日本市場進出に向けQoo10攻略を目指す韓国の美容ブランド
MarkeZine編集部(以下、MZ):メイク専門ブランドの「CLIO」やスキンケアブランド「goodal」を取り扱う韓国の化粧品会社CLIO社ですが、2023年から日本市場でのマーケティング戦略に注力をされています。その背景をお聞かせください。
チョ:まず、CLIOでは、1993年にブランドを立ち上げて以来一貫して、クールなカラーを基調にサービスを展開し、いわゆるハイブランドのイメージが定着していました。
しかし、最近ではピンク系など可愛いらしいカラーを用いており、手が届きやすいブランドイメージに変更しています。この新しくなったCLIOのイメージを日本の方々に認識していただきたいという思いがありました。
チョ:一方、goodalは、日本市場での知名度がまだまだ高くありません。数年前に日本で一度バズりましたが、それ以降大きな売上の伸長が見られませんでした。また、「CLIOは知っていても、goodalは知らない」といった反応も日本のお客様からは多く見られたので、知名度向上に力を入れてきました。
MZ:日本市場での売上拡大に向けて、どのような取り組みを行ってきましたか。
チョ:オープンマーケットプレイス「Qoo10」の攻略には特に注力しています。その中でも、年に4回実施され多くの消費者が注目する「Qoo10メガ割」の時期に合わせてYouTuberやTikTokerなどのインフルエンサーを起用し、認知度向上を目指してきました。
藤田:日本のマーケットサイズは韓国よりも大きいため、多くの韓国の美容ブランドが発売初期の段階から日本市場への進出を重点項目に見据えて販促活動を行っています。
藤田:そして、日本進出時に初めに取り組むべきなのがQoo10の攻略です。日本においてQoo10は、韓国の美容商品を購入するプラットフォームとして認知されています。
そのため、SNSを活用しQoo10内での売上ランキングの上位に入ることは、韓国企業が日本市場で売上を最大化させる上で重要なポイントになっています。
インフルエンサーの選定基準は「知名度」だけではダメ
MZ:インフルエンサーマーケティングを展開するにあたり、どのような課題を感じていましたか。
チョ:選定方法に課題を感じていました。「美容好きの人に見られていそうだから」といったなんとなくの理由で美容系のインフルエンサーを選んでおり、選定基準が曖昧でした。
藤田:CLIO社様に限らず多くの韓国ブランドが、特定のインフルエンサーを起用した理由や商品がバズった要因の理解、言語化ができていないという課題を抱えています。日本の市場で支持を集めるためには、日本の市場が持つ特性を理解した上で、施策を行うプラットフォームと訴求軸の選定を定量的なデータから考えることが大切ですね。
また、データを使って定量的にインフルエンサーの選定を行うことで、曖昧なイメージに頼らずに、特定の領域に影響力があるインフルエンサーを見つけることも可能です。
韓国の美容ブランドが好きで知名度が高いインフルエンサーは確かに影響力が強いです。しかし、それゆえ既に多くの企業が起用しており、依頼内容の制限が厳しいことや起用すらできないこともあります。そのため、インフルエンサーの強みを定量的に理解し、その強みを活かして再現性のある施策の設計を行っていくことが大切です。
競合が多いからこそ「素早い施策の展開」が重要
MZ:CLIO社は、SNSを活用したインフルエンサーマーケティングとパフォーマンス計測をAnyMindとともに行っています。協業の決め手と、実際に協業を開始して感じるAnyMindの強みをお聞かせください。
チョ:松本様には私の前職時代にもお世話になっていたのですが、対応スピードの速さが魅力的だったので今回もご依頼しました。
多くの韓国美容ブランドが日本に進出しているので、Qoo10上での競合は非常に多いです。その中で他のブランドよりもいかに早く施策を展開していけるかは非常に大きなポイントとなります。
その点、AnyMind様はインフルエンサーのアサインから施策実施、効果検証までを一貫して素早く行っていただけるので、余裕を持った施策の進行が可能です。そして、進行に余裕ができた分、クリエイティブ制作にもこだわることができています。
また、自社ECサイトでの売り上げや、広告配信などをすべて一括で管理できる点も非常にありがたいポイントです。おかげで、各ブランドやインフルエンサーが、プラットフォームごとにどれくらいの成果を出せているのか比較できています。
MZ:AnyMindがスピーディーな対応を実現できる理由はどこにありますか。
松本:一つのグループ内で代理店と事務所の強みを兼ね備えていることが大きいと考えています。代理店としてインフルエンサーマーケティングの定量分析に強みを持つAnyMindがデータを基にインフルエンサーを選定。その結果をもとに同社のグループ会社であり、インフルエンサープロダクションのGROVEが直接クリエイターとコンタクトを取ってアサインに動くことができます。
