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ノバセル田部正樹の事業を成長させる“商売視点でのマーケティング”とは

徹底したLTV志向が強いブランドをつくる オルビスの哲学をノバセル田部氏が紐解く

LTVが高そうな新規顧客を見極める方法

田部:どのような施策を休眠顧客向けに実施するのですか?

小林:自社で最も強い商品、たとえばベストコスメを受賞するようなヒット商品を、休眠顧客に訴求しています。

小林:当社の場合は定期購入も増えていますが、都度購入の方が多いため、R12(1年以内に1回購入)はアクティブ、R13からは休眠という定義です。休眠施策ではR48までを対象に含めます。顧客の誕生月などに施策を実施したところ、レスポンス率が20%に達しました。通常、休眠施策の目標レスポンス率は1~2%程度ですから、これは非常に高い数字です。

 ある程度の規模に達すると、新規顧客の獲得を続けることは難しくなるものです。既にブランドを認知している休眠顧客が、ブランドに対してどの程度のエンゲージメントを持ちながら休眠状態になっているか。休眠顧客のエンゲージメントが、ブランドの強さを示す非常に重要な指標だと考えています。

田部:新規顧客の獲得時に、LTVが高い、つまりオルビスにマッチしそうな顧客を見極めることはできるのでしょうか?

小林:「どの商品をどのチャネルで購入したか」という、商品×買い方の掛け算で見極めることができると思います。たとえば、生涯LTVが最も高いパターンとして「初回と2回目は店舗のスタッフと対話して納得した上で商品を購入。以降はECサイトで購入する」が挙げられます。最初に人とのコミュニケーションを通じてブランドイメージを形成し、納得感を得た後、忙しい場合はECサイトで手軽に購入する選択肢を持つというパターンです。

田部:D2Cビジネスの初期段階では、アフィリエイト広告を活用せざるを得ないこともあります。ただ、アフィリエイト広告経由のユーザーは離脱しやすいですよね。そのためLTVが下がりやすく、ブランド価値も向上しにくい。だからアフィリエイトで売上をつくると、後で苦しむ印象です。

小林:アフィリエイト広告にも様々な形があるため一概には言えませんが、過度にCPAを追求するレスポンス広告で顧客を獲得し、定期購入で囲い込む手法は、短期的に売上を向上しても、長期的な視点で見るとLTVを高められません。その結果、永遠に新規顧客を獲得し続けなければならなくなります。そのような広告で顧客を獲得すること=悪手ではなく、LTVが下がってしまうことが本質的な課題です。顧客獲得の方法と、その後に顧客との関係性を構築する方法を、慎重に検討する必要があります。

顧客解像度を高める入浴中の習慣とは

田部:小林さんは経営者として、発売する商品や実施する施策を意思決定するお立場です。その際、何を以て「これはいける」あるいは「これは厳しい」などを判断していますか?

小林:成功例が目立っているかもしれませんが、失敗例も多いです。失敗の原因を振り返ると、成功のための条件が二つ導けます。

 一つ目は、商品企画の立案時に提示される差別化ポイントです。当社の強みや資産に基づいて構築された差別化ポイントであるかどうかを見ます。他社の商品と差別化されていても、すぐに模倣されてしまうものや、顧客が求めていない差別化ポイントでは意味がありません。

 二つ目は、提案者の顧客解像度です。提案者自身が対象顧客である場合は理解しやすいですが、そうでない場合、どの程度リアルに顧客像を把握できているかが成功の鍵を握ります。

田部:顧客解像度を高めるために、小林さん自身が意識していることはありますか?

小林:第一に、先ほどお伝えしたとおり、お客様と本音でコミュニケーションを交わす機会を多く設けること。第二に「お客様の口から発せられる言葉が本心かどうか」を見分けるための感覚を磨くこと。なぜなら、インタビューだけで本音を100%引き出すことは難しいからです。異性にモテたいから商品を購入していたとしても、お客様が本当の理由を明かすことは稀でしょう。

 私個人の習慣として、入浴中にスマートフォンで自身の行動や思考を記録しています。ポジショントークを排除し、本音を書き留めているのです。個人的な洞察を積み重ねることで、顧客の真のニーズや行動パターンをより深く理解することができ、商品開発や広告戦略の立案にも活かせると考えています。

田部:その習慣があるから、顧客インタビューで相手の本心を見極められるんですね。

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競合の安易な模倣が失敗を招く

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この記事の著者

和泉 ゆかり(イズミ ユカリ)

 IT企業にてWebマーケティング・人事業務に従事した後、独立。現在はビジネスパーソン向けの媒体で、ライティング・編集を手がける。得意領域は、テクノロジーや広告、働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/10/07 07:00 https://markezine.jp/article/detail/46144

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