まとめ:「個人化するパーパス」
今回は四つの好事例を紹介しましたが、現在のパーパスブランディングでは、以下の二点が大事になってきていると考えています。
1.具体的なアクションが求められている
今の生活者の特筆すべき意識の変化として、ブランドが掲げるパーパスに対して、疑念の目が向けられている側面があります。実際に多くの生活者が、ブランドの社会的なコミットメントに対して懐疑的に思い、そして活動の透明性を求めているのです。
現在は多くの企業がパーパスを掲げ、寄付や啓蒙活動を行っていますが、今回挙げさせていただいた事例は、そのどれもがブランドが具体的なアクションを起こしていることに特徴があります。
加えて、自社の商品やサービスの特長を活かすことで(フィリップスは再点検商品を販売し、JBLは視覚障害者に対してゲーム機会を提供するなど)、ブランドがどのように社会の役に立てているかを具体的に示していることが、ブランド価値の立証になり、また活動としての差別化につながっているのだと考えます。
2.パーパスは個人化
もう一つのポイントとして、企業やブランドに対し、社会全体(マクロ)に対しての影響を期待しつつも、生活者は最終的には個人的な利益(ミクロ)を求めているという点です。
ブランドエクイティを以下の三つのカテゴリーに分けて、ブランド好意度との相関性を見た場合、今の生活者は個人の自己認識や生活向上に与える価値、いわば個人資産を最も重視していることがわかりました。これは毎年の調査の中でも過去最も高い割合となっています。また別の分析では、「個人の生活を向上させる」ことが「自分にとって意味のあるブランド」であると、高い相関が認められました。
以上の内容から、社会課題を解決しつつも、個々人のニーズに対してブランドの存在意義を示すことが、今の生活者にとって有効であることがわかります。ルノーは求職者に対して車の購入ハードルを下げ、マスターカードは新たなビジネスを成功させるための情報提供をしていましたね。
当然ながら日本国内でも、生活者の意識の変化に併せて、ブランド側も新しい関係性作りにチャレンジしていると思います。マーケティングコミュニケーションという観点でも、従来の広告という枠ではなく、パブリックリレーションも含めた、より包括的な対応が必要になってくると考えています。今回のお話がご参考になれば幸いです。
パーパスは企業やブランドの根幹に関わる大きなテーマだと考えていますので、今後も引き続き注目をしていきたく考えています。
