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なぜ、AI企業がカフェを開くのか? Anthropic・Cursorが仕掛ける“リアル体験”の戦略

 テクノロジーの最前線にいるAI企業たちが、今「リアル」に回帰している。ニューヨークやサンフランシスコでは、コードやアルゴリズムではなく、コーヒーと会話を通じてAIを体験できる場所が次々と生まれている。デジタルの象徴だったAIが、なぜ街のカフェで人と出会おうとしているのか。

AIが“街に出る”──テックブランドの新たな動き

 AI企業がカフェを開く――そう聞けば、多くの人は意外に思うだろう。だが今、テックブランドの間で「リアル空間」を活用したマーケティングが静かに広がっている。

 先駆けとなったのは、AI企業Anthropicがニューヨーク・ウエストビレッジに開いた期間限定のポップアップ「Claude Café」だ。もう一社、開発者向けAIツールを提供するCursorも、サンフランシスコで同様のカフェ型イベントを展開している。

 店頭ではラテを片手に、来場者がAIとの対話を体験し、SNSでは写真や感想が次々と投稿された。コーヒーショップという親しみやすい空間で、最先端のAIを“触れる存在”として感じ取る――この光景は、テクノロジーの社会的な立ち位置が変化しつつあることを象徴している。

 AIはこれまで、画面の中に閉じ込められた存在だった。だが今、AI企業たちはあえて街に出て、人と同じ場所で息づこうとしている。なぜ、彼らは“リアル”を選んだのか。

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Claude Café(出典:Claude by Anthropic

デジタルの限界と“信頼”の再構築

 AI技術は急速に進化している。しかし、それに比例して人々の理解や信頼が追いついているとは言いがたい。テクノロジーは便利さと同時に「不透明さ」や「不安」も生み出す。スクリーン越しの関係だけでは、企業の思想や姿勢までは伝わらない。

 だからこそ、AIブランドは今、リアルな場に戻りつつある。物理的な体験は、抽象的なテクノロジーを具体的に感じ取るための翻訳装置になる。空間を通じて「どんな価値観を持つAIか」「誰のための技術か」を語ることができる。

 Anthropicが掲げる「やさしいAI(helpful, harmless, honest)」という理念も、実際に触れて感じることで説得力を増す。リアル体験はブランドの人格を可視化し、企業と人の間に共感を生む。デジタルマーケティングの時代にあって、“体験”こそがもっとも人間的なコミュニケーションの形に戻りつつあるのだ。

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AnthropicとCursorの“体験設計”に見る戦略

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この記事の著者

岡 徳之(オカ ノリユキ)

編集者・ライター。東京、シンガポール、オランダの3拠点で編集プロダクション「Livit」を運営。各国のライター、カメラマンと連携し、海外のビジネス・テクノロジー・マーケティング情報を日本の読者に届ける。企業のオウンドメディアの企画・運営にも携わる。

●ウェブサイト「Livit」

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/11/17 08:00 https://markezine.jp/article/detail/50073

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