外部とのデータ連携を前提にシステム面と規約面を準備
――ここからは、システム面についてもうかがいたいと思います。たるポはAWSを採用されていますが、その理由は何でしょうか?
野坂:当初から外部とデータを連携するビジネス展開を想定していたので、クラウドのプラットフォームであることが前提でした。ベンダーのフューチャーアーキテクトさんに各社の強みを調査していただいた上で、我々がやりたいことの実現性を考えると、AWSが圧倒的に優位でした。あまり悩まずに決められましたね。
やりたいことは、たとえば「1週間後からキャンペーンをしたい」といったリクエストにも柔軟に対応することです。準備期間が短くとも外部連携がしやすく、安全性が担保できるシステムが実現できるものは何か?を考えました。また、以前のシステムではサイロ化が起きていたので同じことが起きないことも重視しました。
導入後は従来のオンプレミス型の会員基盤と比較してコスト面がかなり抑えられています。また、地方においても企業がAWSを利用しているケースが多く、同じプラットフォームを使用している点も非常に大きいと感じます。連携の可能性を話す際も、両者がある程度共通の知識を持っているのでスムーズです。
――データ活用の観点ではいかがですか?
明知:データ量がどんどん増えています。記事の閲覧やサイトの訪問頻度など媒体利用データに加え、ポイント利用やイベント参加といった行動データなどですね。これらのユーザーデータを集約して一元的に分析できる点も大きいです。
また、自社のデータだけだと改善策が浮かばない、どこに潜在ユーザーがいるかわからないという企業様も、たるポのデータを活用いただくことで状況を変えられると考えています。AWS Clean Roomsを用いると、複数企業間でセキュアにデータ活用が可能になります。既にクリーンルームの環境も整ったので、連携先の企業様の環境が整えばすぐに対応が可能です。

――実際に外部連携は進んでいますか?
石井:興味を持っていただけていますが、各社の既存の規約などがハードルになっている状況です。たるポは様々な企業とデータを活用していくことを前提としているので、規約も他社とのデータ連携を可能とする内容になっています。しかし、以前からデータ活用をしている企業の場合は、自社だけで利用する前提で厳しい設定をしている場合も多いです。規約の改定から検討する必要がある点が障壁ですね。
そこで当社は企業様にデータクリーンルームに関する情報を提供したり、自社で実証実験を進めて結果を共有したり、何かできることはないかを探っている状況です。
チームでプロジェクトを進める
――皆さんはマーケティングやビジネス推進をしながら、システムの設計まで関わっていらっしゃいますね。他社と比較して特殊だと感じます。
岡田:10年ほど前にメディア開発局や新規事業、DX推進を担当する社主兼専務取締役(2025年2月時点)の山本慶一朗が着任したことで、デジタル推進が強化されました。各局にデジタル担当が設置され、メディア開発局も少しずつですが人員も強化できています。デジタルはデジタル部門だけというふうに閉じない姿勢があります。
石井:一方でマーケティングの体系的な知識が組織内にあるかというと、正直ありません。調べながら取り組んでいます。だからこそ意識していることは、チームで進めることですね。開発ベンダーさんやAWSの担当の方も含めてチームとして入っていだき、できるだけ一体で開発を進めることを心がけています。コミュニケーションも盛んですし、仕事を預けっぱなしにせず、こちらができることは担当していますね。
