【番外編】関西出身のマーケター、意外と多い説
田岡:今日はせっかく関西でのリアルイベントということで、番外編的なテーマも挙げていただきました。「関西出身のマーケターは意外と多い?」というテーマです。これに対して、久下さんが歴史的背景から見解を用意して下さっているようですが、ご紹介いただけますか?

久下:はい、かなりの難題ですが、おもしろいテーマだなとも思い、私なりに考察してみました。関西人のアイデンティティを歴史的に紐解くと、興味深い点がいくつかあります。
江戸時代、人口の半分は武士でしたが、大阪の武士人口は約1%で、ほとんどが町人だったといいます。大阪の街には、船場を中心に商人や船大工、お茶売りなど様々な職分や立場の人々がともに暮らし、ともに働く、都市構造的な環境ダイバーシティがありました。そこに千両(約6千万~1億円)のビッグビジネスを生む北前船が行き来し、様々な商品や文化を運んでいたのです。
外から入って来る様々なものに対して、違いや新要素を寛容に受け止め、取り入れ、イノベーションを起こしていく姿勢は、関西ならではなのかもしれません。大阪はその頃から、ビジター、異文化、新価値観を取り入れることで活力を生み出す、イノベーティブな商人文化を育んできたのではないでしょうか。

お笑いの文化にも考察の余地があります。たとえば、上方落語は町人の毎日の生活の辛さもネタにして、ウィットで笑いに変えていったものです。聞き手のインサイトに迫り、言語化して共感を生むストーリーにしていく営みは、心を素早くギュッと掴むコミュニケーションを実現していくためのものでした。また、関西には、自らが語り掛けるだけでなく、人の話題を積極的に面白がるという特徴もあります。これらは、まさにマーケターの素養そのものではないかと思います。
田岡:オープンな人間関係やコミュニケーションは、現代にも脈々と受け継がれてきたんですね。
その土地の文化的背景、都市構造を起点に分析してみると、新たな発見が
田岡:さて、このセッションも終わりが近づいてきました。ここまで様々なデータを拝見してきましたが、分析していてお感じになったことを最後にお聞かせいただけますか。
三島:関西と関東で基本的な生活や情報に大きな差はなく、ベース部分の多くは共通しています。ただ、ライフスタイルや家族、文化に着目すると、やはりおもしろい違いが出てきますね。関西は「コスパ」、関東は「効率性」「タイパ」がキーワードになっている、というのが私のまとめです。
久下:私は、都市構造の影響によるライフスタイルの特徴をしっかり活かしていくことが重要だと思いました。なかなか難しいことではありますが、マーケターにとって、そのエリアに息づく生活の中のインサイト、リアルな行動やその行動が生まれる背景を構造的に見ていくのは、改めて大事なことだと思いました。
関西に限らず、アプローチする上でこのような視座を持った分析は有効でしょう。

田岡:特に都市の構造は非常に影響が大きいですし、文化や歴史はもしかしたら時代と言い換えられるかもしれませんが、生活者を理解する上で、ここをしっかり捉えることが重要なのだと勉強になりました。
昨今、AIやAIエージェントなども浸透し、皆さん時代の変化の早さに目を見張る心地かと思いますが、少し引いた目線でそのエリアや背景がどうなのかを観察し、顧客理解、消費者理解につなげていけると良いですよね。とても気づきが多いセッションだったと感じています。改めて本日はありがとうございました。