※本記事は、2024年9月刊行の『MarkeZine』(雑誌)105号に掲載したものです
【特集】Update:BtoBマーケティングの進化を追う
─ AIの到来とMQLの終焉、そして新分野の台頭──庭山一郎氏に聞く、世界のBtoBマーケティングの今(本記事)
─ 代理店販売は「営業」ではなく「マーケティング」である。BtoB企業が今こそ注力すべき「PRM」とは
─ 世界標準のオペレーションとは?『RevOpsの教科書』『MOpsの教科書』著者に聞く
─ RevOpsを名前だけで理解していないか?ソフトバンクのレベニューオペレーション室が重視していること
─ 案件創出数は3年で3倍に 旭化成エレクトロニクスが辿ってきたABMの軌跡
─ NTTコミュニケーションズはなぜ全社をあげて戦略を実行できるのか?「BtoBマーケ5つの戦略」の裏側
激動期に入った米国のBtoBマーケティング
──庭山さんは2024年5月に開催されたForrester Research社主催の「B2B Summit North America」に参加され、SNSで「米国のBtoBマーケティングは激動期に入った」と述べられていました。どのような変化が起こっているのでしょうか?
いくつか潮流があるのですが、まず失職するマーケターが激増している点です。ここ18ヵ月間で米国のBtoB企業のマーケター10万人が職を失いました。原因は、シリコンバレー銀行の破綻に端を発したIT産業の景気後退にともなうもので、こうした場合最初にカットされるのがマーケティングやPRです。
そして今回は、人材が切られたところにAIが入ってくるようになりました。マーケティングはこれまでも何度かの景気後退による人材の大量解雇を経て進化してきましたが、AIの登場は初めてのことになります。
──AIの登場により、BtoBマーケティングでどのような変化が起きているのでしょうか?
これまでであれば、マーケティング人材の削減は一時的な措置で、半年ほど経つと再雇用されるというパターンでした。しかし今回は、AIの登場により一度解雇されたマーケターの戻る場所がなくなるという現象が起きています。生成AIはクリエイティブ分野に強いので、フォームやメールの作成、HTMLコードの生成などはほぼAIの仕事になっています。実際、まだ日本に来ていないものも含めて米国のマーケティングソリューションを見ると、AIが搭載されていないツールを見つけるほうが難しくなっているほどです。
カンファレンスに関しても、スポンサードするツールベンダーが様変わりしました。マーケティングイベントというと、かつてはMAベンダーが軒を連ねていたものでしたが、今はCRM/SFAやMAでブースを出したりスポンサードしたりしている企業はほぼありません。
──なぜCRM/SFAやMAベンダーがカンファレンスから撤退したのですか?
理由の1つは、今さら投資をしても刈り取れる余地がないくらい普及してしまったことが挙げられます。その代わりに台頭してきているのが、ABM(Account Based Marketing)、インテントデータやプレディクティブ・アナリティクス(予測分析)といったデータ分野のソリューションを提供しているベンダーです。あとはPRM(Partner Relationship Management)やイネーブルメント分野ですね。3年前と今とではスポンサーの顔ぶれがずいぶん変わっています。