グローバルメディアだけを押さえてもダメ、日本市場が抱えるユニークな特徴
MarkeZine編集部(以下、MZ):グローバル企業が日本市場に進出する際に抱えている課題について教えてください。
Sherry:一番の課題は、「ロイヤルユーザーの醸成」だと考えています。グローバル企業が日本市場に新たに進出する際、市場からの認知度は当然ゼロです。ここから良い印象を築き、信頼を獲得しながらロイヤルユーザーへと育てていくことに苦戦している企業が多いですね。

Sherry:このように苦戦しているのには、二つの理由があると考えています。一つ目が「グローバル市場での成功体験」です。日本への進出を図るようなグローバル企業の場合、自国で一定以上の成功を収めていることがほとんどです。そのため日本の市場でも同じ戦略が通用すると過信して、日本以外の市場と同様の戦略でマーケティングに取り組み、結果的に失敗してしまうというのが要因として多く見られます。
二つ目が「日本市場の独自性」です。日本の消費者はディテールにこだわり、新しいものを受け入れる心理的ハードルが高いという特徴を有しています。このような文化的理由により、海外から進出してきた「見知らぬ商品・サービス」を愛用してもらうようになるのは容易ではありません。
また、「メディアの市場環境」も特徴的です。たとえば欧米諸国で情報発信を行いたいと思った際は、シェアが高いグローバルメディアを押さえておけば効果的な宣伝ができると言えるでしょう。しかし日本市場の場合、独自のローカルメディアが数多く存在しています。そのため、グローバルメディアのシェアが相対的に小さく、これらのみに依存してマーケティング戦略を展開してしまうと消費者全体へのリーチが制限されてしまう可能性が高くなります。
これらの事情から、「グローバル企業が日本市場に進出していく上では日本のローカルメディアとの連携が必須」と当社では考えました。その解決手段としてSmartNew Adsに着目し、積極的に活用することで、彼らの日本進出を支援しています。
媒体への信頼度の高さが広告への信頼につながる
MZ:複数のローカルメディアがある中で、日本市場への進出支援のために、SmartNews Adsを活用して始めた理由を教えていただけますか。
Sherry:先ほど言及したように、グローバル企業が日本に進出する際に、全ての日本ユーザーにリーチしたいなら、ローカルメディアの活用が必須です。また、まだ認知されていないサービスの広告が、信頼性の低い広告媒体で掲載されてしまった場合、消費者からの不信感を招いてしまい逆効果となりかねません。
SmartNews Adsは、多くの日本ユーザーから信頼を獲得しているニュースアプリ「SmartNews」に掲載される広告枠です。この広告プラットフォームへの信頼度の高さが、掲載する広告枠への信頼にもつながります。このような信頼されているニュースアプリの広告枠に出稿することで、対象企業・サービスに対するユーザーの信頼度を素早く上げられると考えたことが活用を開始したきっかけでした。
また、グローバル企業の場合、1円単位の投資に対しても具体的なリターンや効果を明確に示すことが求められます。そういった費用対効果の面でもSmartNews Adsは期待できる広告媒体でした。
MZ:改めてデジタルハーツクロスTokyoが活用されているSmartNews Adsのサービス概要を簡単にお聞かせください。
Xiaohe:SmartNews Adsには、運用型広告の「Standard Ads」と、予約型広告の「Premium Ads」「Top News Video Ads/Top News Display Ads」の2種類があります。

Xiaohe:Standard Adsは運用予算および目標に応じて広告配信が行えるメニューです。サイトへの誘導数やアプリインストール数の増加など、お客様のビジネスゴールに合わせて利用できます。一方、Premium Adsは、SmartNews上の様々なチャンネルにおけるファーストビューに広告配信ができるメニューです。商品・サービスの特徴を強く印象付けられるため、お客様のブランドへの認知・興味関心度向上が期待できます。
グローバル企業の広告主様は、日本国内の広告主様と比較してパフォーマンスを特に重要視されていることが多いので、計測しやすいStandard Adsを中心に運用される傾向にあります。とはいえ、日本市場参入の際には、ブランド価値の向上も重要な目標であることから、最近ではPremium Adsなどの予約型広告をご利用いただくケースも増えてきています。
約4ヵ月でCVRは341%にまで向上
MZ: SmartNews Adsを活用して実際にどのような効果が得られたのか教えてもらえますか。
Yvonne:我々がご支援するクライアント様はEC、ゲーム、金融業界の企業が多いので、今回はその中から事例を二つご紹介します。

