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『MarkeZine』(雑誌)

第106号(2024年10月号)
特集「令和時代のシニアマーケティング」

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【特集】令和時代のシニアマーケティング

1980年代の「新人類」がシニア期へ突入 シニアマーケが大きく変わる潮目を捉えよ

 戦後の復興期を過ごした「焼け跡世代」、高度経済成長期を支えた「団塊の世代」に続き、1960年以降に生まれた世代「新人類」がシニア期へ突入し始めている。日本の豊かな時代を過ごしてきた新人類世代は、従来のシニアとは異なる生活意識・価値観を持っているようだ。シニアマーケティングのセオリーが変わる潮目を捉えよう。

※本記事は、2024年10月刊行の『MarkeZine』(雑誌)106号に掲載したものです

新人類シニアとは。他のシニア世代にはない特徴

──この記事では「新人類シニア」にフォーカスし、シニアマーケティングの潮流の変化について博報堂の清水さん、林さん、安並さんに解説いただきます。はじめに、新人類シニアの定義から教えていただけますか。

清水:「新人類」という言葉は経済学者の栗本慎一郎氏による造語で、1980年代に「他の世代とは異なる価値観・常識を持つ若者世代」を指す言葉として注目を集めました。かつては“若者”として注目されていた新人類もシニア期に突入し始めており、近年「新人類シニア」として再びフォーカスされている形です。

 年齢の定義は各所で若干異なりますが、我々は1961~1970年生まれの人々を新人類シニアと定義しています。現在の年齢で言うと、54~63歳の方々ですね。また、新人類シニアの世代はその特徴を踏まえ、「オタク第一世代」とも呼ばれています。

株式会社博報堂 クリエイティブ局 コミュニケーションプロデューサー ガリガリ編集部 メンバー/博報堂シニアビジネスフォース メンバー /シニアエンタ★ラボ フォーラムメンバー 清水 大司(しみず・ひろし)氏 2002年ペンシルベニア州立大学経営学部卒業後、博報堂入社。入社以来、マーケティング職に従事。ブランドコミュニケーション、リブランディング、新商品・ブランドローンチなどの業務に従事。近年は、シニアビジネスに特化する「博報堂シニアビジネスフォース」、サブカル専門クリエイティブチーム「ガリガリ編集部」に所属。
株式会社博報堂 クリエイティブ局 コミュニケーションプロデューサー ガリガリ編集部 メンバー/
博報堂シニアビジネスフォース メンバー/シニアエンタ★ラボ フォーラムメンバー 
清水 大司(しみず・ひろし)氏 

2002年ペンシルベニア州立大学経営学部卒業後、博報堂入社。入社以来、マーケティング職に従事。ブランドコミュニケーション、リブランディング、新商品・ブランドローンチなどの業務に従事。近年は、シニアビジネスに特化する「博報堂シニアビジネスフォース」、サブカル専門クリエイティブチーム「ガリガリ編集部」に所属。

──みなさんは、今後シニア市場においてはこの新人類シニアの攻略が欠かせないと考えられているんですよね。

清水:はい、これからシニア市場で商機をつかむには、新人類シニアのインサイトを早期に押さえておく必要があると考えています。理由は、従来のシニアマーケティングで対象とされてきた「焼け跡世代」「団塊の世代」とは一線を画す生活意識・実態を持っていると考えられるからです。

 新人類シニアに対しては、これまでのシニアビジネスとは異なるアプローチが必要となりますし、これはシニアビジネスの創造・拡大を目指している企業にとって大きなチャンスであると言えます。

──他のシニア世代にはない、新人類シニアならではの特徴とは、どういったものですか?

清水:マーケティングの観点から注目すべきは、やはりお金の使い方です。前提として、現在日本では推計約1,800兆円ある家計金融資産の6割以上を60歳以上の世帯が保有しているとされています。退職金をもらっていることもあり、シニア層が多くの金融資産を有しているというのは、以前から言われていることですよね。ただ、貯金を崩しながら、所得がない中で生きていく従来のシニア層と違い、新人類シニアには自身の資産を運用しながら、人によっては働いて所得を得ながら、自分のためにお金を使っていく傾向があるのです。健康寿命が延びていることもあり、純粋に余暇の時間も増えていますから、時間にもお金にも余裕がある方が今後増えてくると考えられます。

林:我々が新人類シニアに着目しているもう1つの理由は、彼らが幼少期に触れたエンターテインメントやサブカルチャーにあります。

 日本のエンタメ史を振り返ると、1960年代を狭間にして、いわゆるサブカルチャーと言われるものがどんどん豊かになっていることがわかります。三つ子の魂百までと言いますが、物心ついた頃からエンタメに触れてきた原体験は、シニア期に突入しようとしている今も彼らの中に残っているはずだ、というのが我々の仮説です。子供の頃にテレビや漫画に触れられなかった焼け跡世代や団塊の世代の方々とは、「エンタメ」「サブカルチャー」を受容し、楽しむベースが大きく異なると考えています。

