「電車の中のテレビ局」でパーセプションを変える
――「電車の中のテレビ局」とのことですが、なぜ「テレビ」というアプローチなのでしょうか?
中里:ターゲティングを前提にしたデジタル広告は、ターゲット層に喜ばれるコンテンツを作ることが第一にあれば良いかと思います。しかし、公共交通機関で放映されるTRAIN TVは不特定多数に不可避的に情報を接触させてしまう可能性があることから、原則オールターゲットのメディアである必要があります。
いろいろな価値観やお考えを持つ方が乗られている電車の中では、番組を観たくない人に配慮しつつ、なるべく多くの人たちに楽しんでいただかなければなりません。その意味ではどちらかというと、地上波のテレビに近い存在と捉えています。

もう1つ「電車の中のテレビ」とリポジショニングした狙いとして、電車内サイネージに対するパーセプション(認識)を変えたい、という私たちの想いがあります。これまでの電車内サイネージは、「広告がたくさん流れていて、その間にニュースや天気予報などが流れているもの」という認識が大方の見方かと思います。そこを「テレビ」とリポジショニングすることで、テレビと同様に「番組が流れる合間にCMが流れるメディア」という見方へ変えたいと考えています。つまり、コンテンツを観ているという視聴態度へ近づけていきたいのです。
偶然の出会いを生み出すメディア
――メディアプランニングでは様々なチャネルを複合的に利用する必要もあるかと思います。TRAIN TVの強みや、他チャネルとのシナジーをどうお考えですか?
中里:ある程度の広告予算をお持ちの広告主様は、テレビを中心にメディアプランを組み立てているかと思います。そこにTRAIN TVを加えることで、テレビではリーチしない層へのインクリメンタルなリーチが獲得できます。主に家で接触するテレビと、屋外で接触するOOHはある種のトレードオフの関係にあるので、追加のリーチを生み出しやすいと考えられます。特にテレビ離れの進む都市に住む若年層には、OOHそしてTRAIN TVは有効なタッチポイントになるのではないでしょうか。
弊社が野村総合研究所と行った共同研究では「テレビ✕デジタル」の2メディアで展開するよりも、同予算で「テレビ✕デジタル✕OOH」の3メディアで展開するほうが購入意向は高まることがシミュレーションによって導き出されました。
なるべくメディアを絞り集中投下すると、確かに効率よくリーチを作ることができます。しかし、メディア間で生まれるシナジー効果を小さく見積もるべきではありません。様々なチャネルで触れることで、そのブランドへの心理的距離が近づくのは自然なことではないでしょうか。
スマホで見て、テレビで見て、街を歩いても見かけたら、「これは流行っているんじゃないか」「おさえておくべきえはないか」というパーセプションが生まれていくものであり、OOHはその中で重要な役割を果たすと考えています。
以上から、今のメディアプランに「+OOH」することで、新たな顧客の開拓や、ブランドと顧客とのより深い結びつきを生み出すことができる、と私たちは考えています。
佐藤:乗客にとって、電車内で触れる広告は日常生活の動線上で偶然的に出会うものなので、そもそもメディアへの接触態度が他とは違います。さらにTRAIN TVは「毎日の移動に、発見とときめきを。」をパーパスにしており、偶然性を意識しています。全然興味がなかったものでも、電車内で流れていたのを見て、おもしろいと感じて頂いたり、興味を持っていただくことで検索行動や意思決定につながる。そんなセレンディピティを生み出せるメディアだと思います。