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『MarkeZine』(雑誌)

第106号(2024年10月号)
特集「令和時代のシニアマーケティング」

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MarkeZine Day 2024 Autumn(AD)

大丸東京店が実践した、来店促進につながる「コミュニティ」戦略とは?

 顧客接点がリアルに限られている業態では、来店してもらえないとアプローチができない、接点を持ててもリピートにつなげづらい、口コミが集まらないなどのマーケティング課題も少なくない。どうすれば想起率や来店頻度の向上につながり、長期的な顧客接点を構築できるのか。MarkeZine Day 2024 Autumnにおいて、コミューン株式会社 インサイドセールス部 部長の新山恒平氏が登壇し、オンラインコミュニティの活用方法を大丸東京店の事例とともに紹介した。

顧客接点・関係構築における課題

 コミューン株式会社は「あらゆる組織とひとが融け合う未来をつくる」というビジョンを掲げ、オンラインコミュニティをノーコードで作れるプラットフォーム「Commune」を提供。2018年からコミュニティに取り組み、マーケットリーダーとしてコミュニティの拡大や事業成果創出を支援してきた。

 指先一つで世界中の人とコミュニケーションができ、あらゆる情報を簡単に発信・受信できるようになった現代にも残る、組織と人の間の「断絶、距離、垣根、摩擦」の解消に向け、理想的な関係性の実現に取り組む同社。BtoBやBtoCを問わず、幅広い業種業態、スタートアップからエンタープライズまで、コミュニティを信じる名だたる企業に活用されている。

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当日の投影資料より(以下、同)

 同社インサイドセールス部 部長の新山恒平氏は、まず顧客接点における課題を次のように整理する。

 「顧客接点における一般的な課題として、たとえば、良質な口コミが集まりづらいリピーターがなかなか増えない来店してもらえないとアプローチできないおすすめの商品との出会いを提供しきれていないなどがあります。これらの課題解決のためにPOSデータや会員データといった行動データをもとにしたマーケティング施策を打っても、なかなか効果が出ない、あるいは効果が出ているのかもわからないことも多いと思います。様々な行動データを簡単にトラッキングできる時代になっても、成果に結びつけることは難しい現状があります」(新山氏)

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コミューン株式会社 インサイドセールス部 部長 新山 恒平氏

心理データ・双方向コミュニケーションの重要性

 特に小売(リテール)業界では、2つの大きな課題に直面している。「慢性的な人手不足」と、時代とともに変わる「ニーズの多様化」である。これらの社会の変化と課題により、企業のマーケティング施策には大きな影響があると新山氏は言う。

 「1つ目は、LTVの重視です。人口減少社会では、新規顧客の獲得だけでなく、一度獲得した顧客との関係を維持し、ファンやロイヤルユーザーを増やすことが今後どんな企業にとっても重要になります。2つ目は、デジタル化によって情報量が増加していく中で、“誰が発信したのか”が購買の意思決定に大きな影響を与える時代になっていることです。3つ目は急速なデジタルシフトです。コロナ禍で多くの企業が顧客接点をデジタル化し、SNSを活用して生活の中に入り込み、顧客のマインドシェアを奪い合う競争が激しくなっています」(新山氏)

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 これらマーケティング活動に影響を与える変化を踏まえ、「行動データだけをもとにした企業からの一方的な情報発信には限界が来ている」と新山氏は主張。

 マーケティング効果を最大化するには、定量(行動データ)調査と定性(心理データ)調査が必要不可欠だが、行動データだけでは顧客が商品を購⼊した背景や目的、ブランド選好度、利⽤実態などを把握するのが難しい。「本当は何を考えているのか?」を捉えるのが困難なのだ。そこで重要になるのが心理データだ。

 より濃度の⾼い心理データを得るためには、一方通行の情報発信ではなく、双方向のコミュニケーションが必要となる。この心理データを継続的に取るために適した手段が「コミュニティ」なのだ。

大丸東京店が実践した「コミュニティ」活用

 ここで、新山氏は大丸東京店が運営するコミュニティ「World Wine Now!」の事例を紹介した。

 「World Wine Now!」は、大丸東京店が主催する日本最大級のワインイベント「世界の酒とチーズフェスティバル」に関連したコミュニティとして5年前からスタートした。

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 「コミュニティ内の情報は大きく3つのカテゴリーに分かれています。1つ目は業界の内輪話、2つ目は自由にコミュニケーションが取れる場所、3つ目は『世界の酒とチーズフェスティバル』の最新情報を入手できる場所です。イベントがない期間にもワインの情報に触れられるよう、ワイナリーや原産地の情報を提供していますし、コミュニティ内でオフ会イベントも開催しています。年2回しかないフェスという顧客接点以外に、今では2週間に1回という頻度で接点を持つことを実現していますし、コミュニケーションの双方向性も担保されています」(新山氏)

大丸東京店が「コミュニティ」運営を始めた理由

 「世界の酒とチーズフェスティバル」は1975年に始まり、2024年4月に103回を迎えた歴史の深いイベントとなっているが、課題も抱えていた。

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 1つは、年2回のイベント以外の顧客とのタッチポイントが薄かったことだ。それまでもイベント以外の接点として、イベント集客のためのプッシュ型の広告配信やアプリ掲載、ワインのオンライン販売などの取り組みを行っていた。しかし、定期的なコミュニケーションという意味では、リアルな場しかなかった。