「単発」を避ける方針&最適な「場の使い分け」で効果最大化
MZ:具体的にはどのような支援を行ったんですか。
松本:goodalでは、GROVE所属の女性2人組YouTuber「むくえな」を起用した施策を実施しました。具体的には、2024年3月からgoodalのブランドアンバサダーとして起用し、ブランドの顔として認知度&売上の上昇を目指して活動を行っています。
チョ:また、私たちとしては、goodalとCLIOが同じCLIO社の中にあるブランドであることを認知させたいといった気持ちがありました。
そのため、goodalのブランドアンバサダーを行う「むくえな」と、CLIOの宣伝を行う「むくえなの友人」が一つの動画に共演することで、同じ会社のブランドラインアップであることが伝わるように工夫もしました。
MZ:プロモーションの成果を最大化するために、注力しているポイントを教えてください。
松本:プロモーションしたい内容に合わせて活用するプラットフォームを使い分けることが挙げられます。アンケート調査やGoogleトレンドの指名検索などの分析の結果を踏まえて予算の中で注力すべきことを見極めてから、認知度の向上にはYouTube、成分などの効能の訴求にはInstagramを使うといったように最適なプラットフォームの提案を行っています。
CPCが業界平均値の10分の1以下に
MZ:プロモーションの成果をお聞かせください。
チョ:今回の施策ではTikTokのSpark AdsやYouTubeの概要欄にQoo10の商品ページなどへのリンクを入れていたのですが、そのリンクを通してサイトに訪れる人が大幅に増加しました。CPCでいえば、一般的な業界平均値の10分の1以下という結果です。
また、メガ割案件の投稿が目立つ2024年3月には、日本国内のスキンケアコスメ関連のYouTubeのタイアップ投稿で、月間再生回数1位に。アプリ・Webサービスなど他業種含んだ月間ランキングでも5位以内の再生数を獲得することができました(2024年6月11日時点、YouTube Shortsを除く)。
goodalは知名度を向上させる段階なので、まだ大きな売上にはつながっていませんが、認知度向上といった観点で、効果を強く実感することができました。
MZ:今回の施策を通して得た気づきは何かありましたか?
チョ:定量的に分析したことで、日本市場に進出していく上での「勝ちパターン」が見えてきたと感じています。
チョ:今までであれば、なんとなく「知名度の高いインフルエンサー」を起用してしまっていたと思います。しかし、彼らは様々なブランドのPR投稿をしているため、フォロワーからすると「結局どこの商品が良いのかわからない」といったことも頻発しています。
その点、データを基にインフルエンサー選定を実施したことで、こういった事態は防げる上に、施策の組み立て方にも再現性があると感じています。
ノウハウとデータを蓄積して長期的なプロモーション設計を
MZ:日本市場への進出を考える企業やブランドがSNSを活用する際に具体的に意識すると良いことを教えてください。
藤田:トレンドや消費者に受け入れられるものは変化し続けている上に、韓国と日本ではその変化の状況は異なります。そのため、常に日本の市場動向を把握しながら、改善していけるかが運用上非常に重要になります。
また、先述の通り、インフルエンサー選定の理由が「有名だから」で、その結果、バズったがそれ以降は伸びないブランドが非常に多いと感じています。一時的な流行ではなく、長期的に効果を上げていけるようにノウハウを蓄積し、一つずつデータを分析して改善していくことが大切です。
MZ:最後に、それぞれの立場から今後の展望をお聞かせください。
チョ:goodalの日本市場での販路拡大が一番の目標です。今後は認知度向上に加えて、成分や使用感を訴求するプロモーションに注力していきたいと考えています。
松本:CLIOにおいては、韓国ブランドの枠を超えて、日本の化粧品市場の中でも上位にランクインするコスメブランドまで成長させることが目標です。goodalでは、まず「Qoo10メガ割」の売上ランキングで上位にランクインさせることを目指していきたいと思います。引き続きCLIO社様とともに長期的な視点でプロモーションを行っていきたいと思います。
藤田:AnyMindの強みは、ECからマーケティングまで一気通貫でテックドリブンに支援できることです。また、韓国にもオフィスがあることや、日本チームには韓国語を話せるメンバーも多数在籍していることなど、韓国ブランドと密に連携できる体制が整っており、その戦い方への理解度も高いと自負しています。今後も、この体制とケイパビリティを基に、韓国美容ブランド様の支援に尽力していきます。