いつまでもロングテールモデルで大丈夫?
IT業界におけるWebマーケティング手法の1つとして、もはや切り離すことができなくなっているリスティング広告。しかし、効果を最大限に引き出す運用方法は、日々様変わりしている。
かつては2文字、3文字の複合キーワードなどを駆使して出来る限り多くのキーワードを入稿し、他社と差別化を図るのが業界の常識とされていた。いわゆる「ロングテールモデル」である。だが、この手法も既に通用しなくなってきている。
今回は、主にBtoBマーケティングにネットを積極活用している(株)イノベーションの中島健氏に、リスティング広告の現状についてお話を伺った。約1年間の自社媒体で積極的に広告投資した実績を基に、今IT業界のリスティング広告ではどのような手法が最も効果的なのかを、解説して頂いた。
1000ワード中4ワードだけで、全体の80%のコンバージョンを獲得
イノベーションでは、自社媒体であるIT製品の比較検討サイト「ITトレンド」で、Google Adwardsを中心としたリスティング広告を積極的に活用してきた。ITトレンドは「今検索している能動的な検索ユーザーを呼び込んで資料請求してもらう」という大きなコンセプトがあったので、SEM/SEOをITトレンド事業の中で極めて重要な事業戦略に位置付けていたという。
徹底的にロングテールを追求し、3万ワードを運用
ITトレンドでは基幹システムからネットワーク製品まで幅広くIT製品を掲載しているので、入稿するキーワードもかなりの量になる。定量的にキーワードを追加していくうちに、約半年で総キーワード数は3万ワードを超えていたという。
例えば会計ソフトに対するキーワードでは、一般的なキーワードは「会計ソフト」や「会計ソフト 導入」のようなものになるが、これらに加えて「法人会計 申告 ソフト」や「公益法人会計 基準 システム」のようないわゆるロングテールキーワードを徹底的に追求した。
「こういった多数のキーワードを運用して半年も経つと、問い合わせに結び付くキーワードにある傾向が見えてきました」と中島氏は語る。それまでは一般的にロングテールキーワードの方がビッグワードよりも問い合わせ率が高いと言われていた。だが、実際はコンバージョンを獲得できているキーワードは「会計ソフト」のような、いわゆるビッグワードが大半を占めていたのである。
全体の0.4%のキーワードが80%のコンバージョンを獲得
実際、会計ソフト製品の比較ページに対するキーワードとして約1000ワード程度のキーワードを運用したところ、コンバージョンを獲得できたキーワードは「会計ソフト」が全体の約半分を占めたという。それ以外では「会計ソフト 比較」「会計パッケージ」「会計システム」などの、いわゆるビッグワードがコンバージョン獲得の上位キーワードで、実にこれら4ワードが全体の約80%のコンバージョンを獲得していたのである。
1000ワード中の4ワード、つまり0.4%のキーワードで全体の80%のコンバージョンを獲得しており、残りの996ワードはわずか20%、つまりは96.6%のキーワードで20%しか獲得できていなかったのである。