Yvonne:一つ目の事例は、EC業界のクライアントです。クライアントが日本市場に進出した当初は、SmartNews Adsやユーザー特性への理解が十分ではありませんでした。ゆえに、広告素材が媒体に最適化されておらず、CTRやCVRが低迷していました。
そこで、スマートニュースのチームの皆様にも協力いただきながら、アドバイスをクライアントに対して実施。たとえば、SmartNewsはニュースアプリであるため、ユーザーはニュースの見出しのような広告コピーに馴染みがあることや、コピーの長さを30文字程度に抑えることなどの提案を行いました。クライアントがこれらの調整を実施した結果、約3~4ヵ月でCTRは102%、CVRは341%にまで向上し、ROASも期待値を大幅に上回らせることに成功しました。

二つ目の事例は、ゲーム分野のStarUnionによる事例です。同社が運営する、昆虫をテーマにしたシミュレーションゲーム「ザ・アンツ:アンダーグラウンド キングダム」は、日本市場への新規参入当初、世界で既に7,000万人のユーザーを抱えている人気タイトルでした。
同社に対して我々は、早期からSmartNews Adsを活用いただくように提案。いち早く日本のユーザーと世界中のユーザーが「一緒に遊べる」状態になることを目指しました。その結果、リリース当初からSmartNews Ads上でターゲットユーザーにリーチしたことで、「ブランド認知の大幅な拡大」に成功。同アプリの市場におけるプレゼンスを高めることができました。
これら二つの事例では共通して、媒体に合わせた広告タイトルの書き方や広告枠に収まる文字数など、「SmartNewsの媒体特性に合わせた広告制作」のアドバイスを行いました。また、この2社の事例も含め多くのグローバル企業では、「フォントの選択や文字の配置、デザインの細部などにこだわったクリエイティブの作成が重要であると理解はしているものの改善方法がわからない」といった事例が非常に多いです。そのようなクライアント企業に対して、スマートニュース様のチームと一緒に、改善の提案なども実施しました。
パートナー企業と同じ視点でグローバル企業を支援
MZ:スマートニュースがグローバル企業からのニーズに適切に応えるために意識していることがあれば教えてください。
Bi:当社では、パートナー企業様とともに広告主様とのMTGに参加したりご提案を行ったりなど、積極的にご支援に携わっています。こうすることで、パートナー企業様たちと同じ目的意識をもって広告主様の支援が行えるようになるんです。そして、それを可能にしている一番の理由は「グローバルで対応可能なチーム体制を整えていること」ですね。

Bi:私が管轄するAPAC Ad Businessチームに所属しているのは、基本的に日本と海外それぞれのデジタルマーケティングに関わったメンバーのみです。そのため、我々は架け橋として、それぞれの市場特性を深く理解した上で、社内チームとともに弊社広告プロダクトを強化しながら、広告主に対してより適切なご提案が行えています。
Sherry:Biさんがおっしゃるようにスマートニュース様では、グローバル企業様のニーズを的確に理解し、日本市場の特性を踏まえた効果的な提案をしてくださいます。また、海外メディアの最新的な技術トレンドにも注目し、広告技術の面でもグローバル基準に合わせた対応を進めていただけています。
スマートニュース様は戦略面でも海外顧客をとても重視し、グローバル企業向けにバイリンガル、ないしトリリンガルの専門チームを設置しています。このようなチームだからこそ、日本と海外の双方からの視点を理解した対応が実現できるのだと思います。
また、タイムリーな最適化提案も非常に心強いです。グローバル企業は日本企業と比べて先述の通りにパフォーマンスに厳しいのはもちろんですが、広告データのリアルタイム更新や自動化などタイムリーなフィードバックをとても重視しています。フィードバックに基づいて広告予算を随時調整する傾向があります。そのため、多くのクライアントがAPIによる自社システムとの連携を必要とされています。
そういったニーズに対して、スマートニュース様のチームでは顧客のデータ状況を常にモニタリングし、リアルタイムで最適化提案を提供してくださる上に、技術チームとの連携によってAPI対応も実現してくれています。このように、我々と同じ視点で“クライアント企業の期待に応える運用支援”を行ってくれています。
新市場への進出時に意識すべき三つのポイント
MZ:グローバル企業が日本市場のニーズを正しく捉え、効果的な広告配信を行っていくために意識すべきことがあれば教えてください。
Sherry:私たちが最も重要だと考えるのは、「ターゲットユーザープロフィール」と「媒体が抱えるユーザー特性」に対する理解です。たとえば、SmartNewsのユーザー特性は、一定の購買力をもち、生活の質を重視する傾向にあります。これらの特性をもつユーザーに対して、広告の訴求内容があまりにも奇抜や過大なものだと、広告を掲出してもあまり効果は見込めないでしょう。

