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MarkeZine Day 2025 Autumn

消費者の欲望を紐解くトレンド事例

1ヵ月の予約枠が10分で埋まる?!コーセーの最新技術に学ぶ「消費者が本当に求めているレコメンドの形」

企業目線の「最適解」ではなく、ユーザーが「自分軸で」選べる最適解を

小野:ここからは「Mixed Reality Makeup」を起点に、メイクアップに関して現代の消費者が持っている欲望(インサイト)についてディスカッションできればと思います。

 私は、ビューティ&ファッションの領域では、特にZ世代を中心として、「自分の最適解が知りたい」というニーズと、「多くの選択肢の中から美しさやかわいさの可能性を広げて選びたい」というニーズの2方向があると考えています。

 実際に、女性1,500人を対象に実施した調査の「メイクやファッションは、自分に一番似合う最適解があると思う」という項目では、約8割が「そう思う」と回答しています。一方、別の設問ですが、女性10代・20代では7割前後、女性30代では約6割が、「メイクやファッションは、その日の気分で違うスタイルをしたい」と回答していますし、「自分に似合う定番のメイクが1つあれば、もっと良いものを探さなくてもいいと思う」と回答するのは、女性20代以下では少数派です。

 最近はパーソナルカラー診断や骨格診断など、模範解答を提案するレコメンドサービスが増えていますが、その枠にはまらない「自分の個性・自分らしさ」を求めている部分も大いにあるのではと考えています。

大石:私も、お客様のニーズには「自分に似合うものがわからない(自分の最適解が知りたい)」というペイン型と、「メイクで自分の可能性を広げたい」というゲイン型の2種類があると考えています。

 「Mixed Reality Makeup」は、大半の方が「自分に似合うメイク(最適解)が知りたい」という目的で予約されるのですが、体験後のアンケートには「新しいメイクを試すことができてよかった」といった声も多く挙がるんですよ。「チャレンジすることで自分の中で可能性が広がった」など、今までの自分の選択肢の幅を広げる動きも見られています。

小野:大石さんは、どちらかと言うとゲイン型のニーズを満たすものとして「Mixed Reality Makeup」を構想されたという理解で合っていますか?

大石:はい、「Mixed Reality Makeup」は自分に似合うメイクを「診断」するのではなく、メイクの自由度を広げ、お客様の意志で自ら個性を引き出すマシーンとして開発しました。スローガンは「メイクの可能性を無限大に」。最適解などの型にはまらない自由さでメイクの楽しさや自己表現できることの喜びをお伝えしたいと思っています。

 昨今のメイクトレンドは、「みんな買っているものなら安心」「あの人がおすすめするなら間違いないだろう」など最適解を求めるインサイトに裏付けされた“バズ消費”から生まれることが多いですよね。ですが、それらは多くの場合、「発信者(企業)」目線の最適解に留まっているように感じます。〇〇診断のようなコンテンツも同様です。

 その点「Mixed Reality Makeup」では、お客様が自分の意志で様々なメイクを試し、自分軸で自分のメイクの可能性を広げていきます。たとえば、普段はレコメンドされてもピンと来ないような緑色のアイシャドウも「カラーマシーンで試してみたら、意外と良かった」と購入して帰られる方が多いんですよ。

従来のレコメンドに欠けていたのは「納得感」?

小野: 企業目線のパーソナライゼーション、レコメンデーションではなく、ユーザーが自分軸で選択できる納得解を――「Mixed Reality Makeup」が提供している体験は、非常に示唆に富んでいると感じます。先に縦軸と横軸で整理したインサイトの仮説図をお見せしましたが、「Mixed Reality Makeup」が捉えようとしているインサイトは、もっと多面的でこの2軸が溶けあっているようなものなのだと理解しました。

大石:そうですね。自身の顔立ちやメイクの足し引きのバランス、その日の気分や好みなど、自分のニーズによって、その時々の最適解がある。つまり、最適解は1つではないというのが我々の考えです。定番のメイクを否定するわけではなく、お客様が主観で選ぶ最適解の幅と可能性を広げたいと思っています。

 実際に、多くのお客様が「似合うメイクをレコメンドして欲しい」とおっしゃるんですが、一方的にレコメンドするだけではあまり購入に繋がらないんですよ。自分の意志で選択し→他人からのお墨付きが加わって→主観でそれに納得して初めて背中が押され、購入に繋がるようです。AIの進化により、パーソナライゼーションは今後さらに加速していくと思われますが、私はインタラクティブで“納得感”の高い体験を作っていきたいと考えています。

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「Mixed Reality Makeup」はコスメ売り場のゲームチェンジャーに

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この記事の著者

那波 りよ(ナナミ リヨ)

フリーライター。塾講師・実務翻訳家・広告代理店勤務を経てフリーランスに。 取材・インタビュー記事を中心に関西で活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/08/06 09:00 https://markezine.jp/article/detail/49356

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