テレビCMは、今も効果があるのか?
テレビCMを効率的に活用するのが難しい背景として、広告主と広告代理店のスタンスの違いが挙げられる。広告主は広告効果を最大化し、マーケティング予算が売上にどれだけ寄与したのか、ビジネスとの相関関係を重視する。一方、広告代理店は手数料を得るビジネスのため、広告費が大きいクライアントに手厚くなり、テレビCMや複数プランなど予算が大きくなるものを提案しがちだ。

「このスタンスの違いが、ムダをうむ一因であると思っています。事業のことは、広告主以上にわかっている人はいないので、マーケティングでも自社でノウハウを持つことが重要です。広告代理店にどういう問いを立てられるかが、ムダを最小限にするための鍵となります」(綿川氏)
ノバセルがテレビ出稿企業の担当者に実施したアンケートによると、フジテレビ問題をきっかけにテレビCM出稿を見直した企業は7割以上。さらに過半数が、1年以内にテレビCM予算の削減・撤退を検討している。

「フジテレビ問題はあくまできっかけで、以前から持っていた『テレビCMは費用対効果がわかりにくい』『年々リーチ力が低下している』という思いが、表面化してきたのだと思います」(綿川氏)
実際テレビの視聴率は2020年から2024年の間に30%以上落ち、テレビを所有していない世帯は15%にものぼる。しかし、テレビのスポットCMの売上は増加傾向で単価は上昇中だ。それでもアンケートでは、テレビCMは有用だと考える企業が6割以上となり、期待値は依然として高い。

実際にラクスルの実績では、リーチのインプレッション単価はテレビが一番安くなっている。
「ラクスルは効率化できているので一般的な単価より安くなっていますが、媒体ごとの比率は他の企業でもおおよそ同様です。つまり、テレビCMの価値自体は現在でも非常に高いのです」(綿川氏)
効率的なテレビCMのバイイング方法
テレビCMのプランニングの流れは、広告主がエリアや投下量、テレビ局ごとの配分を決定。その後、広告代理店からどの番組で放映されるかを記した線引きという表が提示され、広告主から変更の希望があれば改案して反映する流れになっている。この中で広告主が重視すべき点が、局配分だ。

「広告主とテレビ局の間には広告代理店が入るのが通例で、各社の中でも複数の担当者を通すので、広告主の出稿意図はなかなか伝わりません。こうした状況でも、広告主が重視する指標をわかりやすく提示し、貢献した局は次から配分を上げると伝えると、放送局はそのために努力してくれます。指標の高くなった局のシェアを上げる仕組みをつくることで、より効果の高い枠で出稿しやすくなります」(綿川氏)
広告主側で重視する指標と相性のよい番組がわかっていれば、最初から「こういう枠を取ってほしい」と依頼できて話が早い。さらに期日に余裕を持って発注することで、やり取りをする時間も確保できる。
ノバセルでは、テレビCMのバイイングをシミュレートし、自動化できるツール「ノバセルメディアプランナー」を提供している。これを利用すれば、あらかじめ効果の高い枠を指定し、早めに依頼を出せる。

また、改案は期間が短いこともあり、広告代理店や放送局にとって調整が大変で、あまり受けたくないものだ。もし改案をしたい場合は、ぼんやりとした指示ではなく、ピンポイントに番組を指定し、反映してもらいやすくすることも大切だ。