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マーケターも知っておきたいAWS

AWSは情シスの領域だからマーケには無関係?データ分析環境について考える

「情シスはAWS、マーケはGoogle」が多い理由

 AWSは国内クラウドサービスシェアNo.1であり、多くの企業のシステム構築に利用されています。システム構築の視点から見るとシステムのインフラを統一することはルールを一元管理でき、セキュリティ面、コスト面、運用面で効率的です。よって、情報システム部門が重要なデータを取り扱うシステムを構築する場合、シェアが高いインフラを選択し利用することは、ディザスタリカバリや特定のクラウドベンダーに依存するリスクを除けば、理にかなっていると言えます。

 一方で、デジタルマーケティングの領域では、ウェブサイトのアクセス分析に、Google アナリティクスを採用する企業が多いという事実があります。ウェブを活用したビジネスが当たり前になっている今、ウェブサイトを分析し、データ分析することはビジネスを拡大させるために必須のタスクであり、これらのデータはマーケティングにおいて非常に重要です。そして、ウェブサイトの分析データを取り扱う場合には、こちらもインフラを統一するという意味で、Google Cloudを利用されている企業が多いのではないでしょうか。実際に機能面からも、Google アナリティクスはデータをエクスポートし分析する際に、Google CloudのサービスであるBigQueryを活用する必要があります。よって、どうしてもデジタルマーケティング領域では、多くの企業がウェブサイトの分析データ、広告関連データは、Google Cloud上で活用され、他のデータとは独立した状態で活用されていることが一般的かと思います。

環境は統一したほうがいい?

 マーケティング担当者は、日々マーケティングにおける新しいインサイトにたどり着き、成果を上げることが求められています。データ分析から小さくても良いので1つのインサイト、そして1つの改善を行い、少しでもアクセス数を拡大させ、クリック率を向上させ、顧客の満足度を高めるために努力を重ねられていると思います。今回ご紹介しているデータクリーンルームも、このマーケティングにおける新しいインサイトにたどり着くまでの1つの手段です。

 しかし、今ご説明したように、企業として重要なデータを保持する場合、どうしてもシステム部門が主導し、構築を進めることになります。そのため、運用、セキュリティガバナンスの観点から、たとえば、ECサイトや、会員サイトにおける顧客データベースを構築する場合は、AWSを利用したシステム構築が多くなり、ウェブ上の行動データ分析は、Google Cloudで分析するといった状況が多く見られます。

 マーケティングにおいてコールセンター、顧客の購買結果情報等のデータが格納された顧客データベースは、顧客一人一人の購買行動を可視化し、インサイトを得るための重要なデータです。また、その顧客が購買に至るまでのウェブサイトやモバイル等のデジタル環境上での行動を可視化し、顧客一人一人の行動、興味をさらに深掘りして可視化するためには、Googleアナリティクスに代表されるアクセス分析データが必要です。少なくともこの2つのデータは単体で分析するよりも統合したデータとして分析できる環境を準備することがマーケティング分析の精度を向上させるためには重要です。

 よって、2つのデータはどこかの場所、環境で分析できる仕組みを構築する必要があります。そもそも、前段でご紹介したように、データクリーンルームは企業が保有する顧客IDやデータを匿名化し、その他のデータと安全に共有・分析するための環境、仕組みです。データ分析プラットフォームの構築を安全にデータの保有を柔軟に行うために、情報システム部門とマーケティング部門が同一のインフラを使用することで、社内での様々なハードルを乗り越えやすくします。

情シスが分析環境にAWSを選びたがる理由

 安全にシステムを構築したい情報システム部門としては、前述したクラウドのシェアや、セキュリティの観点や構築の実績等の理由により、多くの場合はAWS上での分析環境の構築を選ぶことが多いです。さらに、顧客データをAWS上に持つ企業には最大のメリットがあります。

 顧客データベースは非常に強固なセキュリティレベルを求められます。また、同じくセキュリティの観点から他のシステムとデータを連携させる際にも慎重な判断が必要です。情報漏洩の観点からは、データを安易に複製できないように構築されていることも多くあります。よって、できる限り顧客データベースは構築後、安全に運用する必要があります。

 安全に運用できるように既に構築した顧客データベースのデータを、分析のためにどこか違った環境に移動させることなく、AWSクラウド上に、その他のクロス分析対象のサードパーティデータや、広告データを格納できるとしたらどうでしょうか。極端に言えば、クラウド上で、クリック1つでデータを安全にかつリアルタイムに掛け合わせ分析し、インサイトへ到達することが可能になります。これは、同じAWSというインフラ上で同じ思想で構築されたシステムだからできるメリットです。

 今回データクリーンルームを活用する意義については多くは触れておりませんが、まず、なぜマーケティングにAWSなのか、またデータクリーンルームの種類に関する理解を、マーケティング部門、情報システム部門に関わる背景からご紹介いたしました。

 次回は、アマゾンウェブサービス社で「AWS Clean Rooms」をご担当されている方に直接、「AWS Clean Rooms」の位置付けや、特徴などについて取材した記事を公開予定です。少しでもマーケティングご担当者の方々のお役に立てればと思います、ぜひご期待ください。

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この記事の著者

山田 輝明(ヤマダ テルアキ)

NRIネットコム株式会社 クラウドテクニカルセンター 副センター長 兼 営業DX推進担当

2009年にNRIネットコムに入社。デジタルマーケティング事業を立ち上げ、特にGoogleアナリティクス、デジタル広告に関するビジネス拡大に注力。2018年にNRIネットコムから一旦退出し、株式会社MeeCapを設立、スタートアッ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/11/26 08:00 https://markezine.jp/article/detail/47522

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