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「メディキュット」のLINE公式アカウント活用 「選べない」を診断で解決し、購入へ導く仕組みとは?

 顧客のLTV向上策を、多くの企業が模索している。そんな中、レキットベンキーザー・ジャパンは、着圧ソックス「メディキュット」のLINE公式アカウント運用において、回答率90%以上の診断コンテンツを入り口に、データに基づきパーソナライズしたメッセージ配信を行うことで深く長い顧客接点を構築し、この課題解決に挑んでいる。 本記事では、レキットベンキーザー・ジャパンの大谷氏ら3名と、支援を行うセプテーニの柏舘氏、横山氏、ミロゴスの千葉氏に、その設計思想と成果、今後の展望について聞いた。

データを活用した継続的な顧客接点を求めていた

──まず、「メディキュット」はどのようなブランドなのでしょうか?

岡部(メディキュット):「メディキュット」は、英国の医療用ストッキングにルーツを持つ段階圧力ソックスブランドで、日本の着圧ソックス市場No.1のポジション(※)を確立しています。

(※)インテージSRI+調べ 着圧ソックス市場 全メディキュット累計販売金額(2019年1月~2025年8月)(日本)
レキットベンキーザー・ジャパン株式会社 マーケティング本部 アシスタントブランドマネージャー 岡部未来氏
レキットベンキーザー・ジャパン株式会社 マーケティング本部 アシスタントブランドマネージャー 岡部未来氏
メディキュットのアシスタントブランドマネージャーとして、主にレディース関連の商品を担当

 これまでは主に若年層の女性をターゲットとしてきましたが、近年では市場の変化に対応し、2023年からはメンズ市場にも参入。さらに高齢化社会が進む中で、シニア層の足の悩みにも応えていきたいと、「メディキュット for ALL」のコンセプトのもと、全世代に向けた商品展開を進めています

──「メディキュット」として、LINE公式アカウントを活用することになった背景について教えてください。

駒宮(メディキュット):「メディキュット」は約30種類のラインアップを展開しており、それぞれ長さや使用する時間、対象者が異なります。そのため、ぱっと見ただけでは「何に使うのか」「自分に何が合っているのか」がわからないという課題がありました。

レキットベンキーザー・ジャパン株式会社 マーケティング本部 コンシューマーエンゲージメントチーム 駒宮氏
レキットベンキーザー・ジャパン株式会社 マーケティング本部 コンシューマーエンゲージメントチーム 駒宮純貴氏
「メディキュット」のクリエイティブを担当

駒宮(メディキュット):そこで、LINE公式アカウントで1対1のナビゲーションを行えば、ユーザーも商品を選びやすくなると考えたのです。もう1つの目的は、ユーザー情報の蓄積です。これまで顧客データをほとんど活用できていなかったので、LINE公式アカウントを使ってデータをためていく仕組みを構築したいと考えていました。

大谷(メディキュット):1対1のナビゲーションのニーズは、お客様からだけでなく、営業チームや小売企業のバイヤーの方々からも上がっていました。店舗の棚に何を置くべきか、優先順位を決める際にも迷われていたのです。

レキットベンキーザー・ジャパン株式会社 マーケティング本部 ヘッドオブ コンシューマー エンゲージメント 大谷真輝人氏
レキットベンキーザー・ジャパン株式会社 マーケティング本部 ヘッドオブ コンシューマー エンゲージメント 大谷真輝人氏
コンシューマーエンゲージメントチームの責任者を務める

大谷(メディキュット):また、これまでも担当者ベースでSNSを用いたキャンペーンは行っていたものの、属人化して短期的な取り組みに留まっていた実情がありました。そこで、代理店にきちんと入っていただくことでブランドとして管理する体制を作り、継続的なタッチポイントを確保できたのは大きかったと思います。

24分岐の質問を設計し、パーソナライズレコメンドを実現

──「メディキュット」の課題を解決するために、具体的にどのような施策を実施されたのでしょうか。

柏舘(セプテーニ):LINE公式アカウントの活用は、新規獲得施策にもつながりますし、友だち追加していただければ、ブロックされない限り基本的には継続的にコミュニケーションが取れます。

Septeni Japan株式会社 CXソリューション領域 LINE事業部 部門長 柏舘悠平氏
Septeni Japan株式会社 CXソリューション領域 LINE事業部 部門長 柏舘悠平氏
セプテーニのLINE事業部の責任者を務める