 もう1つは、顧客の高齢化だ。1975年から始まったイベントのため、徐々に顧客の年齢が全体的に上がっていく。リアルな接点しかないことで新規顧客獲得の難しさも感じており、この先イベントを盛り上げていくためには20~30代の参加が不可欠だと考えていた。ここにコミュニティを導入しようと考えた背景を新山氏は次のように説明する。

 「元々ワイン好きな方たちにとって、コミュニティ活動は身近な存在でした。また、若年層とオンラインコミュニケーションの親和性も高いことに着目しました。これらをうまく組み合わせることで、年2回しかなかった顧客接点を恒常的にし、日常的にワインに触れてもらうきっかけを作れると考え、コミュニティの取り組みを始めました」(新山氏)

少ない運営工数で「コミュニティ」を盛り上げることに成功

 運営体制としては、コミュニティ内の投稿や読み物コンテンツ作成、オフラインイベントの企画運営を大丸が担当し、コミュニティ戦略立案やファンのアクションに関するアドバイス、細かい運用サポートをコミューンが支援した形だ。

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 大丸側でコミュニティ運営に携わっているのは、大丸東京店全体の販促業務の管轄者と、催事企画やワインショップのソムリエの2名。コミュニティ専任のリソースを配置しているわけではなく、他業務をメインにしながら円滑なコミュニティの運営を実現しているのだ。

 現在はさらに、コミュニティに所属するメンバーがイベントレポートを書くなど、運営側の工数を増やすことなく、イベントや商品・サービスに対するユーザー生成コンテンツ(UGC)が自然に生まれる状態になっているという。

 「コミュニティを盛り上げるためには、コミュニケーションの起点となる情報発信コンテンツが欠かせません。また、新規登録者に丁寧にウェルカムコメントをしたり、DMを送ったりするなど、工数を一定かけなければならない部分があります。そこの運用サポートを弊社でさせていただいたので、1人あたりの工数を分散させながら進められたという点で評価をいただいております」(新山氏)

顧客の「熱量」を実感でき、関係性の構築も実現

 大丸東京店はコミュニティ施策を通していくつかの価値を見出している。

 「1つ目は、お客様との関係性において売買以外の関係が成り立つことがわかったという点です。元々催事からスタートしているため、大丸東京店とお客様の関係は物を買う人と売る人という関係だけでした。そこにワインの情報やノウハウが加わり、ワインについて談義する場があることで、お客様との新たな関係が成立したのです。最初は不安を感じられていたようですが、実際にコミュニティが盛り上がり、お客様がこれほど熱量を持っていることを知ることができた。まさに定性データが見えてきたことに大きな価値を感じていただきました」(新山氏)

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 また、ワインには年代や味、産地など、1本1本に特徴とストーリーがある。これらの情報も少ない接点では伝えきれていなかったが、オンラインコミュニティにより伝えられるようになったという。さらに、発信したコンテンツに対して顧客からコメントが寄せられ、そのコメントに返信するという関係性を築けたことも大きな成果であると大丸は感じている。

 「ユーザーの理解やインサイト獲得の面でも成果がありました。これまで漠然と考えていたお客様像が、より明確で具体的に見えるようになったのです。たとえば、以前は赤ワインが売れていたのに、最近では白ワインやスパークリングワインが売れているという行動データを把握していた。それに加えてコミュニティ内で『白ワインが美味しい』や『スパークリングワインが美味しい』といったコメントで、定量と定性の情報を合わせて確認することができるようになりました。これにより、売り場の白ワインの割合を増やすなど、安心してお客様のインサイトをもとにしたマーケティング活動を実施できるようになったと担当者は語っています」(新山氏)

 大丸の担当者にとっても、ワイン好きな人との交流は貴重な経験となっている。接点が増えたことで細かな気づきを得られる機会も増え、仕事のモチベーションにもつながっているようだ。「定量データも重要ですが、お客様の声や価値ある意見を十分に広げ、それに応えることができるようになったことが大きな価値」と新山氏は強調する。

行動×心理データでマーケティングの効果を最大化

 行動データと心理データを組み合わせることで、マーケティング効果は最大化される。そのためには双方向のコミュニケーションを効率よく、質も高く行っていく必要がある。コミュニティは組織と人、人同士のコミュニケーションを生み出し、心理データの取得から発信までを一気通貫で実施することができる手段となる。

 新山氏はコミュニティを通してできるようになることを次のように整理した。

  • データだけでは獲得できなかったインサイトを爆速で得られる。
  • 商品の活用実態や商品との関わり方を可視化できる。
  • 心理の変化を様々なログデータとともに継続的に可視化できる。
  • ファンとの距離が近づき、ファンが味方になる。ファンが企業のあらゆる活動や施策の初速を作り、下支えする。

 コミューンでは、コミュニティ施策の向き不向きをチェックするリストを作成している。たとえば、「BtoBなら100社、BtoCなら1,000人以上のユーザーが集まるかどうか」「ユーザーの⽬的に共通性があるか」「活⽤すればするほどメリットが増す商品‧サービスであるか」などだ。「このような条件に当てはまる方は、ぜひお話しできればと思います」と語り、新山氏はセッションを終えた。

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この記事の著者

落合 真彩(オチアイ マアヤ)

教育系企業を経て、2016年よりフリーランスのライターに。Webメディアから紙書籍まで媒体問わず、マーケティング、広報、テクノロジー、経営者インタビューなど、ビジネス領域を中心に幅広く執筆。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:コミューン株式会社

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2024/11/14 10:00 https://markezine.jp/article/detail/46964