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激変するデジタルマーケティングに対応する、インハウス化の心得

AI人材がインハウスでも重宝される時代に?デジタルマーケティングのインハウス化の未来

インハウス化拡大の潮流に対し、広告主・支援会社が取り組むべきこととは?

 今後もデジタルマーケティングを取り巻く環境はますます混沌とする中で、インハウス化の潮流もいっそう高まっていくと考えられます。これからの変化に対応できるよう、広告主およびマーケティング部門、広告代理店・外部パートナーの各々が意識し、取り組むべきことをお話しします。

広告主:マーケ部門が全社DXの中枢となり、強いチームをつくる

 広告主とそのマーケティング部門については、経営層や他部門を巻き込み、全社DXの中枢としてディレクションを推進すること、そしてより変化に強いチームづくりをすることの2つが求められるでしょう。

 今後、デジタルマーケティングに活用できるサードパーティーCookieが大幅に減少すると、インターネット広告の効果が全体的にやや下がり、広告主の売上にも影響し得ることが考えられます。

 ターゲティングや効果測定をはじめ、できなくなることが各段に増大する中で、広告主自身がサードパーティーCookie規制によって売上・利益がどれくらい低下する可能性があるのかを試算して予測し、代替策を練ることが大事になってきます。

 この使える・使えないCookieが混在するハイブリッドCookie時代において、主力の代替策と言われているのがファーストパーティーデータの活用です。しかし、ファーストパーティーデータは非常に貴重な顧客データであることから厳密な許諾を得る必要が発生しますし、本当にそれらのデータを外部利用してよいのかを決める際は広告主のマーケティング部門だけでは完結せず、経営判断を仰ぐために上層部を巻き込まなくてはならないでしょう。

 加えて、ファーストパーティーデータを活用する際のWeb上のシステム変更や許諾システムの導入には情報システム部門の協力が、顧客のデータ利用の許諾に関しては法務部門の協力が不可欠です。

 このように、環境変化に対応できるデジタルマーケティングを推進するためには、広告主の社内の他部門も巻き込んでいく必要があります。

 私たちは、デジタルマーケティングとは言わば全社DXだと考えています。その中核に位置付けられるのがマーケティング部門の責任者であり、全体を俯瞰するディレクションがこれからますます求められると思います。実際に、マーケティングが企業やビジネスの中核にあることに気が付いている広告主はインハウス志向が強く、経営層のコミットメントやサポートも手厚い傾向にあります。

 さらに、変化に強い耐性があるチームをつくり、先を見据えて対応策を準備していくことも重要です。優れた人材を登用したり、積極的に新しい情報を取り込んだりすることはもちろん、適切な目標設定のもとで新しい施策やツールを試してみて、評価して、また試すというサイクルを地道に繰り返し、結果を残せる強いチームをいかに構築していくかを考え抜くことが必要になってくるでしょう。

 あわせて、本連載でもハイブリッドCookie時代の望ましい運用方法として「積立型」に移行することを取り上げましたが、非効率な広告投資から脱却して獲得型広告と認知広告の予算を最適に振り分け、中長期的なブランド認知や顧客ロイヤリティの強化につなげられるような戦略設計を主導することも、広告主にとって忘れてはならない大切な視点です。

広告代理店・外部パートナー:全体戦略支援、柔軟な対応、最新情報の共有が必要に

 広告代理店・外部パートナーに関しては、より上流にあるマーケティングの全体統合戦略そのものに対してアドバイスできる立場になっていくこと、広告主が直面する変化に柔軟に対応できる可変型サービスを提供すること、そして最新情報を常に入手しきちんと共有することの3つが求められると考えています。

 従来、広告代理店や外部パートナーがメインで担っていた広告運用については、AIの発達で既に一定レベルまでは自動化が進んでおり、今後もその傾向は強まっていくでしょう。だからこそ、広告主のマーケティングを包括的に見て支援できるように知識や経験を深め、技術力を磨き、より上流のマーケティングの全体統合戦略そのものに対して相談を受けられる立場になっていくことが必要です。

 また、中身の透明性がともなったSLA(Service Level Agreement)を明示して、適切な目標設定へのアドバイスをしたり、広告主が直面する様々な変化に対してサービスを最適に可変させたりしていく柔軟性を持つことも重要だと思います。

 加えて、最新情報を常に入手し、広告主がきちんと理解して活用できるような共有を心掛けることも大切です。キャッチアップし続けることが困難な最新の情報やツール、テクノロジーを広告主に出し惜しみなく共有し、戦略から施策まで一緒に考える関係性を築いていくことが求められるでしょう。

 以上、全3回にわたってハイブリッドCookie時代のインハウス化について解説してきました。

 デジタルマーケティングが高度に複雑化している中で、私たちも「マーケティングの民主化」を掲げるノバセルとの業務提携を通じて、より一層広告主の悩みと向き合い、「積立型」のデジタルマーケティング運用への移行支援に注力していきます。そして、新たなサービス・プロダクトの開発やソリューションの提供はもちろんのこと、インハウス化に重要な「データの民主化」の実現にも努めていけたらと思っています。

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この記事の著者

杉原 剛(スギハラ ゴウ)

アタラ株式会社 代表取締役CEO
ノバセル株式会社 エグゼクティブディレクター

KDDI、インテルを経て、オーバーチュア(現Yahoo!検索広告)、Google日本法人で広告営業戦略を担当。2009年にマーケティングのコンサルティングサービスやツールを提供するアタラを創業。プラットフォーム広告、リテールメディアなどの最新情報を発信する、日本では数少ないプラットフォームビジネスアナリストでもある。「プラットフォームの思考回路」チャンネ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

石永 孝士(イシナガ タカシ)

アタラ株式会社 マネージングディレクター/シニアコンサルタント
ノバセル株式会社 エグゼクティブディレクター

 大学卒業後、大手アウトソーシングビジネス企業に入社。米国シアトルにてシステムエンジニアとしてCRMシステムの開発に携わる。帰国後は外資系メーカー、オプト、ヤフー、楽天にて主にECや広告事業に関するマーケティ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/02/03 09:00 https://markezine.jp/article/detail/47934

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