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カスタマージャーニーは「描く」のではなく「あぶり出す」?行動の“順序”から顧客実態を理解する手法とは

落合 真彩[著] / 川口 紘[写] / MarkeZine編集部[編]

EVの購入検討事例から見えた、9つの状態と3つのルート

 セッション後半では、EV(電気自動車)の購入検討を分析した事例が紹介された。なお本調査は、購入者を多めに抽出しているため、購入率などの数値は実際の市場より高めに出ている。注目すべきは数値の絶対的な大小ではなく、ルート間の差や傾向である。DCJが導き出したのは、9つの状態に分解されたジャーニーだ。

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 9つの状態は、「認知」「理解深化・停滞」「検討」というフェーズに沿って並ぶ。認知にあたるのが「家族・友人との会話から興味を持つ」「テレビCMを見て気になる」「テレビCMを見て車種認知」の3つ。理解深化・停滞には「Web動画や記事から理解を深める」「生活導線の中で情報に触れる」のように関心を広げて進んでいく状態と、触れてはいるものの車種名しか残らず認知にとどまる状態とが混在する。そして検討にあたるのが「試乗してEVを体感する」「金額試算やスタッフとの会話」の2つで、その先に購買が続く。

 この9つの状態の上に、大きく3つの代表ルートが浮かび上がったという。

 1つ目は「足踏みルート」と呼ばれ、全体の18.3%。認知止まりの2つの状態を約9割の確率で行き来し続ける。行動の回数は3つのルートの中で最も多いが、購入率は最も低い。

 「口コミやテレビCMで車種名を知るところまではいいのですが、その後は認知の状態をぐるぐる回っています。記事を見て、また広告に触れて、また記事を見る。動きは活発なのに、購入にはつながりません」(中村氏)

 2つ目は「じっくりルート」で50.2%と、全体の半数が通る最大ルートだ。テレビCMなどの広告に接触した後、92%が自分で調べる行動へと進む。さらに、街中やSNSといった生活導線での情報接触を経て、試乗や商談へと、段階を踏みながら着実に検討を深めていく。認知から購買まで、時間をかけて丁寧にたどるのが、このルートの特徴だ。

 3つ目は31.4%が該当した「現場直行ルート」。多くは、最初の行動が試乗または見積もりで、認知や情報収集の段階を経ていない。ディーラーに足を運び、試乗と見積もりを行き来しながら検討を進めていく。購入率は3つのルートの中で最も高かった。

分岐点は「頭に何が残ったか」。あぶり出された真の顧客実態

 興味深いのは、足踏みルートとじっくりルートの対比だ。両者はいずれもマス広告への接触から始まるが、購入への進みやすさは大きく異なっていた。では、その分かれ目はどこにあったのか。

 中村氏は、両ルートの人が最初の接触で何を得て、どんな視点で検討していたかを比べた。すると、足踏みルートでは「車種名を知った」にとどまる人が大半だった。一方、じっくりルートの人は、デザインや費用、充電のしやすさや航続距離といった、EVを実際に使う場面にまで関心が広がっていた。

 「分岐は、どの媒体に触れたかではありません。触れた後に、車種名以外の関心が立ったかどうかです」と中村氏。つまり、勝負は最初の接触時点で、車種名の先にある関心まで引き出せるかどうかにある。

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 では、現場直行ルートの人は、どんな状態にあるのか。認知も情報収集も飛ばしてディーラーへ向かうのだから、既に購入を決めていて、残すは実物の確認や試乗、価格交渉だけ──そう考えるのが自然だ。

 ところが、データはまったく違う姿を映し出した。中村氏が調べると、現場直行ルートでEVならではの不安を抱えている人の割合は49.2%。じっくりルート(47.3%)と、ほぼ変わらなかったのだ。つまりディーラーへ直行する人も、「もう決めている」わけではなく、不安を抱えたまま足を運んでいた。

 では、何がその後の購入を分けるのか。カギは「不安を解消できたかどうか」にあった。バッテリーの寿命や保証に不安があった人を見ると、それを解消できた人の購入率は50%、残ったままの人は25%と、倍の差がついた。この構図は、じっくりルートでも変わらない。

 「不安を持たれること自体は、悪いことではありません。むしろ真剣に考えてくださっている、関心の裏返しです。不安を持たせないのではなく、その不安を解消できる受け皿をつくることのほうが重要だと考えています」(中村氏)

 最後に中村氏は、「仮説ありきではなく、データから真の顧客の姿をあぶり出す」ことの重要性を提示しつつ、「あぶり出して終わりではなく、そこから議論が始まります。ぜひ、その議論も含めて皆様とご一緒できれば幸いです」とセッションを締めくくった。

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この記事の著者

落合 真彩(オチアイ マアヤ)

教育系企業を経て、2016年よりフリーランスのライターに。Webメディアから紙書籍まで媒体問わず、マーケティング、広報、テクノロジー、経営者インタビューなど、ビジネス領域を中心に幅広く執筆。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社電通クロスブレイン

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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