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MarkeZine Day 2024 Autumn

今後効果検証は「手法の組み合わせ」が必須に 今ある選択肢の長所短所を踏まえた「一番おいしい方法」は?

万能な1つの手法はない、だからこそ「組み合わせ」が必要

松本:そうした課題を踏まえて、マーケティングの効果検証にはどのような選択肢があるのか、またそれぞれどのような長所短所があるのか、教えていただけますか?

田中:先に結論から申し上げると、残念ながら効果測定のための「万能ツール」は存在しないと考えています。そこでご提案したいのが、すでにある手法をうまく組み合わせるということ。具体的には、3つの手法になると思います。

 1つ目は、冒頭でも少しお話しした「MMM」。2つ目は、コンバージョンリフトのような「実験的手法」。そして、3つ目は媒体の管理画面やGoogleアナリティクスなどを活用する「アトリビューション」です。これらはそれぞれに得意不得意があるため、長所をうまく活かしながら使うことが重要です。

 たとえば、MMMは媒体を横断して比較するのは得意ですが、分析に必要なデータを揃えて分析環境を準備するのに時間がかかってしまいます。また、コンバージョンリフトは、正確性は高いものの、これを計測できる媒体でしか実施できません。そしてアトリビューションは、クイックな判断をするのに適していますが、正確性が低いので投資や予算配分の判断などビジネス上の重要な判断を間違える可能性が高いです。

平尾:私も田中さんと同意見です。万能の分析手法はないので、組み合わせて使うことが重要だと思います。これを前提としながら、私は「CMM」という手法もみなさんにお伝えしたいです。

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 MMMがマーケティングにおける「量」の最適化だとすれば、その「質」を最適化する技法が「CMM(コンシューマー・ミックス・モデリング)」です。まとめると、分析手法を「量」と「質」に分け、MMM、CMM、実験的手法、アンケート調査、ABテストなどを適宜組み合わせていく効果検証の在り方が、今後主流になっていくと思います。

MMMと補完関係にある「CMM」とは?

松本:MMMとCMMについて、具体的にどんなことができるのか、解説いただけますか?

平尾:改めて、MMMとは「マーケティング・ミックス・モデリング」という手法の略称です。新聞、雑誌、テレビ、ラジオなどの広告から店頭販促まで、事業成果に影響を与える様々な要素をミックスしてモデルに入れ込み、その効果(貢献度)を要素別に見ることができます。

 現在、MMMの精度は非常に上がっています。たとえば、Webや店頭での購入をゴールとすると、人々がどのような経路でそこへ向かったか、カスタマージャーニーまで可視化できるようになっているんですよ。関連して、時系列の分析についても精度が高まっていますし、企業の重要な資産である「ブランド・エクイティ」も見られるようになっています。

 また、MMMのアウトプットでは、大きく2つのことがわかります。1つは、何が事業成果に影響を与えているのかというインパクト(貢献度合)。もう1つは、オンオフを統合した際の適切な予算配分です。一番成果が上がる予算配分はどれか、もしくは一番予算を抑えられる、効率の良い配分はどれなのか。MMMはこうした分析を得意としており、手法としてさらにメジャーになっていくと予想されます。

松本:続いて、CMMについて教えてください。MMMはある程度ご存知の方もいらっしゃるでしょうが、CMMは初めて知る方も多いかもしれません。

平尾:そうですよね。CMMは、MMMと補完関係にあるコンシューマー・ミックス・モデリングという分析手法です。簡単に言うと、アンケート調査にデータサイエンスを組み込んだような手法ですね。MMMのアウトプットは、適切な予算配分を見るだけで終わってしまいがちな面がありますが、CMMでは消費者個々人について見ることができます。

 つまり、どんなセグメントの方がそのブランドを選択しやすいのか、またそれらの方々に何を訴求すればブランド選択につながるのか、という部分までわかるのです。

 CMMとMMMは両方をかけ合わせて分析することもできます。CMMを用いて、消費者起点でブランド資産や狙うべき消費者属性を理解する。同時に、MMMで事業成果起点により、ファネルや商品属性を加味しながら4P(Product、Price、Place、Promotion)の配分について考える。これにより、消費者の心理や態度変容を捉えながら予算配分まで踏み切れるというわけです。私としては、この使い方が一番美味しい(効率がよい)のではないかと思っています。

松本:なるほど、手法がかなり進化していることがわかりますね。具体的にイメージできるような事例など何かありますか?

平尾:一例として、丸亀製麺さんでは事業成果の真ん中に「感動の創造」というCMM的世界観を置き、そのためにどんなキードライバーを上げるべきか、といったことを常に考えられています。また、その上でブランディングや店舗体験のすべてをモデル化し、毎月投資配分を変えたり、商品開発を進めたりされていますね。

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個別施策の効果を高めるために有用な手法は?

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この記事の著者

三ツ石 健太郎(ミツイシ ケンタロウ)

早稲田大学政治経済学部を2000年に卒業。印刷会社の営業、世界一周の放浪、編集プロダクション勤務などを経て、2015年よりフリーランスのライターに。マーケティング・広告・宣伝・販促の専門誌を中心に数多くの執筆をおこなう。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/10/18 08:30 https://markezine.jp/article/detail/47028

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