話題の拡散を狙ってプレスリリースを制作
無事に社内の協力を得られ、サクサクとした焼き立て食感に近い「パイの実史上最高のサクサク食感」といえる品質のパイ生地を実現できた。その結果、新商品を試食したヘビーユーザー層・ライトユーザー層、双方から高い評価を得られた。
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しかし、品質が変わっただけでは店頭で注目されずに終わってしまう。話題を拡散するためには、「いかにメディアに注目してもらうかが鍵」と久保田氏は語る。そのためにプレスリリースの内容にこだわったという。久保田氏は3つのポイントを押さえてリリースを作成した。
1つ目は新規性。「史上最高のサクサク食感」という、読み手が新しさを感じるポイントを入れた。2つ目は社会性。コロナ禍以降、食事と間食の境界が曖昧になっているという社会の流れの中で、パイの実もおやつとしてのみならず、食事の代替としても食べられている。そういった社会のニーズに応えられる可能性を訴求した。
最後の3つ目は、話題性。ブランド45周年という節目と、ユーザーの声からリニューアルを実施した点をアピールした。
さらに、パイの実の情緒価値である「絵本のような世界観」を活かし、絵本を出版。話題化と独自価値の先鋭化を狙った取り組みで、実際に全国の書店や図書館に並んでいる。
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リニューアル後の販売動向は、値上げの影響を受けつつも、前年比116%と好調だ。狙っていたメディアによる話題化も実現し、1本のプレスリリースからワイドショーや新聞、Web媒体といった様々なメディアに掲載された。
リニューアル戦略で重要な3つのポイント
今回のリニューアルを経て、パイの実=パイのお菓子という視点になったことで、マーケティング戦略の幅が拡大した。
たとえば、チョコレートを抜いた「シャカシャカパイのみセット」という限定商品を開発。消費者が自分で味付けパウダーを混ぜて食べるおつまみのような商品だ。これをオンライン限定で販売したところ、即日完売し一時サーバーがダウンするほどの人気だったという。
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さらに食事シーンへの展開も進んでおり、レストランとのコラボイベントも実施。「パイ」という特性を生かし、新しい領域への進出が加速している。
最後に久保田氏は、今回のパイの実リニューアルを通して得た学びを共有した。リニューアル戦略にあたって重要なポイントを、次のように3つにまとめて締め括った。
「1つは、顧客を見つめ、ブランドの本質的価値を定めること。2つ目に、社内を味方に変えることです。優秀なマーケターもそのアイデアを実行できなければ意味がありません。実現するためには社内の壁を突破する必要があります。3つ目に、発想を拡張させることも重要です。本質的価値さえ定まれば、その軸がぶれない限り戦略の幅は広がっていきます」(久保田氏)
