最大の受け手は従業員
──コーポレートコミュニケーションの活動を社内に理解してもらうために、どのようなアプローチをとられていますか?
3つの視点を持って取り組んでいます。第1に、社外向けコミュニケーションの最大の受け手は実は社内の従業員であるという点です。たとえば未来ビジョンや社会課題解決といった長期的テーマは、製品訴求が中心となる事業部のマーケティング活動では扱いにくく、コーポレートコミュニケーション部門だからこそ発信できる領域です。このため社内広報と連携し、対外発信内容を社内にも同時展開することを意識して取り組んでいます。
第2に、すべてのコミュニケーションコンテンツは事業部門の協力なしには作れないということを理解することです。特に研究開発部門など日々多忙な部署の協力を得るためには、「何のためにこのコミュニケーションを行うのか」「どのように事業に貢献するのか」という目的を明確に説明することが不可欠でしょう。ブランドコミュニケーションがクボタにとって重要である理由を事業部門に理解してもらうことが、持続的な協力体制構築の鍵となっています。
第3に、長期的な視点を持てる機会を創り出すことです。大阪・関西万博を機運として全国で実施している出前授業では、10代の若者たちと2100年の未来に向けて対話しています。このような取り組みを通じて「クボタで働く私たちは何のために仕事をしているのか」という本質的な問いを投げかけ、企業としての存在意義を考える機会を創出することが、コーポレートコミュニケーション部門の重要な役割だと考えています。
──規模の大きい御社が、一人ひとりの社員にビジョンを共有するために行っていることはありますか?
“命を支えるプラットフォーマー”という目指す姿や「クボタスマートビレッジ構想」は、当初、社長のプレゼンテーションやメディア取材などを通じて、主にテキストやイラストで説明されてきました。しかし、そうした方法だけでは十分な理解を得ることが難しいとも感じます。これは社外のステークホルダーだけでなく、社内のメンバーにとっても同様の課題でした。各社員がクボタの全体像やソリューション、技術のすべてを把握しているわけではないため、具体的なイメージが湧きにくい状況があったと思います。
この課題を解決するためには、クリエイティブとコミュニケーションの力が必要だと考え、社長が頭の中で描いている「クボタが目指すトータルソリューション」を動画やWebコンテンツに変換することで、よりわかりやすく伝える取り組みを進めてきました。
言葉や数字だけでは心を動かすことは難しいのではないでしょうか。ビジョンや戦略を「見える化」し、心に響くものにするためのクリエイティブ力を提供すること。これもブランドコミュニケーション部門の重要な役割だと考え、意識的に取り組んでいます。
