始まりはたった1本の動画
2023年夏、マレーシアのTikToker・Hisham Raus氏が「ティーバッグをスプライトに入れる」という動画を投稿した。透明なペットボトルに2つのLiptonティーバッグが沈む光景は、意外性と視覚的な面白さで瞬く間に話題となり、視聴回数は1,700万回を超えた。それを真似するユーザーが続出し、好きな紅茶ブランドを使った派生動画も増え、文化として定着しはじめた。
@hishamraustv REFRESHING GILER ! - Sprite Lemon Tea #fyp #tiktokfood #lemontea ♬ original sound - Hisham Raus
この投稿は一過性のTikTokトレンドに見えたが、実際には複数のUGC(ユーザー生成コンテンツ)として継続的な拡散が見られ、生活者の中で息の長いテーマとして育っていった。
インターンが見た “兆し”
この流れに注目し、「スプライトのバリエーションとして正式に商品化できるのでは」と社内に提案したのは、コカ・コーラ社のインターンだった。これが後に製品化される「Sprite + Tea」の原点となる。
このアイデアは単なる提案にとどまらず、実際の開発初期段階にもインターンが関わっている。Marketing Diveによると、インターンのチームは“味・色・質感”の設計にまで携わり、消費者テストに向けた試作品の初期案づくりを担ったという。
SpriteのブランドディレクターであるKate Schaufelberger氏も、「私たちはトレンドを掘り下げたことで、驚くほど短期間で商品化にたどりつけた。TikTokの影響力と、現場の感度が交差した成果だった」とコメントしている。
インターンの提案はなぜ通ったのか
一つは、明確なデータの裏付けがあったこと。再生数、模倣数、保存・共有率などの数値が他のバズコンテンツと比較しても異常に高く、「Z世代の支持がある」という証拠になった。
もう一つは、コカ・コーラ社のカルチャーだ。インターンや若手の提案を軽視せず、即座に開発部門とつなげるオープンな意思決定構造が背景にあった。特にSpriteは“遊び”と相性のよいブランドであり、少し突飛な提案でも“らしさ”として受け入れられたことも大きい。