ユーザー視点のマーケティングを
テレビ視聴率の低迷やネット広告費の急成長など、プロモーションやマーケティングの世界で、「マス広告 VS ネット広告」という議論が長らくかまびすしい。しかし、冷静にそれぞれのメディアの特徴を比較すれば、「どちらが優れているか」という議論そのものがナンセンスであることは明らかである。
本セッションに登場した4氏も、それぞれ活躍の場は異なっているものの、メディアを優劣ではなく、目的達成のための「ツールとしての差異」として見ていることが伺える。さらに、そこに共通しているのは、効果を最大化するための「ユーザー視点」の徹底である。
そんな4氏が、事前にMarkeZine読者から募った質問項目について答え、議論する中から「次世代マーケティング」の未来について意見を交換した。
印象に残ったプロモーションは?
「マス広告」「ネット広告」を問わず、最も印象に残ったプロモーションとは。その最初の問いに、まず口火を切ったのは小越氏である。小越氏は『崖の上のポニョ』が老若男女を問わず世代に広くリーチできていることに言及し、「テレビならではの波及力を感じた」とコメント。
確かにWeb上で60歳の高齢者から6歳の子どもまで一気に告知するには、それぞれに対象となるサイトで行わねばならず、それですらピンポイントにしか届かない。
テレビの効用の大きさについて改めて驚嘆する一方で、須田氏は「テレビでは絶対にできない」というインパクトの大きさから、ユニクロの「UNIQLOCK」を挙げた。
これは「UNIQLOCK」のサイトにアクセスすると、時報に合わせて女性がダンスするという斬新なバズマーケティングである。ブログパーツも用意されており、ECサイトへの導線もさりげない。「既存の媒体も代理店も不要にしてしまうような、とてつもないものがきたと思った」と、初見の印象を語った。
そして、Webならではの表現として、「プロモーションではないけれど」と前置きして、勝部氏はグーグルの「ストリートビュー」をあげた。かつて空想でしかなかったものが、インターネットで実現できるという壮大さ。グーグルにしかできないビッグプロジェクトながら、「誰もが自分の家や友人の家を探す」ほどの親しみやすさが同居している。
勝部氏は「サービスとしての面白さだけでなく、ここに何かを仕掛けたい」と、プロモーションやマーケティングの「新しいインフラ」としての可能性を語った。
三人三様の答えに、モデレーターの河野氏は「広い視点でこれからの表現やマーケティングを考えている」と評し、その視点こそが重要であるとした。その上で、河野氏自身も、「前のめり感を感じた」とグーグルの「ストリートビュー」に感じた興奮を語り、「UNIQLOCK」とともに「インターネット上の新しいインフラ」への期待を述べた。