新人類シニアに有効なIP活用のポイント
──新人類シニア、特にサブカル気質のある50代男性は、自分の趣味や娯楽を大切にしており、それらにお金・時間を費やす意識が高いこと。また、ネットを駆使して積極的に情報を収集していることなどがわかってきました。たしかに、従来のシニア像とは様相が異なりますし、新人類シニアに対してはマーケティングのアプローチもアップデートする必要がありそうですね。
清水:ええ。そこで今回は、アニメや漫画への親和性が高いという新人類シニアの特性を踏まえた、シニアビジネスの切り口やアイデアとして「シニアビジネス×IP活用」のポイントをご紹介しようと思います。現在、IP活用は主に若者向けの施策として考えられることが多い印象ですが、これからはシニア向けの施策でも、IP活用の有効性が高まってくると考えています。
安並:シニアをターゲットにした商品・コミュニケーションにIPを活用することのメリットとして、まずはブランドトライアルを促進できることがあります。前提として、シニア層は、「ずっと使っている慣れ親しんだ商品」を何らか持っている方が多く、ゆえになかなか広告が響かないと言われています。特に日用品はその傾向が強く、ブランドスイッチのハードルが高いというのが、シニアマーケティングが難しいと言われる要因です。
よって、シニアマーケティングにおいては、まず一度トライアルさせることが重要となります。商品やサービスを自分事化させる手段としてIPが有効なのです。
シニア向けにIPを活用するメリットの一例
- 幅広い世代に向けた商品・サービスにおいて、一時的にシニアを狙う施策に有効・反対に、他の世代に「シニア向け」と認識されたくない場合にも有効(IPを介してシニア層にターゲットできるため、コピーやビジュアルで直接的に訴求する必要がない)
- 起用するIPによっては、孫・子供・祖父母と3世代を対象にすることも可能
- 値段や機能での差別化ではなく、IP活用による「付加価値化」が可能・ストーリーテリングが必要な商材で、効率的に認知・共感・納得感を向上させることが可能
林:シニアビジネス×IPには、本当にいろいろな目的・切り口があると考えています。たとえば、シニア×エンディング(生前葬)、シニア×介護用品(おむつ)など、これまで“不”や“ネガティブ”が大きかったビジネスにも、これからはエンタメの要素が入ってくるかもしれません。シニア向けおむつのマーケティングが変わってくると、いよいよ本格的にシニアマーケティングにおけるコミュニケーションのセオリーが変わってくるだろうと見ています。
──おむつに関して言うと、赤ちゃん向けの商品では既にIP活用が盛んです。シニア向けにする場合、単純に活用するIPが違えばよいという話でもなさそうです。
林:そうですね。そのIPについているファン層、彼らが持っているインサイト、作品の世界観などを分析した上で、マーケティングの目的から逆算してコラボ企画を考えていく必要があると思います。文脈の作り方にも注意が必要です。
シニアビジネス市場でIPが活用された例はまだ多くありません。新人類シニアが完全にシニア期に移行する前に、企業は早めにシニアマーケティング×エンタメのコツやツボを押さえておいたほうがよいでしょう。