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有園が訊く!

「常に危機感をもっている」NASDAQ上場のTNLメディアジーン・今田氏に聞く、メディアの責務と展望

メディアは人の人生を変える力を持つ

有園:今田さんにとって、メディアとはどういうものでしょうか。

今田:私は、メディアで人生が変わったと思っています。高校生の頃、「自分の居場所がない」と感じていました。しかし、好きな雑誌を読んでいると、いろいろな人が多様な価値観で好きなことを発信しているのがわかる。「いろいろな人がいるんだから、自分も好きなように生きればいいんだ」と救われる思いでした。それが原体験です。

 今も「メディアは人の人生を変えるものでなくてはならない」という話をよくしています。それは「メディアには大きな責任があることを意識しなければならない」という意味です。ネットメディアは参入障壁が低いからこそ、「誰でもできる」ことではない何かをする必要があると考えています。

有園:「誰でもできる」という意味では、最近は生成AIに作らせた低品質のページに広告を大量に掲載する、MFA(Made-for-Advertising)という悪質な手法も広がっています。人間が作ったかどうかわからないようなコンテンツも出てきている中で、AIには負の側面もあり、経営にもインパクトがあると思います。どのように見ていますか。

今田:AIを使ってタスクをこなせるのは良いことだと思いますが、AIだけでおもしろいコンテンツを作るのはまだまだ遠いですよね。リアルの取材やインタビュー、いろいろな人に話を聞いて事実を導き出すことなど、人間にしかできないことに労力を使う工夫が求められていると思います。

 コピペの記事や低品質なコンテンツは以前からずっとありました。様々なコンテンツが大量にある中で、多くの人に読まれるものはわずかです。そういうものを生み出すメディアをどう作るかを常に考えなければなりません。

 また、MFAのようなサイトに広告を出すかどうかは、広告主も含めてもっと考えるべきではないでしょうか。ブランドの信頼をどう構築していくか。それを広告主もメディアも代理店も一緒になって考えないと、近い将来、ビジネスがみんな立ち行かなくなるのではないかと思います。

有園:プラットフォーマー側にも大きな責任がありますね。

今田:業界全体の問題ですね。メディアだけが困っているのではありません。メディアがきちんとコンテンツを提供できなくなると、社会全体への影響も大きいです。

メディアを活用したビジネスを模索

有園:メディアの収益モデルは、サブスクリプションと広告が2本柱ですが、他にも出てきています。新しい収益モデルにはどんなものがあって、どこにチャンスがあると考えていますか。

今田:当社はコンテンツコマースに力を入れています。ブランドの潜在顧客にアプローチするため、ブランディングとパフォーマンス向上を組み合わせた「ブランドフォーマンス」という取り組みを重視しています。ユーザーが「モノを買う」までの動機付けをすることが大きな役割です。

 また、共通の興味・関心を持つ人たちに情報を提供するコミュニティを作り、そこにアプローチしたい企業と一緒にコミュニティを大きくしていく取り組みも始めています。小さいですが、深度が高い取り組みです。加えて、昔から続けている事業として、企業のコンテンツマーケティング支援もあります。

 基本的には、メディアのブランドを活用して、どのようなビジネスが成立するのかを考えながらトライしています。“点”として取り組んでいることが“面”でつながることで、価値提供できるようにしたいですね。まだまだ、いろいろなことができると考えています。

有園:「メディアは人の人生を変えるものでなくてはならない」というお話がありました。私もメディアに救われたと思っている一人なので、本当にその通りだと思います。本日はありがとうございました。

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この記事の著者

有園 雄一(アリゾノ ユウイチ)

Regional Vice President, Microsoft Advertising Japan

早稲田大学政治経済学部卒。1995年、学部生時代に執筆した「貨幣の複数性」(卒業論文)が「現代思想」(青土社 1995年9月 貨幣とナショナリズム<特集>)で出版される。2004年、日本初のマス連動施策を考案。オーバーチュア株式会...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

加納 由希絵(カノウ ユキエ)

フリーランスのライター、校正者。

地方紙の経済記者、ビジネス系ニュースサイトの記者・編集者を経て独立。主な領域はビジネス系。特に関心があるのは地域ビジネス、まちづくりなど。著書に『奇跡は段ボールの中に ~岐阜・柳ケ瀬で生まれたゆるキャラ「やなな」の物語~』(中部経済新聞社×ZENSHIN)がある。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2025/03/04 08:00 https://markezine.jp/article/detail/47943

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