ユーザー、広告主ともに好意的な反応
――ローンチして約3ヵ月が経過しましたが、乗客や企業からの反応はいかがですか?
佐藤:開始から約1ヵ月後に調査したところ、週1回以上山手線に乗る方の約半数がTRAIN TVを認知していることがわかりました。「モニターを以前より見るようになった」人も64.9%となっており、そこで流れるCMの認知率も今後上がっていくものと考えます。

また、3分の2の方が「電車に乗っている時間が楽しくなる・有意義になる」など、TRAIN TVにポジティブな反応を示しています。注目すべきは、ネガティブな人は1割程度にとどまっている点です。広告中心からコンテンツ中心に変えたことについて、多くの方がポジティブに受け入れ、今後のTRAIN TVに期待していただいていることが確認できました。

4月の開局後、広告主様からのお問い合わせは急増し、これまでになかった番組の協賛や、コンテンツとのコラボレーションに関するお問い合わせも多数頂戴しました。これまでは難しかった番組に出演いただくタレントのキャスティングも圧倒的に行いやすくなりました。これもリポジショニングの成果です。
「移動の体験価値」を提供するメディアへ
――最後に今後の展望を教えてください。
佐藤:短期的には、時間帯別の配信に向けて取り組んでいきます。会社に行くときと帰るときでは目的地も乗車中の心理もニーズもまったく異なります。各モーメントに合ったコンテンツを出していきたいと考えています。今はシステム的なフィジビリティの検証をしているところです。
また、お客様にアンケート調査を行い、どの番組が評価されているか、どのような番組があるともっと見ていただけるのか、いわゆる番組改編のPDCAサイクルを回し、より良い編成に変えていくことも考えています。スマホと連動したような番組作りも加速させていきたいですね。将来的にはスポーツのリアルタイム配信など、生放送をしたいという話も出ています。
中里:もちろん、効果測定についても変えていかなければなりません。現在はアスキングを中心にしていますが、アクチュアルの計測について目下様々な視点から検討を進めているところです。
長期的な話で言いますと、TRAIN TVを皮切りに移動空間をアップデートしていくことで、移動の体験価値を高めていきたいと考えています。ネットショッピングやリモートワークの浸透で明らかなように、今は移動しなくてもできることが格段に増えました。しかし、移動は価値がない、移動は無駄なコストかというとまったくそうは思いません。
首都圏の生活者は一生の2%以上を電車の中で過ごすと私たちは推計しています。移動時間となればその割合はさらに高いものとなります。これまでメディアビジネスの観点からお話ししてきましたが、それはTRAIN TVの一側面に過ぎません。人生の相当の割合を占める移動時間をより豊かな時間に変えていくことで、社会に活力を生み出したい、というのがTRAIN TVを立ち上げた私たちの想いです。そのような観点から、移動空間で様々なイノベーションを起こしていきたいと考えています。