“エガちゃん”とのコラボが絶好調!
米田:他に、このサイトで「好き」が「カタチ」になったおもしろい例はありますか?
藤井:サイトの構成としてはもう一つ、「コラボレーション」というラインがあり、現在は芸人の江頭2:50さんとの企画を進めています。「本当においしいビールをつくる!」と宣言して「EGABEER」を開発中で、今年の秋に「アサヒ空想開発局」のオンラインショップから販売する計画です。
寺門:実は私が、江頭さんの大ファンでして(笑)。そこで大好きな江頭さんとコラボして、お客様とつながれるような何かおもしろいことをやろうと考えていました。
そのとき藤井さんから、「やっぱりステートメントが必要だよね」と指摘され、チーム全員で再考する時間を取りました。それこそが、単なる物販サイトではない、今の「お客様と本気でワイワイできる遊び場」としてサイトを再構築したことにもつながっています。
実際に江頭さんが研究所に来てくださって、いろいろとお互いに意見を出し合って、そういう過程もすべて含めてストーリーとしてつながるよう、本当に時間をかけて作っています。反響がものすごくて、動画再生数は200万回を超えています。
寺門:江頭さんとのコラボは、「空想開発局」の会員登録者数を増やすという目的もあり、江頭さんへの興味から訪れた方が、スパイスビールを購入した例もあります。
藤井:江頭さんのファンは、年齢的には30代から50代が多く、ど真ん中のビールユーザーです。私たちはファンの皆様が、何をしたら喜んでくれるかを考えながらコンテンツやビール、グッズを作っています。ファンの皆様が喜んでくれることで、SNSでも話題にしていただいたり、それがネットニュースになったりしているので、良いコミュニケーションができているのかなと思いますし、テストマーケティングの場としても効果的に働いています。
「技術」と「マーケティング」の融合人材を育てたい
米田:最後に、新顧客創造研究所として今後目指していきたいことを教えてください。

佐藤:新顧客創造研究所ができたとき、「開発ではなく発明をしたい」とみんなに話しました。
たとえばスポーツ飲料やコーラ、もっと言うとビールなども、最初は「何だかおいしくないな」って、受け入れられなかったのではないかと思います。それが今は、当たり前の商品として日常に溶け込んでいます。そんな風に、最初は受け入れられなくても、いつか当たり前の存在になって、お客様や、結果として会社も、会社で働くみんなも、幸せになれる。そんな発明をしたいと思っています。
もう一つの目標は、「技術」と「マーケティング」の融合です。コンセプト開発からプロトタイプの作成まで、一気通貫で自分でできるような最強のマーケターを1人でも多く育てたいと思っています。
寺門:立ち上げた「空想開発局」は10年後も残っていて欲しいし、100年後でも、「これがあったから、おもしろいものが出せるね」って言われるものにしたいですよね。
その時にも大切なのは、N1の時と同様「嘘はバレる」という前提に立つことです。本当に好きじゃないと絶対にファンには見透かされます。自分がN1だと言えるぐらいの熱量を持ってやることが必要です。
私は、そういう思いでこのサイトを運営していますので、これを見た人が「アサヒっておもしろい」「アサヒと繋がりたい」と思っていただいて、そういう方たちと一緒に、今まで以上にアサヒを「おもしろい会社」にしていきたいですね。
藤井:私もこのECサイトが、ただのテストマーケティングの場ではなく、大きな志を持ったサイトになるように育てていきたいと思います。
そのためにはまず私自身が、熱量を持った私の「好き」を育てていかなければならないですし、「おもしろさ」への感度を上げていかなければなりません。そして本当のインサイトに出会うために、私自身がリアルでなければならないと思っています。その上でみんなと一緒に、アサヒビールのものづくりを今以上に強くしていきたい。単に強くしたというだけなく、それをみんなが、明るく楽しみながら実現できたらいいなと思っています。
米田:「お客様のリアルな声」や「好きという感情」から生まれる新たな価値の創造が、「新顧客創造研究所」の存在意義であり、スタッフ全員がそれに向かっていく熱量を感じ取れました。ありがとうございました。
米田からの「インサイト活用」TIPS
- N1とは実在する人。「その人のどんな価値観・ライフスタイルなどの背景要因」×「どの要素」が良いね!を生み出すのか、リアルライフの中にある実際のストーリーこそが、「自分ごと」としての共感を生むことができるインサイト発見のヒントとなる。
- ペルソナとは作成された仮想的な人物像。ターゲットのイメージを関係者間で共有するには有効であるが、あくまでも自分たちが既にもっている情報や理想像から作られた架空の人物像を具体的なイメージに落とし込んだものなので、そこに新しい発見はない。
- 自分たちの勝手な解釈や想像で「こういう風に考えるはず…」などと具体化を進めていくと、逆にどんどんリアルな実像から離れてしまい、誰にも「自分ごと」として響かない「作り話」であることがバレる可能性が高まってしまうので要注意。
