最初の1年間は「会員数」ではなく「UX向上」を重視
──有料会員を増やすための施策はどのようなことをされているのでしょうか?
ホン:細かな改善施策はもちろん実施していますが、最初の1年間は「UXを高める期間」と位置付けています。有料会員をどんどん集めるというよりは、記事の拡充やアプリ内体験を良くすることで継続率や満足度を高めることを最も重視しています。
そのために、「RAU(リーディングアクティブユーザー数)」という指標を重視しています。一般的にはDAU(1日当たりのアクティブユーザー数)、MAU(月間アクティブユーザー数)を追うことが多いですが、それはアプリを開いただけで数に入るため、ログインを促進する施策に走りがちになります。それよりも、「記事を毎日読んでいる人が何人いるか」という指標の方が本質的だと考えています。

ホン:UX改善に注力していった結果、サブスクサービスで課題となる解約率もサービス開始当初から低いです。また、ユーザーをセグメントで分けて行動の変化を追うコホート分析では、解約者の再契約率が高いことも分かっています。
つまり、解約しても翌月以降にまた契約してくれる可能性が高いのです。簡単に解約できないサブスクサービスも多いですが、一度契約するとなかなかやめられないサービスを再び使うことは少ないでしょう。契約も解約も簡単にできるようにすることで、「読みたい記事があるから今月だけ契約して、次にまた読みたいものが出てきたら契約する」こともできます。ユーザーは無料と有料のサービスを賢く使い分けているのです。
PMFを早期に実現した、ターゲット戦略
──サービス開始から8ヵ月ほど経ちますが、新たな気付きもありましたか。
ホン:ターゲットを明確に設定できたことが好調の要因だとお話ししましたが、その一方で、当初コアターゲットとしては設定していなかった人たちもたくさん有料会員になってくれました。それは大きな気付きでしたね。
──ターゲットはどのように設定したのですか。
ホン:コアターゲットの他に、シャドウターゲット、ビヨンドターゲット、ビジョンターゲットというものを設定していました。チームメンバーにはコアターゲットのみを共有し、その他は私の頭の中で描いていたものです。
まずコアターゲットは、25~35歳の自己成長意欲が高い人たちです。そして、シャドウ、つまり影のターゲットは45~55歳、子どもが成長して自分の時間ができたときに、もう一回自己投資に戻れるライフステージにいるような層です。
ビヨンドターゲットは、有料メディアをいくつも使う“ニュースマニア”のような人で、今回のターゲットではありません。そして、ビジョンターゲットは「いつかこういう人たちに読んでもらいたい」という層。今の仕様では難しいですが、1年後、3年後、あるいは10年後にはすくい上げたいターゲットです。
元々コアターゲットに置いていた若年層は、長文ニュースを避ける傾向にあります。そのため、要約記事が読める「30秒ブリーフィング」や「グラフィックニュース」といったコンテンツをそろえていきました。
しかしリリースから半年経ち、想定以上にシャドウターゲットである40~50代の方々のニーズが高いことが見えてきました。そのため次のフェーズでは、現状のユーザー層に合わせて、コンテンツやサービスの拡充・改善をしていこうと考えています。
──最後に、今後の展望をお話しください。
ホン:現状、SmartNewsを毎日使っている人もいれば、最近は使っていないという人もいます。アプリを長い間開いていないと、SmartNewsの変化に気付いていないかもしれません。今後、起動してもらうきっかけを与えるような取り組みもしていきたいですね。
また、事業立ち上げ時にマイルストーンを切っていました。フェーズ0がサービスリリースで、フェーズ1がPMFを証明する、です。PMFはリテンションレートを指標にしていたのですが、実は想定より早く達成することができました。今後はフェーズ2のスケーラビリティを証明するに入ります。
具体的な施策については、目下試行錯誤を重ねている段階ですが、直近では記事ジャンルの拡充などを予定しております。また、記事のジャンルだけでなく、機能面のアップデートも実施するので、楽しみにしてもらえたらと思います。
