業界リーダーが語る、急成長市場「CTV広告」の可能性
佐々(Adjust):本日はCTV(コネクテッドテレビ)の可能性についてディスカッションを進めていきたいと思います。CTVとは「インターネットにつながっているテレビデバイス」のことです。本日お集まりいただいた皆様は、そこに流れるストリーミングサービスやOTT(※)を仕掛けながら、放送業界を進化させていらっしゃいます。
まず現在のCTV市場について見ていきましょう。まずアメリカの状況を見ると、2023年から2027年の予測では、全体の動画広告市場が約110%となっているところ、CTV市場は約172%の成長率となっています。2027年には約7兆円の規模に達すると予測されており、これは日本市場の約50倍です。
綾瀬(ABEMA):アメリカにはまだ及びませんが、日本でも動画広告市場が大きく成長していく流れにある中、CTVは動画広告市場全体の成長率を上回る形で急速に拡大しています。これをチャンスと捉え、今後はより多くの広告主様にCTV領域でもいち早くテストやトライアルを行っていただきたいです。実際「ABEMA」でもCTV広告を出稿するお客様は増加傾向にあります。
※「Over the Top」の略。インターネットを介してコンテンツを提供するメディアサービスのことを指す
共視聴や視聴完了率の高さなど、CTVの6つの強み
佐々(Adjust):おさらいすると、CTVには次の6つの強みが挙げられます。
- 圧倒的なオーディエンス
- 共視聴
- 大画面
- 高い視聴完了率
- セカンドスクリーン
- デジタル(ターゲティングと計測)
大野(TVer):「圧倒的なオーディエンス」に関しては、2027年には約7割の世帯にCTVが入るだろうと予測されています。また、TVerの実績を見ても、2人以上で視聴する「共視聴」の割合が多いことがわかっているほか、他のスマートデバイスと比較しても最後まで楽しむ視聴完了率が高いこともわかっています。
佐々(Adjust):セカンドスクリーンの存在も重要なポイントですね。テレビを見ながら手元にスマートフォンを置いている人の割合は、統計によると75%から80%にも達するという非常に高い数字が出ています。視聴中に検索をしたり、複数のアプリを利用したりする行動が期待できるでしょう。アクションを促しやすいと考えられます。
そして、デジタルという特性上、視聴の計測やターゲティングが可能であることも特筆すべきポイントだと思います。
モバイルアプリトレンド2024:日本版
AdjustとSensor Towerが共同調査した本レポートでは、日本市場でのアプリパフォーマンスに関する戦略的なインサイトをお届けします。ゲーム、ファイナンス、Eコマース、コネクテッドTV、PC、コンソールなどのチャネルのデータ分析から、アプリの成長機会を探ります。
アプリマーケで高い効果を期待できるCTV広告の活用事例
佐々(Adjust):CTVの価値を証明すべく、皆さんは様々な検証を実施していると伺っています。野村さんから紹介していただけますか。
野村(フジテレビジョン):当社が出資している古地図アプリ「大江戸今昔めぐり」のインストール数をKPIとし、CTV広告を活用することで数値にどれくらい変化があるかを確認しました。
その結果、どのCM素材で比較してもスマートデバイスよりCTVのほうがインストール数が多いことが明らかに。他の検証でも、たとえクリック数は他デバイスのほうが多かったとしても、インストール数はCTVのほうが多い結果が出ており、パフォーマンスの高さが実証されています。アプリマーケティングではインストール数をKPIとすることのほうが多いので、アプリマーケターの方であればCTV広告の価値がわかると思います。
また、性別・年齢別でセグメントを分けたほうが、CPI(Cost Per Install)を低く抑えられるという結果も出ています。一方、興味関心層で細かく分けた際は、効率の良いものもありましたが、効率の悪いものも見られました。このことから、マーケティングを行う上でセグメントを細かく分けすぎるのではなく、性別と年齢程度で分けることが効果的である可能性が高いと考えられるでしょう。
さらにオーガニックでアプリを入手したユーザーと、TVer経由で入手したユーザーでは、後者のほうがリテンション(継続利用率)が高いことも明らかになっています。おそらくサービスの内容をよく理解した上でインストールしているためだと考えられます。
これまでにない広告体験の創出 新たな広告フォーマットも続々登場
綾瀬(ABEMA):当社の事例も紹介します。「ABEMA」では、スポーツ中継などを中心にCTVに注力している流れの中で、より効果的な広告体験を作り出す取り組みを進めています。その一環として、昨年からスプリットスクリーン型の広告「ABEMA Live Screen Ad」をリリースし、実績が出てきている状況です。試合をライブ視聴している中で注目を集めやすいため、広告認知率も高く、ブランド認知を含めて非常に良好なスコアが出ています。