柏舘(セプテーニ):レキットベンキーザー・ジャパン様では、ユーザーに有意義なアカウントであると感じてもらえるよう、LINE公式アカウント上でのコミュニケーションを丁寧に設計しました。また、アカウントローンチ時には友だちの増加を目的とした、友だち追加広告(CPF広告)を活用しました。

 ユーザーにとって価値のあるアカウント基盤を整えた上で集客を行えているため、ブロック率が比較的低く、良好なコミュニケーションチャネルを実現できています

横山(セプテーニ):加えて、ユーザーがLINE公式アカウントを友だち追加したタイミングで、自分に合った商品がわかる診断コンテンツが自動的に始まる仕組みを提案しました。LINE公式アカウント上でのメッセージ配信は一方的な情報発信になりがちですが、友だち追加時のあいさつメッセージで診断コンテンツを提供し、パーソナライズされた体験につなげることで、高い回答率を実現できます。

Septeni Japan株式会社 CXソリューション領域 LINE事業部 横山美和子氏
Septeni Japan株式会社 CXソリューション領域 LINE事業部 横山美和子氏
LINE公式アカウントの運用業務を担当

柏舘(セプテーニ):診断では、質問数が10問以上になると回答完了率が低下する傾向があるため、5問前後に抑えることを意識しました。セプテーニが持つLINE公式アカウントにおける豊富な知見と、レキットベンキーザー・ジャパン様が持つ「メディキュット」への深い理解を融合させながら、どのようなニーズに対してどの商品が選ばれるべきかを整理し、24通りの分岐を設計しました。

診断後のシナリオを出し分けるパーソナライズ

千葉(ミロゴス):「メディキュット」のナビゲーション施策では、ミロゴスが提供するLINE公式アカウントのAPIを活用したマーケティング・DX支援サービス「LOOPASS」をご活用いただいています。「LOOPASS」を導入いただくと、診断の回答内容に応じて、その方に最適な商品情報や口コミを自動的に出し分けてメッセージ配信することが可能になります

 加えて、ミロゴスでは、診断コンテンツの設計においても回答率を高めるための質問設計のノウハウを提供しています。このように、パーソナライズしたメッセージ配信の実現を、ツール提供と設計支援の両面からサポートしています

ミロゴス株式会社 セールス部 マネージャー 千葉萌香氏
ミロゴス株式会社 セールス部 マネージャー 千葉萌香氏
LINE・AIに専門特化した事業を展開するミロゴスのセールスを担当

──診断後のシナリオ配信についても工夫があったそうですね。

柏舘(セプテーニ):診断後におすすめの商品が提示されるだけでなく、その数日後には診断結果に応じて、商品の推しポイントや口コミなどのメッセージが出し分けられる仕組みを構築しました。数日間にわたり段階的に情報を届けることで、温度感を途切れさせることなく、多面的に商品の魅力を知っていただけることがポイントです。

診断コンテンツの全体像
診断コンテンツの全体像
※クリックすると拡大します

柏舘(セプテーニ):また、LINE公式アカウントのリッチメニュー部分にAmazonや楽天の商品ページへ遷移可能なバナーを常設することで、ユーザーがいつでも商品を購入しやすい環境を整えています。

診断回答完了率90%超、LINE公式アカウントからの送客効果も実感

──診断コンテンツの成果はいかがでしょうか。

横山(セプテーニ):診断コンテンツの回答完了率は、90%以上と非常に高い数値が出ています。

駒宮(メディキュット):購入促進のためのコミュニケーションも、効果的に実施できていると感じています。Amazonや楽天で大規模セールがある際にLINE公式アカウントを活用してメッセージ配信を行うことで、購入を後押しする施策として機能しています。

大谷(メディキュット):LINE公式アカウントという顧客接点を持ったことで、他のプロモーション施策と連動させ、効果測定にもつなげられるようになりました

岡部(メディキュット):最近TikTok Shopでの販売にも注力しており、敬老の日にLINE公式アカウントからTikTokライブに送客した施策では、通常の1.5倍に迫る過去最高の売上を記録しました。

大谷(メディキュット):「メディキュット」の認知率は高いものの、実際の使用経験率は約2割に留まっており、潜在ユーザーへのアプローチ余地はまだ大きい状況です。そのため、常にお客様に想起いただけるポジションを維持することが重要だと考えています。

 そのための施策の1つとして、LINE公式アカウントを位置付けています。今後は新商品のアンケートを取り、お客様の声を聞いていくプロジェクトもしてみたいと思っています。

3社共同ワークショップで顧客体験を再設計

──LINE公式アカウントの運用にあたり、他にどういった支援を行っているのでしょうか?

