アマゾンのビジネス構造を分析する
後編では、「ロングテールビジネスの代表」と言われているアマゾンについて、分析してみる。 ロングテール理論とは「今までは売れ筋商品20%が売上の80%を占めていたが、ネットの世界は物理的限界がないのであまり売れない商品をたくさん並べた方が売上がいい」というものである。
この「物理的限界がない」という言葉は、通常「商品陳列スペースに物理的な限界がない」、あるいは「メールやWebの活用により、告知広告コストが限りなくゼロに近くなる」という意味で解釈されている。
なるほどアマゾンはオンライン書店なので、商品はいくらでも多く陳列できる。またネット活用による告知広告コストも格安だ。だがアマゾンという「書籍の小売り会社」の本当の儲けの源泉となっているのは、陳列スペースでも告知コストでもなく、「在庫」に物理的限界がないことだと予測される。なぜそう予測されるのかを以下で述べていこう。
在庫がお金になる保証などない
小売業にとって在庫とは本当にやっかいなものだ。商品在庫は、財務諸表上では、「資産」という風にポジティブ評価される。「今は売れていなくて倉庫にあるけれども、やがては売れてお金に替わる」という建前になっているからだ。今は在庫でサナギ状態だけど、明日には売れて現金になる、チョウになるという。
だが、実際に商売をやっている人なら痛感することであろうが、在庫がやがては売れてお金に変わる保証などない。売れずに、ずっと倉庫に貯まりっぱなしかもしれない。貯め続ければ保管料もかさむ(お金が出ていく)。売れない商品が保管スペースを占有しているせいで、新たな売れ筋商品が仕入れられない(未来の売上の逸失)。期末には「棚卸し」と称して、どんな商品がいくつ保管してあるのか、数えなければならない。財務諸表を作るために、売れない商品を数えるなんて、その数かぞえでまた費用と手間がかかるなんて気が狂いそうな話だ。
在庫は、表面上は「やがては現金に変わりますよ」という顔をしているが、その実、金食い虫である。「在庫は罪庫」という言葉もあるぐらいだ。小売業のように、「多種類のモノをたくさん売って」利益を出そうとする業種では、在庫を減らすことはとても重要だ。