また、大画面という特性を考慮した、スポーツ中継中の広告としての最適なレイアウト・体験について検討をしていました。その中で、NTTデータ様に協力いただきながら、画面内でユーザーのアテンションがどこに集まりやすいかを分析した結果、「ABEMA Live Screen Ad」の広告エリアに関しては、左側および上側にあるほうがより集めやすいとわかりました。この結果を受けて、今シーズンのメジャーリーグベースボール中継などにおいては、新しい広告レイアウトで販売・掲載を行っています。
そして、コンテンツと連動したクリエイティブを展開することで、視聴者により自然な形で興味を持ってもらえるようにするなど、新しい広告フォーマットの創出にも取り組んでいます。
佐々(Adjust):CTV広告は、視聴者が気になったときに動画を一時停止できる特徴があるため、海外では一時停止したときに表示される特別な広告フォーマットもあります。
このように新しい広告フォーマットが次々と登場していることは、非常に興味深いことだと思います。
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TVer、YouTube、テレビCMの比較から見る、CTV広告の価値
野村(フジテレビジョン):フジテレビは、TVerのセールスも行っているため、TVerの広告価値がどれほど高いかを検証すべく、TVerとYouTube、そしてテレビCMを様々な面で比較してみました。
注目すべき点は、TVerのコンバージョン獲得効率が3年間で大きく向上していることです。これはCTV市場の拡大とほぼ連動しており、CTVの成長がコンバージョン獲得効率を高めている可能性があります。最新の月ではCTVの広告配信数は4割を超えており、2024年はさらに伸びる可能性があります。
ちなみにテレビCMのコンバージョン率は低く見えますが、これはテレビCMの予算規模が圧倒的に大きいため、獲得量自体が多くなっていることに起因しています。
佐々(Adjust):十分な予算があり、とにかく獲得数を増やしたいということであれば、テレビCMの出稿一択となるかもしれませんが、商材やターゲット層などによってはTVerなどCTVを活用するほうが効率が良いケースもあるだろうと感じます。
野村(フジテレビジョン):広告の残存効果に関しては、テレビCMが圧倒的です。そしてTVerが続いています。大画面のインパクトが非常に大きいことが影響していると考えられます。
また、TVerのコンテンツはテレビのコンテンツであることから、TVerにはテレビに近い信頼性があることも無視できないポイントだと思います。
CTV広告ではアシスト効果に注目
佐々(Adjust):まとめとして、CTV広告を活用する際に注目していただきたいポイントとして、アシスト効果を紹介します。
当社をはじめ、モバイルアプリの計測ツールを扱うベンダーは、基本的にコンバージョンに最も近いラスト接触を以て「コンバージョンへの貢献」と見なしますが、実はその前にも多くのユーザーがCTV広告に触れています。そのため、CTV広告のキャンペーンパフォーマンス全体に与える影響を可視化し、「コンバージョンをいかにアシストしているか」を見る必要があるのです。
Adjustのアシスト管理画面のレポートでは、CTV広告に限らず「どれだけアシストしているのか」を可視化します。たとえば、アシストあり/なし別のインストール数の推移や、チャネルごとのインストール割合などがわかります。つまり、各マーケティングチャネルが互いに与えている影響の全体像を把握することが可能です。このレポートを参考に、総合的に分析することで、CTV広告の真の価値を評価することができるでしょう。
佐々(Adjust):そもそも純粋にインストール数で見ると、アトリビューションが付きにくいという特性がCTV広告にはあります。そのため、アシスト効果と、インストール後のユーザーの質を評価することが重要です。後者に関しては、他のデジタル広告よりもCTV広告のほうがインストール後30日間の継続率が高い傾向にあることがEコマースのお客様の事例で明らかになっており、この傾向は多くのCTV広告で見られています。
まだ日本では事例の数や種類が限られています。皆さんもぜひCTVに挑戦し、事例を共有いただければと思います。
改めまして綾瀬さん、野村さん、大野さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。
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