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成果につながるリサーチ

「それ意味ないですよ」も伝える。アサヒビールの消費者インサイト室長に聞く、リサーチ活用の極意

リサーチが必要ないも答えの一つ。始める前に「徹底的な目的理解」

━━リサーチのスタート部分について伺いたいのですが、カテゴリー部門や研究開発部門からはどのような形で相談が来るのでしょうか?

 「来年にかけて大型商品を考えたい」「こんな技術シーズがあるから何かに使いたい」「季節商品を出したい」など、様々なパターンがあります。各パターンの現段階、そして目指すべき目的に合わせ、調査の手法や組み合わせ、順番を変えたりしています。

 ただ、いずれにせよ大切な点は「どういう目的で何をしたいんですか」という前提を共有することです。そこを共有してからデータ・情報をそろえて議論していくことです。

 極論を言うと、調査をしないこともあるんです。実際、調査してもわからないこともありますし。たとえばアサヒビールには「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」や「未来のレモンサワー」というユニークな商品があります。これらはまったく新しいコンセプトから生まれた商品なので、コンセプト段階では誰も理解できなかったんです。こういうものは市場調査をしても実物を見て体験してみないと何かよくわからないものですし、調査結果として突出したスコアにならずに判断が難しい時も実はありました。

画像を説明するテキストなくても可
ふたを開栓するとレモンスライスが浮き上がってくるRTD『未来のレモンサワー』(リリースより)

 もちろん商品を出す以上、どれだけ売れそうなのか推計を出さなくてはいけません。ですが生ジョッキ缶のような体験型商品の場合、コンセプト段階の調査では信頼できるような点数化がしにくい。そのため、テストマーケティングで検証して評価するというパターンもあります。

━━なるほど、「リサーチをすること」は前提ではなく、場合によっては「リサーチを止める」「できない」というケースもあるんですね。

 もちろんです。無理にそこで調査しても、結局使われないと言うことも珍しくありません。無駄な時間とコストをかけるよりも、こちらから「あまり意味はないかもしれません」とアドバイスすることも大切だと思います。

事業のゴール・目的は全ステークホルダーで共有する

━━リサーチを有効活用できる企業であるために、消費者インサイト室はどのようなことを大切にしていますか?

 これまでお話ししてきたように、私たちは決裁者やブランドマネージャーに対して「データに基づく客観的な立ち位置で事実を述べる」という“善良な第三者”としての役割を求められています

 そのためには、まず大前提として「何を目指しているのか」と言うことを決裁者・ブランドマネージャー・消費者インサイト室で共有し、その目指すべきゴールの下、調査の目的・目標も同時に全員で共通認識を持っておくことが必要です。

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 もちろん、事業の目標やゴールは状況に応じて変わることもあるでしょう。ただし、「リサーチの結果が芳しくないから目標を変えてしまおう」といった判断の材料を用意するためにリサーチを提供しているのではありません。目標を達成するような開発にはどのような示唆が必要なのか、何から洗い出すべきかを一緒に考えたい。そこに柔軟に対応し、事業目標達成のために適切な判断を下せるデータや情報を用意することが私たちの役割です。

 正確な結果だけを伝えるのであれば、外部の調査会社の方でも十分です。社内にリサーチ機能を持つチームがあるのは、やりたい事業やビジネスを理解したうえで、客観的にアドバイスできる存在が必要だからです。

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他のチームや顧客の気持ちを捉えるための工夫

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/11/18 08:00 https://markezine.jp/article/detail/47314

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