CXへの意識が現場に定着 職種の垣根を超えたサプライズ
━━現場スタッフとの連携は重要とのことですが、どのように巻き込んでいったのでしょうか。
戸田:以前は役員2名と部長・支店長でCSの方針を決めてトップダウンで取り組んでいましたが、CS推進の改革の第一歩として行ったのが「会議体を変える」ことです。トップダウンをやめて、ボトムアップの形にしようと決めました。また航空会社は、パイロット、客室乗務員、整備士、空港スタッフと、高度な専門職の集団のため、それぞれの専門職をつなぐ共通言語としての「数値データによる見える化」で、納得感を高められると考えました。
━━CS改善に向けて支店ごとの自主的な取り組みが見られているそうですね。事例をご紹介いただけますか。
井上:那覇空港で見られた、職種の垣根を越えた「バトンリレー」の事例は、お客様に評価され、SNSでも多くの方にお褒めの言葉をいただけました。
きっかけは受託バゲージでお客様が花束を預けたことです。手荷物カウンターのスタッフが状況をお聞きし、そのお客様がプロポーズしたことがわかりました。その状況が地上のランプ職員にも伝わり、サプライズを計画。さらに情報共有を受けた客室乗務員が機内で「皆様、右手をご覧ください」とアナウンスし、花束を預けたカップルが外を見ると、ランプ職員が水で地上にアートとメッセージを描いていたのです。
井上:カップルのお客様はその様子を感動コメントとともにSNSに投稿され、世間に大きく広まりました。このような自主的なサプライズの事例はいくつかあります。
戸田:ランプ作業者はいわゆる「裏方」で、お客様と直接接する部署ではありません。このような行動があったことに私も驚きましたが、立場を問わず、お客様を想った行動をしたいという気持ちが広がっていることに気づいた機会でした。
小川:個人の判断による現場の行動は、「上層部に怒られるかも」と思ったらなかなかできないものです。それを「良い取り組みだ」と言い切れる企業風土を作ってきたからこそ実現した事例だと思います。
田原:自主的な取り組みが行えているのは、各支店単位といったデータの切り分けができているおかげもありそうですね。現場としても自分の担当領域でなぜスコアが低いのか、原因を探りたいという責任感、良い体験を生みたいというモチベーションにつながると思います。データの切り分けという観点では、顧客の分類や注力する領域の決定ができていない企業はまだ多いと感じています。
たとえば、次の表はインテージの独自調査結果から、「満足度に対して影響するサービス品質」をセグメント別に切り出したものです。年代で分けるだけでもこれだけの差異が生まれるわけですから、企業としては目的やコアターゲットを決めてから、それに応じて強化すべきをポイントを変える必要があると思います。
一貫した顧客体験をデザインし、オペレーションを最適化する
━━最後にスカイマークの中川さんからは今後の展望、田原さんからはこれからCXマネジメントに注力していく企業に対してアドバイスをお願いします。
中川:CX戦略は、顧客接点のオペレーションだけでなく、DX戦略、経営戦略、業務戦略とも密接に関連しています。これらの戦略を束ねる鍵となるものは、コンセプトだと考えています。さらに一貫した顧客体験を提供するためには、このコンセプトを共有することが今後とても重要になると考えています。
田原:初期段階のコンセプトの整理やパーパスの定義、それに基づく体験のデザイン、業務オペレーションへの連動、お客様を見ながらPDCAを回すという一連の流れはやはり重要ですね。
ただ、調査をして初期段階をまとめるだけで疲弊してしまうというケースも少なくないでしょう。インテージは調査会社として広く知られていますが、調査の結果をこれらCXのマネジメント実践に落とし込んでいくための支援も行っています。プロジェクトの推進にお悩みの方がいましたら、ぜひご相談いただきたいです。
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