概念的に捉えられがちな「ファン」をメソッド化
──ファングロース戦略はどのような業種・業態において特に有効でしょうか。
三橋:熱狂的なファンを創出しやすいのは、IP、ゲーム、エンタメ業界です。アパレルブランドや高級品、アルコール、自動車、嗜好品も同様ですね。また、保険、学習塾といった加入・継続型サービスも、顧客との持続的な関係を前提としてファンを生みやすい傾向にあります。その他、D2C、来店型サービス、BtoBサービス、経済圏を持つような企業グループにも幅広く有効です。

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──様々な企業での活用が期待できるのですね。しかし、ファンの創出や関係強化に再現性を持たせたり、効果測定を行ったりすることは可能なのでしょうか?
竹下:確かに概念に共感いただいたとしても、実際に我々の提案を採用いただくための説得材料は不足していたかもしれません。プランナーが説明しやすく、データサイエンティストが見ても妥当性があり、クライアント企業にとってはキャッチーでわかりやすい指標が求められていました。
そこで、具体的な裏付けとして、「グロースポイント(仮)」という独自指標を鋭意開発中です。ファンマーケティングの指針になるような段階的なステップを設定し、それを定量的な判断材料とします。現在は少しずつ実戦投入を始めている段階ですが、ファングロース戦略の概念と指標をセットにしてご提供できるよう、引き続き準備していきます。
多様なデータと生成AI技術で「武器」を磨く
──グロースポイント以外にも、ファングロース戦略を推進するソリューションや施策があれば教えてください。
竹下:データ収集や活用に関しては主に3つ、精力的に取り組んでいます。
1つ目は、ADKが持つ情報資産の活用度を高めるプロジェクト。ADKグループでは2008年から「ADK生活者総合調査」という大規模調査を毎年実施しており、1万名以上のオリジナルの生活者データを保有しています。このデータを生成AIと連携させ、ペルソナを自動生成できるツール「エモグラ」を開発しました。デモグラフィック特性にとどまらない、エモーショナルなペルソナを生成し、ファングロース戦略に役立てることが可能です。

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竹下:2つ目は、外部データの積極活用による情報武装。元々ADKグループはIP・ゲーム・エンタメ分野の独自データを豊富に持っています。しかしファングロース戦略は、加入・継続型サービス、来店型サービスなど、注力領域が多岐にわたるため、自社調査データだけでは不十分な場合もあります。不足するデータは外部パートナーから積極的に調達し、それぞれの注力領域に特化した「専用の武器」を磨いているところです。
3つ目は、ファンビジネスを得意とする企業とのアライアンス連携。企業間の知見を組み合わせることで、新たなフレームワークを考案するなど、ファングロースビジネスの価値を相乗効果で高めていけるよう、取り組みを推進しています。