横山(セプテーニ):LINE公式アカウントを活用した施策をより効果的なものにしていくために、LINEヤフー、セプテーニ、レキットベンキーザー・ジャパンの3社で、「CX施策立案プロジェクト」という形で全3回のワークショップを実施しました。
  
 このワークショップは、LINE公式アカウントの効果的な活用方法を具体的に知りたい、アカウントを通じた顧客体験を改善したいがイメージができていない、といった企業の課題に応えるためのプログラムです。

 DAY1では、LINE公式アカウントでできる最新機能や体験を理解した上でユーザーのインサイトを深掘りしました。そして、DAY2ではカスタマージャーニーを設計、DAY3では、仮説を基にコンセプトを作成し、具体的な施策案を検討しました。

ワークショップで行う、デザイン思考を用いた顧客起点での体験設計の開発プロセス
ワークショップで行う、デザイン思考を用いた顧客起点での体験設計の開発プロセス
※クリックすると拡大します

──ワークショップを実施したことで、どんな発見がありましたか?

岡部(メディキュット):ブランドに日々向き合っていると、「いつもやっていること」という固定観念となってしまい、新しい発見が出てこなくなってきていました。今回のワークショップでは、「メディキュット」に第三者目線や消費者に近い立場からの意見を聞けたのは非常に価値がありました。

駒宮(メディキュット):デジタルやLINE公式アカウントに精通した有識者の知見と、ユーザー目線の意見の両方を同時に聞けたことも、大きな収穫でした。

柏舘(セプテーニ):互いにフラットに会話できたのは非常に良い機会でした。いろいろなアイデアを発散的に出せたおかげで、今後は1段階視座を上げた観点で施策を考えていけるのではないかと思います。

大谷(メディキュット):ワークショップを通じて、私たちから一方的に情報を発信するのではなく、お客様が「メディキュット」を必要とするタイミング、つまり足の悩みを解決したいと思った瞬間に合わせて、LINE公式アカウントを使ってアプローチする重要性に気づきました

LTV最大化へ、LINE公式アカウントを「心地良い情報源」に

──今後の展望について、どのように考えていますか。

駒宮(メディキュット):約1年間の運用で、ユーザーデータを蓄積できる基盤が整いました。今後はこのデータを活用し、診断の回答内容や購入履歴を基に買い替え時期を提案したり、お得なキャンペーン情報を最適なタイミングで届けたりと、一人ひとりに寄り添ったコミュニケーションを実現するプラットフォームへと進化させていきたいです。

大谷(メディキュット):LINEは日本固有のプラットフォームです。レキットベンキーザーはグローバル企業として、各国でWhatsAppやWeChatなどのメッセージングプラットフォームを活用していますが、日本でのLINE公式アカウント活用の成功事例とノウハウを、他国の施策にも応用できるベストプラクティスとして確立していきたいです。

岡部(メディキュット):私は足悩みを抱えている日本人すべての人たちに、「メディキュットで足悩みを解決できる」ということを伝えたいです。若い世代から上の世代まで、LINE公式アカウントを通してそのようなメッセージを送っていければと考えています。

横山(セプテーニ):LINE公式アカウントは、季節ごとのキャンペーンで売上を伸ばすきっかけにもなります。また、取得できたデータは今後、「メディキュット」の他の施策にも活用することも検討しています。

柏舘(セプテーニ):LINEは消費者にとって、最も身近なチャネルと言っても過言ではありません。必要な情報を、適切なタイミングで「心地よく」受け取れる体験を提供し続けること。それが、ユーザーには利便性と満足を、企業には長期的なファン化をもたらし、理想的な共創関係を築く鍵になると考えます。セプテーニでは、今後もこうした関係構築をサポートしていきたいです。

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この記事の著者

落合 真彩(オチアイ マアヤ)

教育系企業を経て、2016年よりフリーランスのライターに。Webメディアから紙書籍まで媒体問わず、マーケティング、広報、テクノロジー、経営者インタビューなど、ビジネス領域を中心に幅広く執筆。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:ミロゴス株式会社

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2025/12/11 11:00 https://markezine.jp/article/detail/49591