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テレビはどう生き残るか~鍵を握る「インプレッション取引」を成功させる仕組みとは~

GRP取引が持つ課題とは。テレビの本当の価値を「質と量」で捉え直す

 関東キー局の2023年度決算が出揃い、ほぼすべての局でタイム、スポットともに前年を下回るという厳しい状況が明らかとなった。テレビ局が生き残っていくために、テレビCMセールスの変革は待ったなしの状況だ。では、その変革の鍵はどこにあるのか。横山隆治氏と楳田良輝氏が、鍵を握る「インプレッション取引」を成功させるアイデアと仕組みを提言する本連載。今回は、なぜ現状のGRP取引を変える必要があるのか。GRP取引が持つ課題と、テレビCMを評価する際に必要な「周辺ターゲット」「総量評価」について整理する。

テレビCMにおけるインプレッションとは

 普段、デジタル領域に関わることが少ない方向けにあらためて簡単なご説明をすると、「インプレッション」とはデジタル広告(インターネット広告と考えてもいい)で使用される「広告表示」や「広告表示回数」のことを指します。「インプ」「impression」「imp/imps」などと表記される場合も基本的に同じ意味です。

 その広告表示1,000回あたりの単価「CPM(Cost Per Mille)」がデジタル広告では一般的な取引指標となっています。

 では、テレビCMにおいてインプレッションとは何か? です。テレビはPCやスマホなどと異なり、必ずしも1人だけで視聴しているとは限りません。そこで、テレビを1人で見ている時にCMが1回流れたら「1インプレッション」、2人で見ている時にCMが1回流れたら「2インプレッション」とカウントすることができます(図表1)。

【図表1】テレビCMにおける「インプレッション」
【図表1】テレビCMにおける「インプレッション」。米国ではテレビ広告の取引指標としても使用され始めている。

 2021年9月、米メディア測定評議会であるMRCは、米国のテレビ視聴測定を70年以上ほぼ一社で支えてきたNielsenへの認定を「視聴測定の不具合」を理由に一時停止しました。そして、この大きな事件を機に米テレビ業界の「代替通貨」を求める動きは本格化し、これまでの単一通貨から「マルチカレンシー(多通貨)」へと取引指標を移行させていきました。

 米国ではクロススクリーン、つまり、リニアTV(従来のテレビ放送)、ストリーミング、デジタルの“統合視聴測定”がすでに基準となってきています。したがって、取引指標も一部にGRPを残したままではマイナス面が大きいと考えており、インプレッションに統一するのが主流となりつつあります。

国内のテレビCM取引にも代替通貨の必要性

 国内はどうでしょうか。これまでテレビCMにあまり関与することがなかったり、今後取り組むことを考えていたりする方向けのご説明です。

 戦後、GHQの統治下にあった日本は、NHKが英国の公共放送であるBBCをモデルにしたといわれるのに対し、民間放送(民放)は米国の商業テレビネットワークを参考にして発展してきました。NHKは一つの局で全国放送を行えますが、民放は全国が32区分されている各放送エリアのテレビ局が個々に運営されており、それらが系列としてネットワークを結ぶことで、ほぼ全国に同一番組を放送することを可能にしています。

 そのため、デジタル広告は全国で原則均一CPMですが、テレビCMをCPMで見た場合は32放送エリアで大きく差があります。ちなみに米国も放送エリアというよりは視聴測定(またはマーケティング市場)のエリア区分ですが、210のDMA(Designated Market Area)に細かく分かれています。

 ですが、「放送」と「通信」の区分がほとんどない米国と異なり、国内は法制上の違いが明確です。近年いく分かは改正されてきたとはいえ、未だ制限も多くなっています。ストリーミング視聴が増加しているから、放送は止めてもいいんじゃないかと簡単に言う訳にはいきません。

 また、米国は国土面積が日本よりも広大であるため、地上波だけで全米に十分な視聴環境を構築することは難しく、早くからケーブルテレビが普及していきました(2010年頃までがピーク)。ところが、国内の地上波テレビの世帯カバー率は100%に近く、放送を伝送路とする安定した情報伝達の持つ役割は、米国のそれとは比較にならない程、大変重要なものとなっています。

 しかし、リニアTV(米国ではケーブルテレビ+地上波)の視聴時間が減少し、代わってストリーミング視聴が大幅に増加していることで、視聴の断片化が進んでいることは国内も同様です。民放テレビ局の広告収入の減少も止まらなくなってきています。とはいえ、国内では地上波のテレビ視聴量がまだまだ多いのも事実です。

 もはや「テレビCM vs デジタル広告」の対立構造は、どちらの立場から見ても得策だとは思えません。現下の状況に合わせた、かつ将来を見すえた共通指標や統合的な仕組みへの変革が早期に必要だといえるでしょう。

 視聴率測定、GRP(Gross Rating Point:延べ視聴率)などの細かな解説は、この連載では割愛しますが、第1回で少しご説明したように、GRP取引は簡便で、事故が少なく、効率的にテレビCMを取引するのには非常に素晴らしい仕組みです。しかし、その導入から約半世紀が経ち、徐々に時代に合わなくなって来ているのではないか? とも考えています。

 世帯視聴率をGRP、個人視聴率をPRP(Persons Gross Rating Point)と分けて表記されることがありますが、PRPという言葉は国内でしか使われない表現なので、参考文献・資料などとの整合性を保つため、この連載では使用しません。個人全体でも、セグメント別でも延べ視聴率の指標としてはGRPに統一しています。

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GRP取引の課題。「率」と「実数」では大きく違うこと

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この記事の著者

横山 隆治(ヨコヤマ リュウジ)

横山隆治事務所 代表取締役ベストインクラスプロデューサーズ 取締役トレンダーズ 社外取締役1982年青山学院大学文学部英米文学科卒業。同年、旭通信社(現・アサツー ディ・ケイ/略称:ADK)に入社。インターネット広告がまだ体系化されていなかった1996年に、日本国内でメディアレップ事業を行う専門会社「デジタ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

楳田 良輝(ウメダ ヨシテル)

株式会社プログラマティカ 代表取締役社長関西学院大学卒。広告会社で営業部門を経験後、経営及び人事部門でデジタル領域への投資・事業戦略や組織・制度変革等を担務する。メディア部門を担当後、デジタルエージェンシーを経てコンサルティング会社に経営参加。大手広告主に対するマーケティング・コンサルティング業務等...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/08/26 15:23 https://markezine.jp/article/detail/45938

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