海外からも注目される「高齢化先進国・日本」
──シニア向けに商品やサービスを出す企業の状況や、シニア市場の規模は現在どのような状況ですか?
シニア市場としては100〜110兆円になると言われています。また60代や70代向け商品・サービスのアプローチをDX化するという大きな潮流があり、企業からの期待や市場の大きさを強く感じます。
弊社も年間で約1,000社からお問い合わせをいただき、その数も毎年増え続けています。企業からのお問い合わせには2パターンあります。1つ目はシニア層向けに新規事業を展開したいパターン。2つ目は、既存サービスや商品をシニア層に適応させたいパターンです。後者は既存ユーザーの高齢化に対応していく文脈ですね。
シニア市場はニッチな市場の集積
──これからシニアに向けてビジネスを展開したいと考える企業への注意点はありますか?
私たちはシニア市場を「ニッチ市場の集積」だと考えています。シニアと一口に言っても世代も異なりますし、働き方や価値観の多様化は進んでいます。小さなインサイトを捉えながら事業を作っていくことが大切です。基本的には新規事業も既存事業もアプローチの手段に変わりはありません。
注意したいのは、自分のバイアスに気づくことです。企業のご担当者様は若い方が多いので、10年20年と年を重ねたときに何が起こるか?の具体的なイメージができず、年代や金銭的余裕、性別などのデモグラで大まかに括った企画をしてしまいがちです。
「シニア層の全員が健康になりたいと思っている」「人とつながりたいシニアが多いから、コミュニティサービスがサービス展開の入口になるのでは?」などと考えがちなケースが見られます。しかし、必ずしもシニア全員が健康への関心が高いわけではありませんし、コミュニティサービスについても、友人を作りたいからという理由で参加するケースは実は多くありません。このような思い込みをサービスに反映してしまうと、不適切なアプローチになってしまうリスクがあります。
──どのように対応していけばいいでしょうか?
まずは顧客の解像度を上げていくことが大切です。デプス調査をしているうちにシニアの肌感覚やインサイトがつかめてくることが多いです。他にも、サービスを展開しながらお客様にアジャストしていく方法もあります。弊社でもマーケティングやUI/UXの側面で様々なA/Bテストをしながらアドバイスしています。
売り方にも工夫が必要です。今後はEC・通販の比率が上がり、売り場がさらに多様化していきますから、定期的にSNSやメールで役に立つ情報を提供しながら訴求するなど、思い出していただくきっかけを作ることが大切です。
もちろん従来の紙媒体など、デジタル以外の媒体も駆使して体験を届ける必要もあるでしょう。スマホは普通に使っていても、視力が低下して文字を読むのは苦痛だから電話を選ぶケースもあります。シニアに商品やサービスを届けるために、企業は今後より柔軟に対応することが求められるでしょう。