Sherry:このように、クライアント自身の商品特性に応じて、媒体が抱えるコアユーザーの特性との接点を見つけることが広告効果を最大化する上では重要であると言えます。
そして二つ目は、「市場特有の性質を考慮した長期的な視点をもつこと」です。先述の通り、日本の消費者は新しいものへの心理的ハードルが比較的高いです。こういった市場では、クリック率などの短期的な指標のみに着目することは得策とは言えないでしょう。ブランディング施策などを組み込みながら、長期的な視点での総合的な広告プランニングを行うことが日本市場で成功していくためには重要だと思いますね。
Bi:Sherryさんのお話に加えて、広告主様自身が日本市場における「自社プロダクトの価値」を見直すことも大切だと考えています。日本は非常にユニークな市場です。だからこそ、グローバル市場でうまく機能しているプロダクトの価値をそのまま訴求するのではなく、日本の消費者がもつ価値観や行動様式を深く理解。その上で、プロダクトがもつ価値を日本向けに再定義していくことで、より大きな成果につながるのではないでしょうか。
米国での展開にも注力!グローバルでの支援強化を目指す
MZ:今後、グローバル企業の広告主を支援するにあたっての展望を教えてください。
Sherry:広告効果の追求には上限がありません。現状、クライアントからの満足度が高いからこそ、スマートニュース様とともにさらなる広告効果向上を目指して改善を行っていきたいです。
また、スマートニュース様は、現在米国での展開にも注力しているので、こちらでの連携も強化したいですね。そうした連携を通じて、当社としてもこれまで以上に包括的なグローバルマーケティングソリューションを提供していこうと思います。
Yvonne:現在のSmartNews Adsの広告遷移先は、基本的にWebサイトであることがほとんどです。しかし、近年、海外クライアントのニーズは「アプリへの誘導」が中心となってきています。そのため今後は、アプリへの遷移やデータ連携、パフォーマンス計測などアプリ広告特有の要件に対応する機能の強化を進めていただきたいです。
MZ:日本市場の進出を考える広告主およびそれを支援する代理店に対して、スマートニュースとしてどのような価値を提供していきたいとお考えか教えてください。
Xiaohe:現場レベルでは、現在SmartNews Adsをご利用いただいている割合の高い、ゲームやEC分野のクライアント企業様に加えて、新たな分野への展開も視野に入れて活用を支援していきたいと思います。
その上で、「グローバル市場と日本市場の双方を深く理解できる」という当チームの強みを今後も最大限に活かしていく予定です。日本の現場で得られた知見や成功事例を、グローバル市場の担当者に共有することで、より多くの広告主様への支援拡大を目指していきたいと思います。
Bi:今後もパートナー企業様とともに、日本市場への進出を目指すグローバル企業の広告主様が、マーケティング効果を発揮できるよう支援していきたいと考えています。そのためにもさらに自社の広告プロダクト能力を磨き、スマートニュースらしい新しい広告手法を開発し続けたいですね。