「個」客の嗜好性に合わせたメールマーケティングを
リーチを重視するマスマーケティングから、ターゲットを絞ったセグメントマーケティングが重視されつつあるが、セグメントマーケティングにも限界が見えつつある。セグメント分けすらせず、「個」客1人1人の嗜好性に合わせたメールマーケティングを展開していく必要性を「MarkeZine Day Spring 2010」で株式会社ブレインパッドの市川秀樹氏は訴えた。
データマイニングなどのプロジェクトを請け負い、多数の実績を残してきた同社が考えるOne to Oneマーケティングのコツ・進め方とはどんなものか、講演の内容から学んでいこう。
嗜好の多様化でクラスター分析は困難に
(以下、市川氏) 今回のテーマは「個」客リレーション、One to Oneマーケティングということで話をさせていただきます。
概論とEメールマーケティングについてお話をさせていただいて、その中でどうやって個客最適化、One to Oneマーケティングにつなげていくかという話をしていきます。
まず、従来のマスメディアを使ったマーケティング手法には限界が見えてきています。ROIが不明確で、お客様の嗜好の多様化に追随できていないという問題があります。ただし、ブランド訴求の有効性も未だにありますので、マスメディアを一概に否定するわけではありません。
マーケティングはマスよりセグメンテーションが重視されてきていますが、「セグメントマーケティング」と言いつつ、実態はサービス提供側のアクションに合わせてセグメント化していることが多いです。事業部ごととか商品ごととか、割とサービス提供側の組織に合わせてお客様をセグメントしているので、そのために限界が生じているケースもあると思います。
弊社にはデータマイニングのクラスタ分析をご依頼いただくことが多いのですが、目覚ましい成果を上げることは非常に困難です。なぜかと言うと、次の左側の図のように「ピンクの塊が20代の女性」「水色の塊が20代男性」「緑色の塊が30代男性」とか、きれいに分かれる場合には、既に知見が確立してしまっているケースが多いのです。
だからデータマイニングをしても、当たり前の分析結果しか出てこないことがよくあります。例えば、「雨の日は傘が売れる」「女性は甘いものが好き」だとか、よく知られている知見しか出てきません。
ですから、実際に分析を進めていっても、分析結果からアクションにはつなげ難くなっています。現実的にデータマイニングをかけていくと、先の右側の図のようにモザイク状になってしまいます。
相関が非常に弱いか、意味付けが不明なクラスタが多く、アクションが取れないケースが非常に多いのです。最終的にはクラスタをいくつかに分けますが、クラスタに対して分析官が意味付けをします。その意味づけが分析官の腕の見せ所になるのですが、機械分析をしているくせにそこで人間のアナログな判断が入ってしまうといった問題があって、非常に難しい分析になっています。