データの可搬性を確保し担当者の共通認識を作る「タクソノミー」
マイクロソフトでは、同社のビジネススタイルだからこそ必要な仕組みも持っている。
その1つが「タクソノミー(分類手法)」だ。「データベースマーケティングを行うに当たって、データの可搬性(ポータビリティ)が非常に重要です。たとえデータベースは別になっても、データの可搬性は確保しなくてはいけない」という保坂氏。
そこで、マイクロソフトではシステムを作る時に必要な、標準的なデータセットを作り(分類方法、いわゆるタクソノミー)、データのポータビリティを確保している。タクソノミーで主要システム間で共有する項目を共通化しシステム連携の基盤としているのだ。
海外のシステムとも連携する必要がもちろんあるため、言葉を各国から吸い上げ毎年新しいタクソノミーを定義している。タクソノミーを定義しておくことで、例えば新しい部署が立ち上がり新システムが構築されても、タクソノミーを元にどの国のシステムでもデータが再利用できる。
タクソノミーは、担当者同士の認識の共通化にも役立っている。「どの国の人と話をしても、タクソノミーのおかげで共通の認識が根底にあります」と保坂氏。1年間にできる分析の量は限られるが、タクソノミーで共通認識がある状態から始められることで、生産性が上がるという。
顧客台帳のデータをデータマイニングでリッチににする
データベースマーケティングでは、何をやるにも顧客台帳が重要である。「集めたデータがどれだけ有効で、それに対しどれだけきちんとリーチできるかが重要」という保坂氏。しかし、既存の顧客台帳を見ても、
- ターゲティングに必要なデータが十分に取得できていない
- 更新頻度が各データでバラバラ
- そもそも、フォームの質問に対してすべての顧客が正直に答えているわけではない
といった課題がある。役職などはその最たるもので、実際同社の顧客台帳で1番多い役職は社長だが、社長だけというファイリングをしてコミュニケーションしようとしても期待される反応はまったくないという現象が起こる。
「顧客台帳のうち、有効なデータは約15%」(保坂氏)。そこで、同社は「市場分析との連携」と「データマイニングによる品質の向上」というアプローチで、顧客台帳をリッチにしている。その1つ目の手法が「市場分析との連携」だ。
市場分析との連携で顧客をタイプ分け
消費者の購買行動を分析すると“中身を見ずに買う新しもの好きの人”“他の人が買って試すのを待って買う人”といった具合に、顧客のタイプを分けることができる。
マイクロソフトにはクエスチョンセットという同社が開発した4つの質問のセットがあるが、これに応えるだけで顧客のタイプが分かるようになっており、このタイプをデータベースマーケティングに役立てている。
データマイニングで「それらしき人」を探り当てる
もう1つが「データマイニングによる品質の向上」。先ほど、顧客が必ずしも正しい情報を応えてくれるとは限らないという課題があったが、これに対し「それらしき人」を行動パターンから推測していくのだ。
例えば、同社の顧客台帳でIT管理者(ITプロフェッショナル)として登録されている人は、市場で予測されるIT管理者の数よりも少ない。そこで、確実にITのプロフェッショナルである人を母集団とし、過去数年間の行動パターンを出す。
この、「典型的なITプロフェッショナルの行動パターン」と「ITプロフェッショナルらしき人の行動パターン」を照らし合わせることで、正確にプロファイルを書かなかった顧客のプロファイルを推測するというわけだ。このLook a like Modelを使うことによって、活用できる顧客台帳のプロファイルが15%から約25%になったという。
「この手法でITプロフェッショナルと推測した人にeメールマーケティングやWebマーケティングを行い、実際の反応を見ていますがITプロフェッショナルのレスポンスとさほど変わらない」と保坂氏。
マイクロソフトのような大企業でデータベースマーケティングを行う上で、まず社内の理解を得るための社内マーケティングが重要なるが、「データマイニングで成果を上げたことは、社内でのデータベースマーケティングに対する評価を上げるきっかけになった」と保坂氏は語る。
