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第114号(2025年6月 最終号)
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日本コカ・コーラの“カルチャー起点”コミュニケーション 注力する若年層向けSpotify活用とは

 若年層を「将来を担う重要な存在」とする、日本コカ・コーラ。2025年6月に開催されたスポティファイジャパン主催の招待制イベント「Spotify Sparks」では、日本コカ・コーラの池田哲也氏が「カルチャー起点の若年層コミュニケーション戦略」をテーマとしたセッションに登壇した。長期的なブランド成長における若年層の重要性、音楽やカルチャーを起点に、エンゲージメントをより効果的に形成する方法を解説。具体的な施策の事例として、Z世代とのコミュニケーションに今や欠かせない存在となっているSpotifyでのキャンペーンを共有した。

若年層へのアプローチは“継続的なブランド成長”に不可欠

 現代のマーケティング戦略において、若年層へのアプローチは単なる売り上げ向上に留まらない。日本コカ・コーラの池田氏は、若年層との関係構築がブランドへの愛着形成に直結し、継続的なブランド成長につながると語る。

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日本コカ・コーラ IMX メディアストラテジー&オペレーションズ シニアディレクター 池田哲也氏

 「時代を超えて愛されるブランドであり続けるためには、製品やマーケティング手法、コミュニケーション戦略などを包括的にアップデートし続けて、"継続的なブランド成長"を促すことが不可欠だと思います」(日本コカ・コーラ池田氏)

 具体的にどのようなアプローチをとっているのか。日本コカ・コーラが大切にしているのは「パッションポイント」、つまり生活者の気持ちが高まる瞬間を捉えることだと言う。若年層の場合、さらに彼らの興味のある最新のカルチャーやトレンドを理解する重要性が高まる。

 特に音楽の持つ力は見逃せない要素だ。音楽は聞き手の感情を揺さぶり、共通の体験を生み出すことで、ブランドと消費者の間に本物の絆を築く役割を果たす。日本コカ・コーラが様々なブランドでアーティストを起用したキャンペーンを展開している背景には、このような音楽の持つパワーを最大限に活用したいという考えがある。

Spotifyを若年層との接点として活用

 日本コカ・コーラが若年層との接点として活用しているのが「Spotify」だ。Z世代は「ストリーミング世代」であり、彼らにとってSpotifyは単なる音楽視聴ツールではなく、日常生活に深く根ざした存在だ。この特性を理解することで、ブランドは自然に彼らの日常に入り込むことができ、押し付けがましさを感じさせることなくブランドメッセージを届けられる

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セッションのスライド資料より

 さらに、特定のアーティストやジャンルに強い関心を持つファンダム層に対して、アプローチできるのもSpotifyの大きな特徴と言えるだろう。

 もちろん、若年層が日々接触するプラットフォームは複数にわたり、それぞれを理解し、活用することが求められている。Spotify以外のアプローチに関しては、池田氏は次のように答えた。

 「Z世代においては、TikTokやInstagramがカルチャーの“発火点”として重要です。特にTikTokでは音楽がバズを生み出す重要な役割を果たしており、短尺動画コンテンツが若年層の関心を引く要素になっています。

 日本コカ・コーラでは、従来のメディアプランニング手法から脱却し、現在採用しているのがオーディエンスプランニングというアプローチです。これは消費者を中心に据え、適切なターゲットに対して最適なタイミングとコンテキストで適切なメッセージを届ける手法です。特定のメディアにこだわりすぎず、パッション・モーメント・行動ベースのシグナルを活用したデータドリブンなプランニングが重要とされています」(日本コカ・コーラ池田氏)

  では、日本コカ・コーラが着目するSpotifyにZ世代が感じている価値とはどのようなものだろうか?

ネガからの解放、文化的なステータスにも。調査から見るSpotifyの価値

 SpotifyがZ世代にとって単なる音楽視聴ツールを超えた存在であることは、同社が毎年実施しているZ世代に関する調査「Culture Next」でも明らかになっている。セッションでは池田氏とともに登壇したスポティファイジャパン田村氏が調査を基に説明した。

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スポティファイジャパン 執行役員 営業本部長 田村千秋氏

 特に注目すべきは、日本のZ世代の74%が「Spotifyはドゥームスクローリングに対する究極の解毒剤だ」と考えているという結果である。「ドゥームスクローリング」とは、インターネット上でネガティブな情報を無意識に閲覧し続けてしまう現象を指すが、Spotifyがこのような問題からの解放手段として機能しているのだ。

 そして、SpotifyはZ世代にとって学習ツールにもなりつつある。日本のZ世代のうち42%がポッドキャストは他メディアよりも信頼できると回答していると言う。

 「私もよくポッドキャストを聴きますが、話し手との距離が近くよりリアルで、深く掘り下げられた情報や専門家の“本音”を聴いている感じがします」(スポティファイジャパン田村氏)

 さらに、日本のZ世代の30%が、テレビよりも、ポッドキャストを聴くことに、より高い文化的ステータスを感じていると言う。Spotifyでポッドキャストを聴くという行為自体がZ世代の中である種のステータスになっているとも言えるだろう。

 他にも、Z世代は音楽を「聴く」だけでなく、「見せる」「シェアする」世代であり、「仲の良い人とプレイリストを共有して通学時間で使っている」という調査内でのコメントからもわかる通り、音楽を通じたコミュニケーションツールとして活用されている面も見られる。

 このZ世代の特性に着目し構築されたのが、グローバルで展開されたコカ・コーラ×オレオによるキャンペーンだ。こちらでは、「Bestie Mode(ベスティーモード)」という体験型広告が活用された。

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セッションのスライド資料より(クリックすると拡大します)