株式会社博報堂 クリエイティブ局 コンテンツディレクター ガリガリ編集部 リーダー/シニアエンタ★ラボ フォーラムメンバー 林 龍太郎(はやし・りゅうたろう)氏 サブカル雑誌編集者やフリーペーパー事業の立ち上げなど出版業 界を経て、博報堂に入社。アニメ、マンガ、ゲーム、声優などのオタク領域を専門にしたクリエイティブチーム「ガリガリ編集部」を2014年に設立。CMクリエイティブ、デジタルプロモーション、イベント運営、PR、バズプロモーションなど幅広く担当。
株式会社博報堂 クリエイティブ局 コンテンツディレクター ガリガリ編集部 リーダー/
シニアエンタ★ラボ フォーラムメンバー 林 龍太郎(はやし・りゅうたろう)氏

サブカル雑誌編集者やフリーペーパー事業の立ち上げなど出版業 界を経て、博報堂に入社。アニメ、マンガ、ゲーム、声優などのオタク領域を専門にしたクリエイティブチーム「ガリガリ編集部」を2014年に設立。CMクリエイティブ、デジタルプロモーション、イベント運営、PR、バズプロモーションなど幅広く担当。

清水:総じて、新人類シニアは、とても豊かな時代を生きてきた世代です。林の説明にあったとおり、子供の頃からカラーテレビや特撮、ゲーム機器、ファミコンなどに親しみ、若年期にはバブル期を過ごしています。要は、より上のシニア世代とは生きてきた時代やライフスタイルが大きく異なるのです。

 多様なカルチャーの創成期を送ってきた彼らは、現在どのような生活意識を持っているのか? シニアビジネスには、どのような新しい可能性が広がっているか? これを調べるため、50~70代男性を対象に調査を行うと興味深い結果が出てきました。

調査概要

  • 50~70代男性+サブカル50代男性を対象にネット調査を実施(実施時期は2021年3月/有効サンプル数は計600)
  • サブカル50代男性の推計人口は約77万人、予備軍まで含めると約360万人
新人類シニアが幼少期~新社会人だった時期の出来事 ©2024 SHOEISHA Co.,Ltd(タップで画像拡大)
新人類シニアが幼少期~新社会人だった時期の出来事 ©2024 SHOEISHA Co.,Ltd(タップで画像拡大)

注目ポイント:購買において趣味・嗜好を大切にする

清水:調査の結果まずわかったのは、男性50代の多くは、まだまだサブカルコンテンツ現役世代であるということです。たとえば、漫画・アニメ・テレビゲームは趣味と言えるか否かという質問に対して、男性50代はおよそ6割の方が「立派な趣味と言える」と回答していますが、これが60代になると約4割、70代では3割未満まで激減します。

 さらに興味深かったのは、こうした趣味や娯楽に対する消費意欲の違いです。この調査では、回答者のうち漫画・アニメ・特撮・テレビゲーム・アイドルのイベントやグッズにお金をかけてもよいと回答した人をサブカル層として区分し、「サブカル男性50代」を切り出しました。すると、自分の好きなことにお金を費やす新たなシニア像が浮かび上がってきました。

 子供1人に対して、両親・両祖父母の合計6人の財布があることを「6ポケット」と言ったりしますが、実はサブカル男性50代の約4割は独身という状況です(男性50代39%/男性60代21%/男性70代12%)。加えて、サブカル男性50代に関しては、1人で好きなことを楽しめる時間を持ちたいと回答した方が7割にも上ります。これを踏まえると、サブカル気質がある方を中心に、個人の趣味・嗜好を消費に反映させるシニアが今後ますます増えてくると考えることができます。

注目ポイント:デジタルネイティブシニアの増加

清水:2つ目のファインディングスは、新人類シニアはネットツールをなんなく使いこなしているということです。たとえば、YouTube利用率を見ると、男性50代は73%(サブカル男性50代は84.4%)、男性60代は60.3%、男性70代は64%と、50代を境目に利用率のスコアが大きく違っていました。最近、シニアインフルエンサーが増えてきているのも頷ける結果です。

安並:これは自分の好きなことを深掘りした先にYouTubeやSNSツールがあった、ということですね。若者はピックしておいたインフルエンサーから広く情報を受け取りますが、シニアの場合は自ら検索をし、自分が欲しい情報を取りに行くというスタイルが主です。つまり、知りたいことを検索する手段としてYouTubeやSNSがあるので、若年層や中年層とは行動の主従が違います。

株式会社博報堂 生活者発想技術研究所 シニアビジネスフォース・新大人研所長 安並まりや(やすなみ・まりや)氏 2004年博報堂入社。ストラテジックプラナーとしてトイレタリー、食品、自動車、住宅・人材サービス等様々な業種のマーケティング・コミュニケーション業務に携わる。2015年より新大人研のマーケティングプラナー兼研究員として、商品・コミュニケーションプラニングや消費行動の研究に従事。2019年より新大人研所長に就任。
株式会社博報堂 生活者発想技術研究所
シニアビジネスフォース・新大人研所長 安並まりや(やすなみ・まりや)氏

2004年博報堂入社。ストラテジックプラナーとしてトイレタリー、食品、自動車、住宅・人材サービス等様々な業種のマーケティング・コミュニケーション業務に携わる。2015年より新大人研のマーケティングプラナー兼研究員として、商品・コミュニケーションプラニングや消費行動の研究に従事。2019年より新大人研所長に就任。
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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

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2024/10/30 16:41 https://markezine.jp/article/detail/46951

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