の部署を作って対応しています。

 toBとtoCのサービスはリンクしていると思います。たとえば会社の福利厚生でご利用いただいた従業員の方が、個人的に食べチョクで購入いただく可能性もあるからです。

 また、最近はギフトニーズも増えています。ギフトを贈る人は食べチョクを知っていても、受け取る人は「メロンをもらった」で終わってしまうことがほとんどです。そこで現在は食べチョクで買い物ができる券をギフトとして贈れるようにしています。するとギフトを受け取った人も食べチョクユーザーになっていただけます。

現在の食べチョクの仕組みが正解だとは限らない

――今、課題と感じていることがあれば教えてください。

秋元:「生産者さんから直接取り寄せることを日常にする」には、まだ遠いと感じています。たとえばユーザーインタビューをしていると、ハレの日用に使われているケースが多く、私たちの目指すところにはまだまだ遠いなと。

 また、「いろいろな種類の野菜の詰め合わせ」を届けられる多品目栽培の生産者さんに対するニーズと比べると、単品目栽培の生産者さんへのニーズは小さいと感じます。送料を考えると、一度に多くの野菜を注文するほうが負担は少ないもの。同じ種類の野菜ばかりをたくさん送ってもらうより、いろいろな種類の野菜を楽しみたいお客様もいらっしゃるでしょう。

 しかし、ひとつの味を突き詰めている生産者さんの中にも素晴らしい方はたくさんいます。個人のお客様に多く購入していただくことは難しいとしても、レストラン卸をするなど販路を広げていけば、課題の解決につながるのではと考えています。

 現在の食べチョクの仕組みが正解ではない可能性があることも踏まえながら、物流含め、様々な課題を解決していきたいです。

 さらに、食べチョクは生産者さんの課題を解決するソリューションのひとつに過ぎません。私たちが実現したいのは、生産者さんのこだわりが正当に評価される世界です。生産者さんが自分たちのこだわりを次の代につなげたいと思えるような、収益性の高い農業をできるようにすることを目指しています。

 生産者さんの困り事は多種多様です。たとえば、人材が足りないから生産量を増やせない、生産量を増やしたくてもお金が足りないという方もいらっしゃいます。こだわりをもっている生産者さんの収益を上げるためのソリューションを複合的に提供していきたいと考えています。

――なるほど。会社名をプロダクト名に変える企業もある中、ビビッドガーデンが食べチョクに社名を変えない理由が理解できました。あくまでも生産者さんの課題解決が軸なのですね。秋元さん、本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

編集後記:飯髙悠太

 秋元さんが食べチョクを立ち上げた理由は、実家が農業を廃業した背景に、小さな規模の生産者が野菜を高値で販売する仕組みがほとんどなかったこと。「生産者さんがきちんと収益を得られるようにしたい」ことが出発点。

 2017年のローンチ後は既存の販売チャネルがある中で、生産者に選んだもらうという理由づけが課題だった。 しかし2020年のコロナ禍がきっかけで、販路を失った生産者さんを応援する動きが生まれ、その一つの手段として食べチョクに興味を持ってくれる人が増えていった。タイミングの良さも秋元さんのおっしゃる通りあると思うが、そのチャンスを見逃さず自身のメディア露出を増やし、テレビCMも行なった。接触回数が重要なテレビCMの回数を、ご自身が接点になることで補えるという考えのもと勝負に出た形だ。

 加えて、システム投資にも注力。サーバーが「落ちない」だけでなく「遅くならない」にこだわり、テレビで紹介されても揺らがない使い心地を実現した。

 コロナ禍がきっかけでメディア露出が増えた企業は他にもあったが、食べチョクは時機を読み、まずは興味を持ってもらい行動を促し、その先で理解を深めてもらう戦略があったと知れた。

 生産者が増える中で、EC販売のノウハウの差によって、売れるかの差異が出たので、個別にフォローアップをしマニュアルを作ることで生産者間のECスキルの差を無くしていった。さらに、ユーザー口コミより上部に「お得意さまの推薦メッセージ」があるのは、ヘビーユーザーのリアルな声を知れるのは大きいと思う。意外と他のサイトでもありそうでない機能なのではないだろうか。

 秋元さんが目指すものは広大だ。食べチョクは生産者の課題解決をするソリューションの一つにしか過ぎず、目指すは生産者さんのこだわりが正当に評価される世界。そのためにソリューションを複合的に提供していくことを考えている、今後の食べチョクに注目していきたい。

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この記事の著者

飯髙 悠太(イイタカ ユウタ)

株式会社ベーシック執行役員、株式会社ホットリンク執行役員CMOを経て2022年6月に「ひとの温かみを宿した進化を。」をテーマに株式会社GiftXを創業し、「おもいが伝わる。ほしいを贈れる」選び直せるソーシャルギフト「GIFTFUL」運営。現在、企業のアドバイザーやマーケテ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

和泉 ゆかり(イズミ ユカリ)

 IT企業にてWebマーケティング・人事業務に従事した後、独立。現在はビジネスパーソン向けの媒体で、ライティング・編集を手がける。得意領域は、テクノロジーや広告、働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/06/27 14:22 https://markezine.jp/article/detail/45533

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