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「2024年はアドビが大きく動いた年」新代表・中井陽子氏が2030年に向けて見据える未来と現在地

 2024年4月、アドビ日本法人の代表取締役社長に中井陽子氏が就任した。中井氏は日本マイクロソフトで執行役員を務め、エンタープライズから公共、コンシューマー領域に至るまで幅広い分野で活躍し、CMOとしてMarketing Analytics部門の統括、さらにグローバル・日本市場両方を見てきたという豊富な経験を持つ。そんな中井氏がこのタイミングでアドビにジョインした理由は何か。また、アドビでどんなことをやっていきたいと考えているのか。「2024年はアドビも、私自身も大きく動き出した一年」と振り返る中井氏に、これまでの活動と次の5年を見据えて動き出しているアドビの今と未来についてうかがった。

日本マイクロソフトからアドビ日本法人の代表取締役社長へ

MarkeZine編集部(以下、MZ):2024年4月にアドビ日本法人の代表取締役社長に就任されたとのことで、改めておめでとうございます。

中井:ありがとうございます。

MZ:前職は日本マイクロソフトの執行役員を務めていらっしゃったと伺いました。アドビに入られるまでのキャリアを教えていただけますか。

中井:1997年に新卒採用でマイクロソフト(当時の社名)に入社して以来、アドビに来るまでの27年間をそこで過ごしました。振り返ってみると、様々な分野を経験してきたと思います。バックグラウンドでいえば、マーケティングとセールスが半々になります。主に担当していたのは日本市場ですが、3年半は米国本社に在籍してグローバル視点から日本市場を見るという経験もしました。

アドビ株式会社 代表取締役社長 中井陽子氏
アドビ株式会社 代表取締役社長 中井陽子氏
早稲田大学卒、豪州Bond University MBA修士課程修了。1997年日本マイクロソフト株式会社入社。コンシューマ営業本部、Windows製品部プロダクト戦略部門を経て、米国マイクロソフトコーポレーション勤務。2012年帰国後、日本マイクロソフトにて、デベロッパー・エクスペリエンスグループにてエンタープライズソリューション営業リード、CMOにてMarketing Analytics部門の統括、Windows &Office カテゴリー戦略グループ業務執行役員、2018年よりパブリックセクター事業本部にて公共・教育部門統括の執行役員。在籍中に県CIO補佐官を兼務し、全国自治体のDX推進に貢献。 休日は大学生の長女とドキュメンタリー鑑賞・読書・ヨガなど楽しむ。

中井:私は元々プロダクトマーケティングに興味があり、入社してからはずっと「プロダクトマーケティングをやらせてください」と希望を出していたのです。ですが「最初は営業で経験を積んでほしい」と言われ、まずは営業職で過ごした後、ようやく念願かなってWindowsのプロダクトマーケティングを担当することになりました。法人担当ということで、ハードウェアメーカーからトップエンタープライズのお客様、SMB市場など全部を見ていました。

 その後本社に行く機会があり、グローバル担当で世界中の市場を担当した後、日本に帰国し、CMOに就任しました。当時はちょうどデジタルマーケティングへの転換を図っていた時期で、お客様をイベントに招待するだけでなく、参加後のお客様のジャーニーをしっかり捉えていくCRMの導入を進め、一方ではプライバシーに配慮した顧客情報の活用という課題にも取り組みました。

 その後、コンシューマー市場の担当ディレクターから役員となり、最後の6年は公共セクションの担当として教育部門や自治体のお客様に向け、クラウドソリューションを提案する業務に就いていました。最初は「クラウドって何?」という方が多かったのですが、コロナ禍を経てデジタル化が一気に加速したところ、最後の2年間に生成AIが登場したのです。「AIが人間の仕事を奪う」という論調が激しかった時でしたが、「AIはきちんとしたガバナンスの下で正しく活用すれば、むしろ効率性を上げてより良い仕事ができるようになる」とお客様に訴求したのがマイクロソフトでの最後の仕事になります。

テクノロジーの力で日本市場に貢献したい

MZ:非常に幅広い分野でご活躍されてきましたが、このタイミングでアドビに移られた理由を教えてください。

中井:1つには、マイクロソフトでやりきったという思いがあったことです。気づけば30年近くずっと同じ会社に勤めてきて、「一巡したな」という感覚がありました。

 そこで「次はどういうところで自分が働きたいか」を考えたところ、まず「日本市場であること」という条件が私にとってとても大きかったのです。もちろん米国に出たり、発展著しいシンガポールで働いたりという選択肢もあるでしょう。ですが私は日本人として生まれたこの市場で、「テクノロジーを活用してさらに日本市場が良くなっていくようにしたい」という思いがありました。そこで日本の市場に限定し、次のテクノロジーを届けられる企業はどこにあるか探し始めた時、アドビの方に声をかけていただいたんです。

 「Adobe Photoshop」や「Adobe Illustrator」などのクリエイティブツールのことはもちろん以前から知っていました。そしてアドビもマイクロソフトと同じく、古くから日本市場でビジネスを展開し、違う分野ではありますが長く日本に根付いた製品を提供しています。アドビからマイクロフトに転職した方、もちろんマイクロソフトからアドビに行った方なども知り合いにいましたし、アドビのことを「いつも隣にいる存在」と感じていました。

 話を聞いてみると、アドビはクリエイティブ製品だけでなく、そこを起点に「デジタル体験」という切り口でポートフォリオを広げながらも、コアであるクリエイティビティをとても大切にして、「世界中のあらゆる人々が創造性を開花できる未来」を目指しています。その「Creativity for All(すべての人に「つくる力」を)」というビジョンにとても共感しました。

 その一方で、アドビの社員の方々の考え方やコミュニケーションはとても物腰が柔らかくて穏やかで、話した時に「素敵な会社だな」という印象がありました。テクノロジーや目指す未来は先進的ですが、人の話を聞く姿勢や語る言葉は落ち着いていて尖っていない。いい意味で、IT企業らしさがないところに好感を持ちました。

 そして「今後は生成AIを一層活用し、これまでにないデジタル体験やクリエイティビティ体験を提供していく」という方向性を聞いてアドビのポテンシャルを感じ、「アドビで日本市場を盛り上げていきたい」と強く思ったのです。

MZ:どのような点にポテンシャルを感じられたのでしょうか。

中井:マイクロソフトでの最後の2年間に生成AIが登場したことで、様々なお客様がその可能性の大きさと懸念点をお話しされていました。ただ私自身は、AIは人間の限界を補うもので、上手に活用すればもっと人間の力を発揮できるものだと捉えています。それが表れているのがアドビの理念である「Creativity for All」です。

 正確性を求められる作業や、指示どおりのものを作っていく作業はAIの得意分野です。その一歩先に、人間が持っている創造性やアイデアを加えることで、より心の琴線に触れるものが生まれるのではないでしょうか。そんなAIと人間の可能性を開花させるべく、アドビは今まさに様々なツールを進化させています。このタイミングでアドビにジョインできたことは私にとっても喜びです。

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

福島 芽生(編集部)(フクシマ メイ)

1993年生まれ。早稲田大学文学部を卒業後、書籍編集を経て翔泳社・MarkeZine編集部へ。Web記事に加え、定期購読誌『MarkeZine』の企画・制作、イベント『MarkeZine Day』の企...

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MarkeZine(マーケジン)
2024/12/11 09:30 https://markezine.jp/article/detail/47558

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