“兆し”を逃さない組織へ ソーシャルリスニング3つの鍵
では、日本企業が同様のソーシャルリスニング体制を築くにはどうすればよいのか。
第一に必要なのは、SNSを「分析対象」として扱う専門チームを設けることだ。TwitterやTikTok、Instagramなど、媒体ごとに文化や言語が異なるため、単なる数値モニタリングではなく、そこに投稿された言葉や行動の“ニュアンス”を読み解く体制が求められる。
第二に、若手社員やインターンといった「今、肌感覚を持っている層」の意見を定期的に拾い上げる制度づくりも重要である。たとえば、定期的なトレンドレビュー会を若手主導で行ったり、商品企画ブリーフに“ソーシャル発想”欄を設けるといった仕組み化が考えられる。
第三に、拾った声を素早く意思決定へとつなげるフロー整備も欠かせない。どれほど良い兆しがあっても、それを実行に移せなければ意味がない。マイクロテスト商品や期間限定SKUのような「試せる開発ルート」を持つことが、ソーシャルリスニングを形にする鍵となる。
SNSは「未来の企画室」
「Sprite + Tea」は、マーケティングの新しい原則を体現している。ブランドが何かを伝えるのではなく、誰かが始めた“遊び”を正面から受け止め、形にして返す。そのためには、ソーシャルリスニングの体制はもちろん、若い声を信じ、素早く動ける組織構造が不可欠だ。
これはZ世代だけの話ではない。誰かの投稿が、誰かの感性が、次のプロダクトを生む時代。ブランドの姿勢が問われている。
日本企業のマーケターも、TikTokやUGCを「拡散されること」以上に、「インサイトが潜む場」として捉えてみるのはどうだろうか。販促媒体ではなく、未来の企画室として見ることで、生活者の側から商品開発のヒントを受け取る準備ができるはずだ。