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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

MarkeZine Day 2025 Autumn

【広告意思決定論】芹澤連が説く「広告にできること/できないこと」

Weak Theoryに学ぶ、広告にできること/できないこと

 Weak Theoryについて、もう少し詳しく見ていく。Weak Theoryでは、広告によって得られる効果を次のように考える。

広告の効き方に関するWeak Theoryの考え方

広告によって認知・想起を促し、“ブランドが選択肢に入る回数を増やす”ことで、間接的に売上に寄与する

 上記の前提に立つと、マーケティングで「直接動かせる変数」と「間接的にしか動かせない変数」が整理できてくる。また、Weak Theoryは消費財のような低関与カテゴリにおいても幅広い適用可能性を持つことがわかっており、近年よく見聞きする「カテゴリーエントリーポイント(CEP)」もこのWeak Theoryを実用化したものだ。

 「認知率が高いブランドであっても、需要が発生した時に思いつかなければ買われません。また、思いついても手近になければ買えません。ニーズが発生した時に『思いつきやすい』『見つけやすい』『買い求めやすい』からこそ、トライアルの絶対数が増え、リピートや利用額も増えていくのです」(芹澤氏)

 つまりマーケティングで直接動かせる変数は「メンタルアベイラビリティ(思いつきやすさ)」と、フィジカルアベイラビリティ(見つけやすさ・買いやすさ)」ということだ。

 であるならば、マーケティングや広告の役割は、需要が発生した時にブランドに気付かせ、トライアルを促すこと。リピート購入の場合は、次に需要が発生したタイミングでブランドを「思い出させる」ことと言える。需要が発生するシーンやタイミングこそがコミュニケーションの起点であり、だからこそ予算やリソースを使って介入する価値がある、というわけだ。

広告の1つの役割は「CEP」を維持・強化すること

 実際に大きなブランドは入り口となるCEPを多数持っている。CEPが多ければブランドが想起される回数が増えるため、選ばれる確率も高くなる。反対に、売上やシェアが縮小するのはライトユーザーのCEPが減り、想起されなくなった時。つまりライトユーザーの頭の中からブランドが消えていった時だ。

 「事業成長を目指すにしても、シェアを維持するにしても、ブランドへの入り口となるCEPを増やすことが重要です。広告はその入り口を維持する、あるいは増やすために必要なのです」(芹澤氏)

 ここで注意したいのは、「CEP=第一想起を獲得する」という話ではないということ。そもそも近年の研究では、第一想起という指標自体に問題があることがわかっている。というのも、第一想起の一貫性は実は50%程度しかないという研究もある。たとえば、「シャンプーといえばラックス」と回答した人の約半数が次にメリットと答える、といった具合に1位が変動するわけだ。

 これは消費者の想起がその時々の生活文脈に強く依存しており、考慮集合がCEPに応じて動的に変化することに起因するようだ。また、ブランド成長の源泉である未顧客の変化は第一想起には表れない。こうした指標を果たしてKPIと言えるのだろうか。

 特定の顧客セグメントに絞り込んで第一想起をとるポジショニングの考え方と、消費者に広くリーチして助成想起される文脈を増やそうとするCEPの考え方は相反する、と芹澤氏は指摘する。多くの人に様々な場面で助成想起されることを目指すのがCEPの正しいアプローチと言える。

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広告を止めると、売上・シェアはどう変化するのか?

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この記事の著者

加納 由希絵(カノウ ユキエ)

フリーランスのライター、校正者。

地方紙の経済記者、ビジネス系ニュースサイトの記者・編集者を経て独立。主な領域はビジネス系。特に関心があるのは地域ビジネス、まちづくりなど。著書に『奇跡は段ボールの中に ~岐阜・柳ケ瀬で生まれたゆるキャラ「やなな」の物語~』(中部経済新聞社×ZENSHIN)がある。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/10/31 09:00 https://markezine.jp/article/detail/49915

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