 製品に付いているQRコードやSpotifyの広告に表示されるQRコードをスキャンして「Bestie Mode」を起動すると、「親友のカラオケの定番曲は?」や「親友が盛り上がる曲は?」といった親友の音楽的嗜好に関する質問が表示される。ユーザーがこれに答えていくと、その回答とユーザーのストリーミング履歴を基にパーソナライズされたプレイリストが完成。もちろん完成したプレイリストは親友と共有して楽しめる。Z世代特有の音楽を共有するカルチャーをいち早く取り込んだキャンペーンだった。

 本キャンペーンはアメリカを含め50カ国以上(日本は対象外)のマーケットで展開され、成功を収めたという。

 セッションでは、池田氏が日本におけるSpotifyを活用した具体的な施策も共有した。

「い・ろ・は・す」のブランドリニューアルキャンペーン 

 「い・ろ・は・す」のブランドリニューアルキャンペーンは、音声、動画、スポンサードプレイリストなど、Spotify上で利用可能なほぼ全ての広告メニューが戦略的に活用され、オーディエンスと親和性の高いクリエイティブを用いて展開された。新しい広告メニュー、1日予約型の「ホームページテイクオーバー」では、Spotifyのホーム画面にインパクトを持って広告を掲載できる。このメニューを用いて、藤井風さんの楽曲を使用したCMと連動させ、Spotifyユーザーが最初に目にする場所でブランドメッセージ「きっとあしたも、いい感じ」を効果的に訴求した。

 また、本キャンペーンではアーティスト別のプレイリスト「This is」シリーズにおける、藤井風さんの「This is 藤井風」にスポンサード。既存のプレイリスト体験の中に自然にブランド要素を組み込むことで、ファンにとって違和感のない形でメッセージを届けるようにした。

 「Z世代は押し付けがましい広告を嫌う傾向があります。そのため、親和性の高いクリエイティブを配信しつつ、適切な距離感を保ったメニューを選定しました。Spotifyでは音声、動画、プレイリストのタイアップやインタラクティブな体験を提供できるので、様々なメニューをうまく使いこなす事で効果的な場になると考えています」(日本コカ・コーラ池田氏)

ファンに刺さった嬉しいサプライズ。Z世代の行動特性とも高い親和性

 その他にも、日本での活用事例が紹介された。いずれもZ世代の特性を意識した設計だ。

「ジョージア」キャンペーンの没入型体験設計

 「ジョージア」のキャンペーンでは、Adoさんとコラボレーション。最大の特徴は、Adoさんの楽曲再生中に本人からのボイスメッセージが挿入されるという、サプライズ要素を含んだクリエイティブ設計にある。

 「最初に広告音源を聞いたとき、驚きました。Adoさんが広告で『Spotifyをお楽しみの皆さん!』と話しかけてくれていると。親和性の高い、普段J-POPやアニソンを聞いている方々向けに配信されているということもあり、オーディエンスをより強く惹きつけられていたようです。クリエイティブとメディア両面から取り組まれている、まさにオーディエンスプランニングの事例だと思いました」(スポティファイジャパン田村氏)

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 また、同キャンペーンはAdoさんのファンを中心にソーシャル上での反響も大きく、これにもSpotifyならではの聴取環境とZ世代の行動特性が影響しているのではないかと言う。

 「Spotifyはバックグラウンド再生ができるため、LINE以外のソーシャルメディアとの相性も良いと考えています。タイパを重視するZ世代は、音楽を聴きながらソーシャルメディアをチェックするといったマルチタスクを行う傾向があるためです」(日本コカ・コーラ池田氏)

「綾鷹カフェ」における時間軸戦略

 「綾鷹カフェ」のキャンペーンでは、耳残りの良いリズミカルな表現を活かしながら、Spotifyの日中時間帯におけるリーチの可能性も活かしたモーメント戦略が展開された。画面を見ている時は動画広告、そうでない時は音声広告で繰り返しメッセージを届け、限られた接触時間の中で、視覚と聴覚の両面でより効率的に商品価値を伝えている。

 「短尺動画と音声の組み合わせによって、Z世代に対して製品リニューアルを直感的に伝え、効果を最大化することを目指しました。ほぼ同じ音源を使い、Spotify内外で音声を繰り返し用いることでオーディエンスの耳に残るようにしたり、日中の時間帯でのリーチを狙ったりと、キャンペーン全体としての効果も期待できると考えています」(日本コカ・コーラ池田氏)

Spotifyは若年層マーケティングに相性が良い手段

 最後に日本コカ・コーラ池田氏は、あらためて若年層へのアプローチの重要性を強調したうえで次のように語った。

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 「ここまでお伝えしてきた通り、Z世代、若年層は、表面的で画一的な情報に魅力を感じません。彼らのカルチャーを把握・理解し、そのカルチャーに自然に入り込み、共感できる体験を提供することが成功のカギです。

 そのため、私たちは若年層へのアプローチにおいて、音楽を重要なパッションポイントの1つと位置づけ、音楽を軸とした広告キャンペーンも展開しています。

 音楽には人の心を動かす力があり、各アーティストにはそれぞれ熱心なファンがいらっしゃいます。アーティストとのコラボレーションを通じて、特定のファン層に効果的にリーチし、エンゲージメントを高めることができます。

 本日紹介した、私たちの取り組みやマーケティングに対する考え方が皆様の今後の活動において少しでもお役に立てれば幸いです」(日本コカ・コーラ池田氏)

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この記事の著者

和泉 ゆかり(イズミ ユカリ)

 IT企業にてWebマーケティング・人事業務に従事した後、独立。現在はビジネスパーソン向けの媒体で、ライティング・編集を手がける。得意領域は、テクノロジーや広告、働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:スポティファイジャパン株式会社

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2025/07/09 10:00 https://markezine.jp/article/detail/49198