アプリのグロースのためにまず社内での認知を獲得
二つ目は、社内での定期的な情報発信です。私たちは年に1回、自主的にアプリ運営の活動内容の報告会を全社向けに行っています。この報告会では、インタビューやアンケートから得られた示唆や、アプリの運用を通して見られた傾向などを紹介し、社内に情報を還元するようにしています。
三つ目が、積極的な声掛けです。立ち上げ当初は、情報発信の手段としてアプリを想起してもらえなかったので、定期的に各部署に発信したい情報がないか聞いて回りました。その結果、発信できそうな情報が出てきた際にはアプリを思い出して私たちに相談してくれるようになったんです。そして、発信後には得られた結果をしっかりとフィードバックすることで、次に情報発信を行う際にもアプリを使おうと思ってもらえるように意識していました。
──アプリのUI/UXを改善していく上でどのようなデータを重要視していますか?
DL数やアクティブユーザー数は特に注意して見るようにしています。空港という場所の特性上、これらの数値は夏休みや年末といった多客期に大幅に増加する傾向があるのですが、それ以外の時期でも安定的に使ってもらえているかどうかを確認しながら、コミュニケーションの設計などを行っています。
加えて、ユーザーのアプリ内行動データの分析も行っています。たとえば、航空便情報を見た人は、これから先に飛行機に乗る確率が高いと推測できるので、そのようなユーザーにプッシュ通知で「マイフライト登録」を促します。その上で、フライト情報を基に、おすすめのショップやECの情報などをプッシュ通知で知らせたりもしています。
このようにデータに基づいたOne to Oneマーケティングを推進することで、ユーザーの満足度がより向上し、再利用につながると考えています。
アプリの役割はファンの醸成
──ホームページでも情報は得られると思いますが、アプリとのすみ分けはどのように行っていますか。
ホームページは、空港までのアクセスや航空便の情報、ターミナルの位置など、知らなくてはいけない空港の基本的な情報を網羅している場所です。そのため、多くの人は最初にホームページを訪れており、月間UUは100万ほどあります。
一方アプリでは、空港での体験をより良くするための情報の提供に注力しています。店舗情報であれば営業時間や扱っている商品、検査場の前後どちらにあるのかなどの細かい情報が簡単にわかるように設計されており、ロイヤルカスタマー醸成の役割を担ってくれています。
──アプリの利用データを分析する以外で、顧客のニーズを理解するために行っていることはありますか。
2024年3月から独自のポイントサービスを開始しています。同サービスは、空港内45店舗の直営店で、商品購入時にポイントを付与。ユーザーは次回以降の買い物で利用できます。
同サービスのスタートによりユーザーの購買データが取れるようになりました。これはユーザーのニーズを把握する上で非常に大切です。
たとえば東京から地方に観光で行く人の場合、東京でお土産は買わないという人がほとんどです。しかし、これが帰省や仕事の場合は異なります。