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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2026 Spring

データで市場を読み解く

自社の商品はどの商品と相性が良い?期間併売分析で顧客の購入背景やジャーニーを深く理解する

【実践編】実際に比較をしてみる

 ここまで、期間併売分析で用いる指標や可視化のやり方について解説してきました。ここからは、その考え方をもとに実際のデータを解釈し、どのように読み解くことができるのかを見ていきます。今回も題材としてマクロミルの消費者購買履歴データ「QPR」を用い、ブラックコーヒーとチョコ菓子を例に期間併売の特徴を確認していきます。

 ブラックコーヒーとチョコ菓子は、購買タイミングが必ずしも一致しないため、同時購入だけでは関係性を十分に把握できない場合があります。期間併売分析は、このように一定期間内に繰り返し購入されるカテゴリ同士のつながりを捉えるのに適しており、今回の題材とも相性の良い手法です。なお、今回は併売を観察する期間を半年として設定しています。

STEP1:単一ブランドにおける併売傾向を把握する

 まずは、ブラックコーヒーAに絞って、チョコ菓子A~Dとの併売状況を見てみましょう(図4)。

【図表4】ブラックコーヒーブランドAとチョコ菓子の各ブランドとの併売状況
【図表4】ブラックコーヒーAとチョコ菓子の各ブランドとの併売状況(クリックすると拡大します)

 リフト値が最も高いのはチョコ菓子Bで、次いでチョコ菓子Dであることが読み取れます。一方で、信頼度を見てみると、チョコ菓子Bは2~3%程とかなり低いのに対し、チョコ菓子Dは15%を超えています。 信頼度の低いチョコ菓子Bについては、リフト値こそ高いものの、併売が生じている割合が小さいため、実際の併売規模も大きくはない可能性があります。

 そのため、チョコ菓子Bはリフト値だけを見て「相性が良い」と判断すると、実態を誤解する恐れがあります。一方でチョコ菓子Dは、信頼度・リフト値の双方が一定水準で高く、相性の強さと一定規模の併売の両方が確認できる点が特徴的です。

STEP2:複数ブランド間で併売傾向を把握する

 次に、ブラックコーヒーAだけではなく他ブランドと、チョコ菓子A~Dとの併売状況を確認してみましょう。まずは信頼度(ブラックコーヒーの各ブランド購入者におけるチョコ菓子A~Dの併売率)を、ヒートマップで見てみます(図5)。

【図表5】ブラックコーヒーブランドとチョコ菓子ブランドの信頼度(%)
【図表5】ブラックコーヒーブランドとチョコ菓子ブランドの信頼度(%)(クリックすると拡大します)

 各ブラックコーヒーブランドとも、チョコ菓子Dとの信頼度が最も高く、次いでチョコ菓子Aが高い傾向にあります。一方で、チョコ菓子B・Cとの信頼度は総じて低く、実際に併売が起きにくい状況にあることがわかります。

 リフト値についても見てみましょう(図6)。

【図表6】ブラックコーヒーブランドとチョコ菓子ブランドのリフト値
【図表6】ブラックコーヒーブランドとチョコ菓子ブランドのリフト値(クリックすると拡大します)

 ブラックコーヒーA・C・D・Eでは、チョコ菓子Bとのリフト値が最も高く、ブランド間の相性の強さが示唆されます。しかしチョコ菓子Bとの信頼度は低いため、各コーヒーブランド購入者で実際に併売が生じている人数は限定的です。 この点を踏まえると、棚替えやクロスセル施策に反映した際の売上インパクトは大きくならないと考えられます。

 一方で、チョコ菓子Dは信頼度が高く、加えてリフト値も1.5前後と比較的高いブランドが多く、併売規模と相性の強さの両方が確認できる組み合わせと言えます。

 また、ブラックコーヒーFは他ブランドと異なり、チョコ菓子Aとのリフト値が最も高く、信頼度も一定水準で保たれています。ブラックコーヒーFを訴求する際には、チョコ菓子Aとの併売を狙った売り場づくりが有効となるでしょう。

期間併売分析をどう意思決定につなげるのか

 期間併売分析における意思決定の出発点は、併売が「どれだけの規模で起きているのか」と「どれほど強い結びつきがあるのか」を分けて捉えることです。一般的に併売分析では信頼度やリフト値がよく用いられますが、意思決定においてはそれだけでは不十分で、実際に併売が発生している母数を表す支持度や件数も合わせて確認する必要があります。

 信頼度は併売の偏りを捉えるのに有効ですが、A自体の購入者が少ないと併売件数が小さくなります。また、リフト値は期待値以上の相性を示す指標ですが、母数が小さいと過大評価されやすいという性質があります。そのため、併売の規模を捉える指標(支持度・件数)と、関係性の強さを捉える指標(信頼度・リフト値)を組み合わせて判断することが重要になります。

 こうした視点から併売構造を読み解くと、組み合わせごとの特徴がより立体的に見えてきます。

  • 信頼度・リフト値がともに高く、支持度も十分にある組み合わせ
    →実際の併売ボリュームも相性の強さも確認でき、棚割りやクロスセルに活用しやすい組み合わせ。
  • リフト値は高いが支持度が低い組み合わせ
    →相性は良いものの、実際に併売が起きている人数はごく少数。施策としては優先度が上がりにくい。
  • 支持度は高いがリフト値が低い組み合わせ
    →多くの人が日常的に購入している自然な併売。関連性は強くないが、一定規模で発生していると理解できる。

 期間併売分析は数値の大小だけを確認するものではなく、併売が「どれくらいの人で」「どのような関係性で」起きているのかを多面的に捉え、その構造理解を施策判断に落とし込むことが重要です。「どの組み合わせが売上に寄与しうるのか、どの組み合わせは狙っても効果が出にくいのか、そしてどのブランド間の関係性を強化すべきか。」こうした意思決定の基盤となるのが、期間併売分析による関係構造の正しい読み解きに他なりません。

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アナリティクスの高度化:協調フィルタリングの導入

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この記事の著者

上田 拓朗(ウエダ タクロウ)

株式会社エイトハンドレッド データサイエンスユニット アナリスト
西日本旅客鉄道株式会社を経て、2022年に株式会社エイトハンドレッドへ入社。以降、業界横断的に購買行動データ、Webアクセスログ、アンケートデータなど多様なデータの分析案件に携わる。直近では、大手カード会社のマーケティング施策のパーソナライズ化、レジャー予...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2026/02/04 09:00 https://markezine.jp/article/detail/50257

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