NTTドコモは2025年6月16日、デジタルマーケティング支援事業を手がけるCARTA HOLDINGS(以下、CARTA HD)の普通株式等に対する公開買付けを実施し、同社を連結子会社化すると発表した。同時に、CARTA HDの親会社である電通グループとの3社による業務資本提携契約を締結する。
「Single ID Marketing」でデータ分断を解決
ドコモは2021年10月に発表した「新ドコモグループ中期戦略」で、顧客基盤データやパートナーデータを活用した「Single ID×フルファネル」でのソリューション提供により、企業のマーケティングDXを支援する方針を打ち出している。今回の公開買付けは、この戦略の一環として位置づけられる。
ドコモは今回の公開買付けを通じて、CARTA HDのアドプラットフォームや運用型テレビなどの広告プロダクト開発力や配信先メディアとリレーションシップを持つCARTA HDをドコモグループに迎える。そして、同社が保有する一人ひとりのIDに紐づくオンライン・オフラインの様々な大規模データと、CARTA HDの持つメディアとのタッチポイントや広告配信運用のノウハウを組み合わせることで、戦略・戦術立案から施策実行、効果検証までのマーケティングプロセスを横断的にSingle IDで実行できる「Single ID Marketing」を実現する。
これにより、多くの企業がマーケティングプロセスごとに異なるデータソースを活用しており、データが分断されているという構造的課題を解決し、企業のマーケティングをさらに大きく進化させるという。
電通グループの狙いは「dentsu Japan」強化
一方、電通グループにとって今回の提携は、dentsu Japanのデジタルマーケティング強化が主な目的となる。同社は、CARTA HDの強みとドコモの会員データを掛け合わせた新たなソリューションを開発・提供できる体制を構築する。また、ドコモの全国拠点ネットワークを活用することで、日本各地での事業機会拡張も見込んでいる。これにより、ドコモとの協業に限らず、dentsu Japan内での事業シナジー促進とデジタルマーケティング領域の更なる強化を図る考えだ。
電通グループは「Integrated Growth Partner」として、マーケティング領域に留まらず他領域のソリューション強化・統合により、提供価値の最大化を目指すとしている。
ドコモは公開買付けを通じて、CARTA HD株式の51%以上を取得し連結子会社化を図る。電通グループは49%以下の出資比率となり、CARTA HDは上場廃止となる見込み。公開買付け価格は1株当たり2,100円で、買付予定数の下限を342万5,400株(所有割合13.54%)に設定した。

現在、電通グループの持分法適用関連会社であるD2Cは、今回の再編によりCARTA HDの子会社となり、電通グループにとってCARTA HDは持分法適用関連会社となる見込みだ。
公開買付けは各国競争法上のクリアランス取得などの条件が充足され次第開始される予定で、詳細スケジュールは決定次第発表される。
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